神宮で答えを出した149キロ右腕・一二三=明治神宮野球大会 高校の部・リポート

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強気の投球で強力打線を完封

優勝候補・帝京高を完封するなど、前評判どおりの投球を見せた東海大相模高・一二三 【写真は共同】

 各地区大会を制した精鋭10校が集い、秋の日本一を決める明治神宮大会。ことし最も高校野球ファンの耳目を集めたのは、184センチの長身から繰り出す150キロ近いストレートと多彩な変化球を武器に、スケールの大きな投球を見せる東海大相模高のエース・一二三慎太(ひふみしんた=2年)だった。早くも来年のドラフト上位候補の呼び声も高い一二三の今大会を振り返る。

 まず、初戦の準々決勝・高岡商高戦で2失点(自責点1)で完投勝利。4回までに4失策と味方の守備が乱れたが、大崩れすることなく立て直した。9回には圧巻の3者連続の空振り三振を奪うなど、尻上がりに調子を上げ、中盤の逆転劇を呼びこんだ。「試合球がいつものメーカーと違って、立ち上がりはストレートがシュート回転していたけど、試合の中で修正できたました」と高い対応力をのぞかせた。
 
 続く準決勝で戦った帝京高打線は、岡部通織(2年)、園田崇人(2年)らプロ注目選手が並ぶ全国でも屈指の破壊力を誇る。その強力打線を「キレが良かった」という最速149キロのストレートで押しまくり、被安打5、四死球2、奪三振8と牛耳り、見事完封勝利を挙げた。
 自慢のストレートの威力を倍増させたのは、強気な姿勢だった。実は帝京高は、一二三にとって「打たれたイメージしかない」相手。夏の甲子園に出場した旧チームと練習試合で対戦し、KOされたという。しかし、この日は門馬敬治監督も「インサイドをよく使えていた」と語る攻めの投球。
「(KOを喫した)去年の自分とは違う。気持ちのレベルが上がったと思う」
 名門を相手にし、真価が問われた一戦。一二三は心の強さも発揮し、見事に答えを出して見せた。

雨に泣いた決勝 日本一は春にお預け

 その一方で救援登板した決勝では、雨に濡れたグラウンドコンディションの影響からか、ボークで決勝点を献上してしまった。「スパイクがプレートに引っかかって……。雨の中でのピッチングを見直したい」と反省の弁を口にした。自慢の快速球も影を潜め、「ボールが滑るので、コントロール重視で行ったんですが……。もっと雨でのピッチングをやればよかったです」と雨天時の対策不足を悔やんだ。

 関東大会を制したことで、春のセンバツ出場は確定的。関東大会の直後に、OBの巨人・大田泰示からチーム宛に電話が来た際のエピソードを明かした一二三は、「『大田先輩が行けなかった甲子園に行きます』と言いました」と記者陣の笑いを誘った。そのセンバツには、この日敗れた大垣日大高の出場も決定的だ。「今日の悔しさを春に向けて、原点に戻り野球を見つめ直したい」と雪辱を誓う。
 神奈川大会で負傷した右手のツメも、まだ完治していない。
「ツメが治ればストレートがもっと行くと思う」 
 秋にあと一歩届かなかった日本一は、万全のコンディションで迎える春の甲子園でつかむつもりだ。

<了>
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