藤枝明誠の歴史を作り続ける安東大介=高校サッカー2回戦
躍進する藤枝明誠を引っ張るエース安東
国見戦では飯塚(写真)が2ゴールをマーク。エース安東は正確なクロスで4点目のゴールをアシストした 【鷹羽康博】
プリンスリーグ東海1部で7勝1敗1分けの3位という好成績を残し、初の全国大会出場を、一番出場することが難しい高円宮杯全日本ユースで飾るという快挙を成し遂げた藤枝明誠だったが、インターハイ予選では準決勝で清水商に1−3で敗れてしまった。
安東はエースとして、その責任を大きく感じていた。全体的なチームのプレー面で貢献していても、ゴールという目に見える結果がまだ少ない。その後の練習試合でもゴールが決められず、エースらしい仕事ができていない自分に悩んだ。
それでも、「ゴールから遠ざかっていてもずっと我慢して使い続けた。彼を信用して使い続ける」と、田村和彦監督は彼の起用をやめなかった。
「いつか結果を出してくれるはず」――指揮官のこの思いに、彼は大舞台で応えて見せた。チームにとって初めての全国大会となった秋の高円宮杯全日本ユース、初戦の星稜戦で彼は新たな歴史を刻んだ。
立ち上がりからディフェンスラインの裏のスペースを狙い続けると、前半4分、その気持ちが通じたのか、絶好のボールが彼の元に届く。追いすがるDFを振り切って、巧みにボールをコントロールすると、そのままゴールに一直線に運び、GKの位置を冷静に見極めて、サッカー部の歴史に名を刻む全国大会初ゴールを流し込んだ。
このゴールを皮切りに、安東はついに目覚めた。47分にはチームの3点目を決めるなど、2ゴールの活躍でチームを歴史的勝利に導いた。エースの復活で、藤枝明誠はユース年代最高峰と呼ばれる大会で、初出場ベスト8の快挙を成し遂げ、その名を一気に全国にとどろかせた。
負傷にもかかわらず、3回戦進出に導く活躍
藤枝明誠は名門・国見を難なく撃破。初出場ながら堂々たる戦いぶりで16強に進出した 【鷹羽康博】
だが、「迷ったが、やっぱり彼は必要だった。この状況での出場は、彼の精神力が試される。勝ちたいという強い気持ちがあるかどうか。人間の本当の強さが試される。そこで何ができるのかを見てみたい」と、田村監督はスタメン起用を決意。安東はその思いに見事に応え、初戦の徳島商戦では開始1分に、左からのセンタリングを技ありのダイビングヘッドでたたき込み、チームの選手権初ゴールで、またしても歴史を作った。
PK戦決着となった徳島商戦での勝利にフル出場で貢献した彼は、この日の国見戦でもスタメンに名を連ねた。前線で体を張り、田村監督が狙っていた両サイドへ巧みにボールを振り分けていく。彼の献身的なプレーがあったからこそ、チームは開始わずか12分の間に3点も挙げることができた。
その後も安東は前線で存在感を放ち、相手の脅威となり続けた。3−1で迎えた67分には、左サイドからワンステップで正確無比なセンタリングを、ファーサイドでフリーになっていたMF飯塚祐樹に供給。とどめの4点目をアシストした。
初出場で3回戦進出。この躍進の裏には歴史を作り続けるエースの成長がある。この成長はまだまだ過程にすぎず、これから先、さらなる進化と歴史の更新が見られるかもしれない。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ