第88回高校サッカー選手権展望(前編)=広島観音〜前橋育英
一癖も二癖もある面白いチームが集結
高校サッカー選手権は30日に開幕。頂点を目指して48校が熱き戦いを繰り広げる 【スポーツナビ】
今大会は県予選での大波乱もあり、さまざまな特徴を持ったチームが勝ち名乗りを上げた。この個性的なチームがしのぎを削るトーナメントを2つのブロックに分け、各ブロックで面白いチーム、その特徴をプレビュー形式で紹介していこう。
まずは広島観音〜前橋育英までのブロックから。こちらには面白いチームが集結している。どのチームも一癖も二癖もある。その中で最も癖のあるチームを挙げれば、野村雅之監督率いる作陽(岡山)、南健司監督の立正大淞南(島根)、初出場の山梨学院大附(山梨)だろう。
「津山の陶芸家」が作り上げた作陽
作陽の高瀬(右)は1年生ながら攻撃の中核を担う。野村監督の期待は大きい 【安藤隆人】
しかし、この苦しい流れだったからこそ、野村監督はじっくりとチーム作りに取り組むことができた。野村監督は毎年のようにチームを作っては壊し、作っては壊すといった再構築を繰り返してきた。その姿から、野村監督は「津山の陶芸家」(※作陽高校が津山市にあるため)とも呼ばれている。そんな野村監督は今年、1つの作品を作り上げるのに、丁寧に土選びから行ってきた。作っては壊すの連続ではなく、いろんな土を試して、最良の一品を作るために時間をかける。つまり、じっくりと丁寧に作り上げているからこそ、完成したときは壊さなくてもいいような強固なチームができる。今大会に臨む作陽は、まさにそういうチームだ。
システムは渡部亮武と河津良一のダブルボランチを軸とする4−2−3−1。ディフェンスラインとMFが連係して挟み込む守備で、押し込まれながらもしっかりと対応する土壌はできた。試合の途中で、抜群のキープ力を誇るエースナンバー10のMF原田顕介を投入するオプションもある。攻撃は長身FW岩崎優、1年生ながら早くも野村監督から絶大な信頼を受けるMF高瀬龍舞、そして右サイドハーフからDFにコンバートした攻撃的右サイドバックの中村翔を生かした形がメーンとなる。
「今年は指導者としていい経験ができた」と語る津山の陶芸家が作り上げたチームに、注目せずにはいられない。
3人の個性が光る立正大淞南
立正大淞南の最終ラインを支える松田陸(左)。空中戦に強く、得点源にもなっている 【安藤隆人】
松田力、陸は双子の兄弟で、2人とも抜群の身体能力を誇る。ポストプレー、裏への飛び出し、シュートセンス、どれも質が高く、川上との連係は相手にとって脅威となるだろう。陸はセンターバックだが、高い攻撃センスを併せ持ち、最終ラインから一気に前線まで飛び出してくる。空中戦も強く、彼のヘッドは大きな得点源となっている。
この3人が自由にプレーし、豊富なイマジネーションで予測不能な攻撃を仕掛けてくる。さらに1年を通じてDF竹内洸、MF福島孝男らが組織としてかみ合い、チーム力は格段にアップ。インターハイでベスト16に入った力は本物だ。