東洋大初V、“新山の神”柏原の誕生=箱根駅伝、昨季印象に残ったシーン・ベスト3
東洋大ルーキーの柏原竜二。5区山上りで区間新を達成し、“新山の神”の誕生と称えられた 【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】
<昨季印象に残ったシーン・ベスト3>
1位:東洋大が初優勝、“新山の神”柏原の誕生
2位:日大・ダニエルが20人抜きの新記録
3位:涙のリタイア、城西大の途切れたたすき
東洋大初優勝の裏にあったストーリー
始まりは、レース1カ月前にさかのぼる。08年12月1日に、当時2年生の長距離部員が強制わいせつの現行犯で逮捕。この責任を取って、当時の部長と駅伝監督が辞任する騒ぎが起こった。出場権のはく奪こそ免れたが、チームは5日間の活動自粛など、厳しい処分を下された。10月出雲駅伝(5位)、11月全日本駅伝(4位)で好成績を残し、箱根に向けて機運が高まっていた中での不祥事だけに、選手たちのショックは大きかったに違いない。
しかし結論から言えば、東洋大は本番のレースで見事な団結力を見せた。その裏には「ここまで育ててくれた監督のために」という選手たちの決意があった。
こうした思いをもっとも体現して見せたのが、5区に登場した柏原竜二(当時1年)だろう。9位でたすきを受け取った柏原は、急斜面が続く山上り区間で驚異的な追い上げを見せ、8人抜きを達成。東洋大に初の往路優勝をもたらすとともに、自身も区間新を記録し、“新山の神”誕生と喝采(かっさい)を浴びた。
この柏原の活躍で勢いに乗った東洋大は、翌日の復路で早大とのデットヒートを制し、初の栄冠を手にすることになった。
日大・ダニエルが20人抜きの新記録
こうした“ごぼう抜き”には大前提として、自分より前方に多くのランナーがいなければならない。さらに、各ランナーの距離差が少ないレース序盤でなければ達成は難しいだろう。記念大会として行われた第85回大会では、過去最多の23校が出場したため、ごぼう抜きには好条件がそろっていたわけだ。
少なくとも今大会では、20校しか出場できないため、この記録を塗り替えることは不可能だ。ダニエルの記録は「不滅の大記録」として、今後も語り継がれていくだろう。
涙のリタイア、城西大の途切れたたすき
「すいません、すいません……」
チームメートに両脇を支えられた石田は、涙で声を詰まらせながら謝罪を繰り返した。それは箱根駅伝で毎年繰り返される喜怒哀楽のうちの、「哀」を象徴するワンシーンだった。
ランナーがつなぐわずか数十グラムの「たすき」には、すべての選手たちの思い、周囲の期待、学校の歴史といった目に見えない重みがのしかかる。ランナーたちは、こうした計り知れないプレッシャーに立ち向かわなければならない。むろん、だからこそ選手たちの懸命な姿は、見る者の胸を打つのだろう。
城西大は今回の予選会で6位となり、再び本選切符を獲得した。石田もリタイアの悔しさを力に変え、チーム4番目となる全体31位でゴール。誰よりもたすきの重さを知るランナーは、「次こそたすきを渡す」と本選でのリベンジを誓う。
<了>
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