私が選ぶプロレス音楽ベスト5 〜第2回 歌唱編〜

清野茂樹

藤波の「マッチョ・ドラゴン」はプロレスラーの歌唱レコードとしては最も有名な曲 【画像提供・清野茂樹】

 プロレス音楽は入場テーマ曲だけではない。プロレスラーたちの歌声が吹き込まれたレコードやCDは数多く存在する。そこで、当コラムの第2回は「歌唱編」と題して、現役選手が歌うレコードの中から実況アナの清野茂樹氏の独断で選曲したベスト5を紹介する。ここでの基準は美声の持ち主ではなく、インパクトでのチョイスである。

■第5位 藤波辰巳「マッチョ・ドラゴン」

 第5位は、プロレスラーの歌唱レコードとしては最も有名な曲、藤波辰巳(現・辰爾)選手の「マッチョ・ドラゴン」です。その理由は、何と言っても藤波選手の歌唱力に尽きます。原曲はレゲエシンガー、エディ・グラントの「街角ボーイズ」。これに森雪之丞氏が日本語で詞を付け、藤波選手が歌うことによってマッチョ・ドラゴン伝説が生まれたのです。藤波選手は一時期、この曲を入場テーマ曲にも使用していましたが、インストゥルメンタルバージョンを使用したのは正解でしょう。B面の「ドラゴン体操」も秀逸で、プロモーションビデオも存在します。

第4位 安生洋二「恋はあせらず」

原曲はシュープリームスの全米No.1ソング。安生の「やらされた感」に味わいがある 【画像提供・清野茂樹】

 第4位にランクインするのは、安生洋二選手です。現在は総合格闘家・泉浩選手のコーチを務める彼が、UWFインターナショナル在籍時の1996年に発表した曲で、これも原曲はダイアナ・ロスをはじめとするシュープリームスの全米ナンバーワンソング。当時、安生選手が高山善廣選手、山本健一(現・喧一)選手と結成した軍団・ゴールデンカップスのアルバム「OHTACO」に収録されています。帰国子女である安生選手が、ネイティブな発音で洋楽を歌っているのかと思いきや、発音は200%の日本人英語。デュエットする女性に比べて、安生選手の何とも言えない「やらされた感」に味わいがある曲です。

第3位 タモーンズ「ロックンロール・レディオ」

本田はプロレス界きってのロック好き。「タモーンズ」というバンド名で音楽活動をしていたことも 【画像提供・清野茂樹】

 第3位は、プロレスリング・ノアの本田多聞選手が歌う直球ロックンロール。多聞選手は、知る人ぞ知るプロレス界きってのロック好きで、その好きが高じ、かつてはラモーンズのカバーバンド、その名もタモーンズで音楽活動をしていたこともあるほどです。この曲ももちろんラモーンズのカバーで、多聞選手はジョーイ・タモーンと称して、ラモーンズへの愛情たっぷりにリング上では決して見せないシャウトを披露しています。ちなみに現在、タモーンズの活動はデッドエンド(無期休止中)。復活を待ちたいものです。

第2位 ジャイアント馬場「満州里小唄」

故馬場さんがあのまんまの声でスケール大きく歌い上げている 【画像提供・清野茂樹】

 第2位は、今は亡き馬場さんが、あのまんまの声で、スケール大きく歌い上げているこの曲です。御大の他にジャンボ鶴田さんや大仁田厚選手、サムソン・クツワダさん、マイティ井上氏など、歴代の全日本プロレス勢は美声の持ち主がたくさんいました。もともとは日本プロレス時代に作成された非売品ソノシートに収録された音源でしたが、近年はCD化されて入手可能となったのは喜ばしい限りです。2000年に横浜アリーナで開催された「第二回メモリアル力道山」で、開場中に場内で流されていたこともありました。楽曲は第一回紅白歌合戦のトップバッターを務めた歌手、菅原都々子の父、陸奥明の作曲です。

第1位 タイガー・ジェット・シン「妖怪人間ベムのテーマ」

“インドの狂える虎”シンが「早く人間になりた〜い」と歌う箇所は笑いを誘う 【画像提供・清野茂樹】

 さて、第1位はさんざん悩んだあげく、“インドの狂える虎”タイガー・ジェット・シンの日本語カバー曲をセレクトしました。あの悪党シンが日本語で「早く人間になりた〜い」と歌うあたりは、まさしく“狂える曲”で、レコーディング風景を想像するだけで笑ってしまいます。かつて、ザ・デストロイヤーが「赤鼻のトナカイ」を日本語で歌ってレコードを出したことがありましたが、破壊力はそれ以上でしょう。IWAジャパンとユニバーサルミュージックとの恒例のコラボレーションから生まれたマキシシングル「愛が地球を救うのだ」に収録されている珍曲です。
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著者プロフィール

1973年神戸市生まれ。1996年青山学院大学文学部卒業。広島のラジオ局でアナウンサー・DJとして活躍した後、2006年よりフリーに転身。現在はFIGHTING TVサムライにて新日本プロレスや格闘技の実況アナを務め、その他にもCMナレーションや文筆業まで幅広く活動している。プロレスのみならず、総合格闘技やキックボクシングなど、会場に足を運んで取材する興行の数は年間100を超えている。レトロな語り口とメガネがトレードマーク。

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