本田圭佑「アンテナを張っているから、おれの吸収力は早い」

中田徹

オデンセ戦で3ゴールすべてに絡んだ本田

新天地のCSKAモスクワでも存在感を示し始めた本田 【Photo:アフロ】

 CSKAモスクワ(ロシア)は9日、スペイン・アンダルシア地方のマルベージャで開催されているプレシーズンの大会「コパ・デル・ソル」でオデンセ(デンマーク)との全勝対決を3−1で制し、12日に行われるシャフタル・ドネツク(ウクライナ)との決勝戦進出を決めた。

 この冬の移籍市場でオランダ1部のVVVからCSKAモスクワに移籍した本田圭佑は、オデンセ戦で76分間プレー。2アシストを記録し、チームの3ゴールすべてに絡んだ。
 1点ビハインドで迎えた42分、本田が蹴った右CKがアレクセイ・ベレズツキのヘッドにピタリと合って同点に追いつくと、43分にはハーフウェーライン手前から本田が右サイドのクラシッチへロングパスを通し、逆転ゴールをおぜん立てした。47分にもクラシッチのワンツーから抜け出した本田が右足でクロスを入れて、ネチドのヘディングゴールをアシストした。

「まぐれ、まぐれ。そんなの実力のわけがない(笑)」と、利き足ではない右足でしっかりクロスを上げた本田。
「でもオランダにいるときから、右から突破する練習ばかりしていたんでね。8割は中に入っていたけど、1〜2割は縦にわざと仕掛けて右で上げるというのを見せていた。それがアシストにつながるということはそうそうなかったですけど、今あの形は以前からトライしていたことなので良かった」

 本田はまぐれと謙遜(けんそん)するものの、右足のプレーの改善を図っていたからこそ試合で結果を出せたのだろう。
「でも、あのボールしか上げられないんで。パッと見えたからファーにとかね、2人マークにつかれていたから、3人目のマイナスにパチーンとか、分かる? オプションがないから。でも、あそこに出す練習はしていたから、そこに何本も出せるようになってきた」

 2点目のシーンはCSKAモスクワがカウンターを仕掛け、本田がフリーのドリブルで敵陣に入ろうとしていたが、クラシッチを視界に入れるとすぐにロングパスを蹴った。この日のピッチは、前半で言うならオデンセゴールがある方のハーフウエーラインあたりがぬかるんでいたが、「あと15メートルぐらい進めばグチョグチョでしたね。それを判断できた」(本田)。ピッチコンディションの不良地帯を回避したと言えなくもないが、もうちょっと相手を引きつけてもよさそうなシーンだった。

「クラシッチはあの状況で確実に信頼できる。少なくとも、今はおれの個人技より、彼を優先してしまうという自分のしょぼさもむかつく。VVVなら、おれが全部あそこは行こうとしていたんで、「取られてもだまれ」というぐらいの感じだった。でも、クラシッチを見ていると、もっと個人技を磨かないと。VVVのときは、1対1でスハーケンとかよりも負けてないと思っていたけど、もう一個上の段階に来ました。クラシッチはやはり速いし、右からスルスルいくのがうまい。でも、失う回数も多いんですけどね。僕もVVVの時、ぎょうさん失ってましたけど、失ってナンボとおれは思っている。失って初めて、今のところで失うんだって分かる。その手前でパスをして、ギリギリのところまでトライしないと、相手のDFが足が出ないなんて分からへん」

本田という存在がVVVに残した無形の貢献

 チームに合流して約3週間、「コンビネーションはまだまだ。本田がどういう選手なんだというのが、(チームメートは)多分まだ分かり切れていない。お互いの時間というのが必要だというのは感じています」と本田は言う。その説明に、本田は再三“アンテナ”という言葉を使った。

「おれは、チームメートがどういうプレーをするか分かってきていますけど、それもおれがアンテナを張っているから。でも、みんなはおれに対してアンテナを張っていない。『チームに1人新しい選手が来ただけ』という感覚でしょ。でも、それはVVVでも一緒。仮にVVVに新しい選手が来ても、そんなアンテナを張らないでしょ。
 おれは今、常にアンテナを張っているから、こいつがどういうプレーするんだ、こいつはどういうキャラクターなんだ、まじめなのかサボリ屋なのか――そういうことを一瞬一瞬アンテナを張りながらやっている分だけ、おれの吸収力は早い。だけど、みんなは本田という選手に対してずっとアンテナを張っているわけじゃないし、普段の生活からして変わっていない。ただ、みんなが何をするか――というのは、僕は徐々に分かり始めています」

 そうそう、本田という大黒柱が抜けて心配されていたVVVは、調子の良さを維持してリーグ9位につけている。
「カラブロとはしょっちゅう連絡を取っているけれど、冗談で笑いながら、『来シーズン、ヨーロッパリーグへ行くんじゃないか』と言ったら、あいつも冗談で『おれも、もうVVVにいないけどね。CSKAモスクワと試合をするかもしれないけれど、おれもステップアップする』と話していました」

 CSKAモスクワ対VVVが実現すれば、ちょっとしたドリームマッチになる。しかし、カラブロの「おれも、もうVVVにいないけどね」という発言は、ジョークであってジョークでないような気がする。
 この冬、カラブロを含むVVVの中心選手たちが契約更改を保留している。カラブロは「まだVVVは来シーズン2部降格の可能性を残している。僕はもう2部リーグでプレーしたくない。VVVが確実に1部残留を決めてからサインしたい」と言うが、昨季スパルタ・プラハからオファーの来ていたカラブロが、真剣にステップアップを狙っていてもそれは当然だろう。

 VVVの選手は、ボランチとして入団した本田が意識改革し、シャドーストライカーとしてゴールを量産し、ビッグクラブへ移籍した経緯をよく見ていた。アウアサルといった地味だった選手も、今やどんどん自分の技術をピッチの上で表現できるようになり、チームをけん引している。そうした姿を見ると、本田という存在がVVVに残していった無形の貢献は果てしないと感じる。きっとそれは、“本田効果”と呼べるだろう。
「そう思ってもらえるといい。ここをステップアップの場にして、もっといいところに行こう――というのはカラブロもスハーケンもアハハウイもアウアサルも思っていると思います」
 そんな主力選手の構えにVVVのベルデン会長も悠然としたもので、クラブにも選手にも自信がうかがえる。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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