私が選ぶプロレス音楽ベスト5 〜第3回 実況編〜

清野茂樹

日本スポーツ出版社から発売された杉浦アナの実況カセット文庫「国際プロレス実況中継」 【画像提供・清野茂樹】

 言葉のプロである実況アナウンサーは、いつの時代もプロレスに欠かせないもの。幾多の名勝負が彼らの言葉によって語られてきた。
 そこで、自身も実況アナを務める清野茂樹氏が独断と偏見で選ぶ「私が選ぶプロレス音楽ベスト5」第3回は「実況編」。数ある実況レコードの中から清野アナが選りすぐりの5枚をピックアップした。プロレス史に残る昭和の名実況が今、よみがえる。

■第5位 ラッシャー木村vs.ジプシー・ジョー(杉浦滋男アナ)

 まず第5位は、日本スポーツ出版社から発売されたカセット文庫「国際プロレス実況中継」の実況音声です。試合は、1976年12月3日に後楽園ホール初開催となった国際プロレスの金網デスマッチで、テレビ東京の中継音声がカセットテープに収録されています。個人的には、杉浦滋男アナの「チョップ合戦は、力士出身の木村が有利!」のフレーズがお気に入り。試合後には杉浦アナが放送席でラッシャー木村氏にインタビューを行うも、興奮収まらないジプシー・ジョー選手がなだれこんで混乱する様子は、昭和っぽさ満点です。

第4位 力道山vs.ザ・デストロイヤー(清水一郎アナ)

清水アナの実況レコードは最古の部類にあたり、「―怒涛の男―力道山」に収録されている 【画像提供・清野茂樹】

 続いて、第4位は、実況レコードの中でも最古の部類にあたるこの音声。日本テレビの音楽出版会社である日本テレビ音楽が監修したレコード「―怒涛の男―力道山」に収録されたもので、実況は、故・力道山の試合を数多く喋った清水一郎アナです。この試合は1963年12月2日に東京体育館で行われたインターナショナル選手権試合で、3本勝負を制した力道山を大いに盛り上げています。清水アナの口調は、昭和のテレビ黎明(れいめい)期の実況スタイルで、聞こえてくる大歓声からも当時のプロレス人気がうかがえます。なお、このレコードには、徳光和夫アナのアフレコ実況も収録されています。

第3位 ザ・ファンクスvs.アブドーラ・ザ・ブッチャー&ザ・シーク(倉持隆夫アナ)

倉持アナの実況はアルバム「必殺のプロレス・テーマ集」に収録されている 【画像提供・清野茂樹】

 第3位は、歴史に残るこのタッグマッチの実況をセレクトしたいと思います。試合は1977年12月15日に蔵前国技館で行われたオープンタッグ選手権(現・世界最強タッグ決定リーグ戦)の決勝戦で、アルバム「必殺のプロレス・テーマ集」に収録されています。落ち着いた語り口が特徴の倉持隆夫アナですが、フォークが凶器として使用されたこの試合では大興奮し、「フォークで刺してエグる!」「スリルとサスペンス!」など、エキサイティングなフレーズを連発しています。のちに、倉持アナの実況ナレーションと入場テーマ曲を組み合わせた「メイン・エヴェント」という企画盤も発売されました。

第2位 アントニオ猪木vs.モハメド・アリ(舟橋慶一アナ)

舟橋アナの実況は70年代の猪木氏の名勝負には欠かせないものだった 【画像提供・清野茂樹】

 第2位は、1976年6月26日に日本武道館で行われた、歴史に残る格闘技世界一決定戦、舟橋慶一アナの実況です。ややハイトーンで絶叫を織り交ぜるスタイルが特徴で、70年代の猪木氏の名勝負には欠かせない声でした。この試合では、のちにアリキックと呼ばれる猪木氏のキック攻撃を「回し蹴り!」と表現している部分や、最終ラウンド終了間際に「あと5秒、3秒、2秒、1秒!」とカウントダウンする部分が印象に残ります。猪木氏のアルバム「燃える闘魂」には、最も盛り上がった第6ラウンドの音声から収録されています。

第1位 アントニオ猪木vs.ハルク・ホーガン(古舘伊知郎アナ)

レコード化された実況音声の数も、古舘アナがダントツ1位。ハルク・ホーガン選手のアルバム「栄光の超人」などで音声を聞くことが可能 【画像提供・清野茂樹】

 そして第1位は、ワタクシがリアルタイムで最初にブラウン管で出会ったプロレス実況、古舘伊知郎アナをおいて他にはいません。今は報道キャスターのイメージが強いですが、レコード化された実況音声の数は、古舘アナがダントツの1位! とりわけ、1983年6月2日に蔵前国技館で行われた第1回IWGPの優勝決定戦は、ワタクシにとっては教科書とも言える実況で、「よみがえったネプチューン」「三又の鎗(やり)アックスボンバー」「乾ききった時代に送るまるで雨ごいの儀式」など、古舘アナ独自の比喩(ひゆ)表現が、試合のアクシデントと相まって爆発しています。音声はハルク・ホーガン選手のアルバム「栄光の超人」などに収録。翌1984年の再戦を収録した「第2回IWGPオフィシャル・レコード」と併せて聞くのもオススメです。
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著者プロフィール

1973年神戸市生まれ。1996年青山学院大学文学部卒業。広島のラジオ局でアナウンサー・DJとして活躍した後、2006年よりフリーに転身。現在はFIGHTING TVサムライにて新日本プロレスや格闘技の実況アナを務め、その他にもCMナレーションや文筆業まで幅広く活動している。プロレスのみならず、総合格闘技やキックボクシングなど、会場に足を運んで取材する興行の数は年間100を超えている。レトロな語り口とメガネがトレードマーク。

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