私が選ぶプロレス音楽ベスト5 〜入場テーマ曲編〜 1位は誰もが耳にしたことのある名曲

清野茂樹

58歳で現役の長州はリングでもテーマ曲同様に激しいファイトで観客を盛り上げている 【t.SAKUMA】

 それぞれ独特の世界観で会場を盛り上げるプロレスの入場テーマ曲。選手の登場とともに観客を熱狂させるその音楽は、試合の感動と重なって、これまで繰り広げられてきた幾多の名勝負を思い出せてくれる。プロレスファンならずとも、曲を聞けば当時の鮮烈な記憶がよみがえってくるのではないだろうか。
 実況アナウンサーとしてリングサイドでプロレスを見続けてきた清野茂樹氏に、思い出のプロレス入場テーマ曲をランキング形式で選んでもらった。選手の歩んできた歴史と一緒に、忘れられない名曲を懐かしんでいただきたい。

■第5位 長州力の入場テーマ曲「パワー・ホール」

 まずは、58歳の現役選手、長州力選手のオリジナルテーマ曲が第5位にランクイン。黒いタイツと白いシューズ同様、長州選手が“噛ませ犬発言”以前から愛用しているものです。リング上を縦横無尽に走り回る長州選手のハイスパートレスリングのイメージとぴったりなシンセサイザーサウンドは、P−MODELの平沢進氏の作品であることは有名な話。プロレスにはあまり興味がないという平沢氏ですが、スーパー・ストロング・マシンの入場テーマ曲「ハリケーンズ・バム」という傑作も残しています。

第4位 三沢光晴さんの入場テーマ曲「スパルタンX」

テーマ曲「スパルタンX」は故・三沢さんの代名詞となった 【t.SAKUMA】

 第4位は、今は亡き三沢光晴さんのテーマ曲です。1990年に虎の覆面を脱ぎ捨て素顔になってから使用した曲で、プロレス会場では、2小節目から「ミッサーワッ!」というコールと手拍子を巻き起こす力を持っています。もともとはジャッキー・チェンの主演映画「スパルタンX」のサントラ盤に収録されたものですが、その後、三沢さんはバージョンを変えながらも一貫してこの曲を使用、今ではジャッキーのイメージよりも三沢さんの代名詞と言っても過言ではありません。三沢さんのホームリングはもちろん、新日本プロレス、FMW、ZERO1、WRESTLE−1、リアルジャパンプロレスなど、他団体でこの曲を耳にした時の高揚感は今でも忘れられません。

■第3位 ブルーザー・ブロディの入場テーマ曲「移民の歌」

 第3位には外国人選手を代表して、ブロディ選手の入場テーマ曲を挙げました。これはとにかく、選曲した人の功績をたたえたい。新日本プロレスではレッド・ツェッペリンの原曲を、全日本プロレスでは石松元氏のカバーバージョンをそれぞれ使用していましたが、当時の団体とテレビ局の競争意識を語る逸話として興味深いものがあります。個人的には、管楽器の音色がキングコングを想起させる全日本バージョンの方が好みでしたが、新日本プロレスにブロディ選手が初登場した1985年に、ベートヴェンの交響曲「運命」に続いてツェッペリンバージョンが流れた時のインパクトに勝るものはないと思っています。現在、ブロディスタイルを受け継いでいる真壁刀義選手が、布袋寅泰氏のカバーバージョンで「移民の歌」を使用しているのはちょっといい話です。

■第2位 田村潔司の入場テーマ曲「FLAME OF MIND」

 前田日明氏、高田延彦氏、船木誠勝選手など、いわゆる“U系”と呼ばれる選手の入場シーンは、地上波テレビでのオンエア機会は少なかったにもかかわらず、テーマ曲の浸透度が高く、そして皆、楽曲とともに何とも言えない色気を漂わせて入場するから不思議です。田村選手もその例外ではなく、この曲こそ、マイフェイバリットの第2位に挙げたい曲です。作曲は内田光一氏で、田村選手はUWFインターナショナル時代から使用しています。ファンにとってはイントロ部分で手拍子するのも小さな楽しみになっています。PRIDE時代に一度、別の曲に変えたこともありましたが、田村選手には頑固者らしく、この曲での入場を貫いてもらいたいと思います。

第1位 アントニオ猪木氏の入場テーマ曲「炎のファイター」

アントニオ猪木の入場テーマ曲は誰もが知っている不朽の名曲だ 【t.SAKUMA】

 1位はやはり、日本で最も有名なプロレス入場テーマであるこの曲でしょう。原曲はモハメド・アリの自伝映画「アリ・ザ・グレイテスト」のサウンドトラックに収録された「アリ・ボンバイエ」。1976年の格闘技世界一決定戦の翌年、アリから猪木氏へ友情の印に贈られたというエピソードを含めて文句なしだと思っています。イントロ部分の「イノキ、ボンバイエ!」をワタクシは子供の頃「イノキ、ガンバレ!」だと誤解していましたが、「ボンバイエ」とはアフリカ部族の言葉で「殺せ!」の意味で、中邑真輔選手の得意技と同義語です。ちなみに、日本武道館でアリと闘った時の猪木氏は「ワールドプロレスリングのテーマ」で入場していました。

 第2回は「私が選ぶプロレス音楽ベスト5 〜歌唱編〜」です。ご期待ください。
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著者プロフィール

1973年神戸市生まれ。1996年青山学院大学文学部卒業。広島のラジオ局でアナウンサー・DJとして活躍した後、2006年よりフリーに転身。現在はFIGHTING TVサムライにて新日本プロレスや格闘技の実況アナを務め、その他にもCMナレーションや文筆業まで幅広く活動している。プロレスのみならず、総合格闘技やキックボクシングなど、会場に足を運んで取材する興行の数は年間100を超えている。レトロな語り口とメガネがトレードマーク。

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