東アジアからオールジャパンへ=天皇杯・皇后杯バスケ 〜日本代表の新たな主力たちが挑む新春の舞台〜

松原貴実
 12月2日から11日まで香港で開催された第5回東アジア競技大会(2009年/香港)で銅メダルを獲得した男子日本代表。メンバーたちはその喜びにゆっくり浸る間もなく、それぞれの所属チームに散った。目指す次の舞台は新春の「第85回天皇杯・第76回皇后杯 全日本総合バスケットボール選手権大会」(オールジャパン)。再び敵と味方に分かれたコートの上で彼たちはどんなプレーを見せてくれるのか。東アジア競技大会日本代表を率いた小野秀二ヘッドコーチ(日立)の話を交えながら、東アジア競技大会の舞台からオールジャパンに向かう主力選手たちの姿を追ってみた。

代表の軸として戦った竹内兄弟。オールジャパンでの活躍は!?

日本代表でもインサイドの核として活躍した竹内公輔(写真中央)。アイシンを3連覇に導くことが出来るか? 【(C)JBA】

 東アジア競技大会日本代表のメンバーが発表された時、竹内公輔(アイシン)は「得点力のあるメンバーが多いので、周りが少しでも楽に得点できるよう自分が黒子になろう」と決めたという。だが、これに対して小野HCは「自分のプレーで周りを生かすのはもちろん大切なことだが、彼はインサイドの核。それを自覚し、自分の能力をもっと前面に押し出すことでさらに成長できるはず。僕は今回の12人の中で1番大きなのびしろを持っているのは公輔だと思っている」と語る。
 確かに、居並ぶ中国の2メートル選手を相手に歯を食いしばってインサイドを死守し、チーム最高点となる20得点をマークした3位決定戦の竹内公には『主役の気迫』があふれていた。
 チームの3連覇が懸かったオールジャパン。主役クラスがそろったアイシンの中で思いきり暴れる竹内公を見てみたい。

 大会を通じて攻守にアグレッシブなプレーを見せたのは竹内譲次(日立)。3位決定戦では両チームを通じてトップの11リバウンドをもぎ取ったが、「1本目から自分がもっとしっかりリバウンドを取っていればもう少し楽な展開になったと思う」と反省が先に口をついた。自分が今、このチームで何を1番求められているのかをよく理解している竹内譲らしい言葉だ。「日本が攻め手を失った時には、すかさず相手のファウルを取るプレーで得点をつないでくれた。『勝ちたい』という気持ちが伝わる戦いぶりだったと思う」(小野HC)
 前回のオールジャパンでは、チームが初のファイナル進出を果たしたものの優勝はかなわなかった。よりタフになった日立の大黒柱はどんなリベンジを見せてくれるのだろうか。

主将・石崎を擁する東芝は06年以来のファイナル目指す

 日本代表キャプテンを務めた石崎巧(東芝)は自分に厳しいプレーヤー。バスケットに関して妥協を許さない姿勢は誰もが一目置く存在だ。
「ポイントガードとしてサイズがあるし、高いスキルと心身の強さも備えている。ディフェンスでは常に手を抜かず、相手のガードに対して激しくプレッシャーをかけてくれた。試合の局面ごとに『今、誰を使ってゲームを組み立てるのか』ということを学んでいくことで、さらにすばらしいポイントガードになることは間違いない」(小野HC)
 同じく東芝の菊地祥平は持ち前の優れた身体能力を生かし、随所にすばらしいパフォーマンスを見せた。「通用するプレーと通用しないプレーがはっきり分かったことが今回1番の収穫。それを含めて50点の出来だったと思う」と本人は言うが、小野HCの評価は格段に高い。「攻守ともに彼の身体の強さ、スキルの高さには改めて驚かされた。彼を生かすシチュエーションを作ることで点が取れるということを再認識した大会だった」
 東芝が2006年の優勝以来遠ざかっているオールジャパンファイナルの舞台。2人のニューリーダーが目指すのはその場所以外ない。

「苦境を打開するシュート力を持った彼のような選手が6番手にいてくれたことは本当に心強かった」と小野HCが称したのは岡田優介(トヨタ自動車)。「6番目の選手にはスタメンとは違うものが求められる。僕はチームに流れを呼び込む起爆剤になりたいと思っていた」という本人の言葉どおり、3位決定戦では中国の追撃を見事なスリーポイントでぴしゃりと断ち切った。
 一方その試合で、メインガード石崎のファウルが混んだことでいつもより早い出番になった正中岳城(トヨタ自動車)。「めっちゃドキドキした」と笑うが、「彼の魅力はポーカーフェイス。どんな場面でも落ち着いて見えることがほかのメンバーに安心感を与える」と小野HC。

 そろってスタメン出場も経験したトヨタの中で『負けん気の強さ』は2人の共通項。一発勝負のオールジャパンでは大きな武器となるはずだ。

代表で花開いた広瀬。パナソニックを上位に浮上させられるか

日本代表で点取り屋としての地位を確立させた菊地祥平。3年連続決勝進出を阻まれている壁を打ち破ることが出来るか? 【(C)JBA】

 今大会スタメン起用された広瀬健太(パナソニック)にとって日本代表は「すごく居心地がいいチームだった」。なぜなら「ここではどれだけ長いこと練習しても浮かないから。全員がものすごくまじめだから、まじめ過ぎて浮くことはなかった(笑)」
 どんなハードな練習でも音を上げず、常にMAXで試合に臨む。鍛えられた身体と球際の強さが際立っていた。
「今回の最大の収穫は広瀬かもしれない。これから数多くの国際大会を経験させることでさらに頼もしい存在になると思う」(小野HC)
 日本代表としての経験がどう生きるか? 広瀬が挑む2度目のオールジャパンに注目したい。

 大学時代から世界の舞台で戦ってきた竹内公輔、譲次は「僕たちはもう若手ではない」と口をそろえる。日本の主力となるべき世代が、それぞれチームの主力として戦うオールジャパン。熱戦への期待に加え、次代を占う興味深い大会となりそうだ。

<了>
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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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