2戦目を迎えるキム・ヨナに注目 ライザチェクは優勝なるか=フィギュアスケート、スケートアメリカ見どころ

青嶋ひろの

世界王者ライザチェクとベルネルの戦い

世界チャンピオンのライザチェクは地元で優勝を飾れるか 【Getty Images Sport】

 男子シングルは米国の誇る世界チャンピオン、エバン・ライザチェクが登場。小手調べだった中国杯では織田信成(関西大)に敗れたが、今大会は全米選手権に向けての調整試合、2位や3位でもファイナルOK、などといわずに、是が非でも優勝を飾りたいところだ。
 というのもライザチェクはスケートアメリカとどうも相性が悪く、過去4年間連続で優勝を逃している(05〜07年は2位、08年3位)。しかも味わっているのは05、07年は高橋大輔(関大大学院)、06年織田、08年小塚崇彦(トヨタ自動車)と、それぞれ違う日本男子に敗れるという屈辱。残念ながらリベンジしたい3人の日本男子の出場はないが、それでも五輪シーズン、現世界王者としてはスケートアメリカでこそぜひ雄姿を見せておきたいところだろう。

 ライザチェクを脅かす存在といえば、チェコのトマシュ・ベルネル。4回転が得意で、スケーティングも美麗。その演技には野性味も色気もあり、実力の上では世界チャンピオンのライザチェクにも負けないものを持っている選手だ。初戦のエリック・ポンパール杯のフリープログラムでは織田が回避し、ブライアン・ジュベール(フランス)が失敗する中、堂々4回転ジャンプも成功。と思いきや、後半バタバタと3回転ジャンプが崩れ、総合2位に甘んじている。しかしミスさえ最小限に抑えれば、ジャンプ、スケーティング、表現技術、すべてそろった選手であることは変わらず、エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)が復帰して4回転が必須となった今季、かなり期待されている。4回転が完ぺきとは言えないライザチェクがジャンプ構成でベルネルにどう対抗してくるか? ベルネルは大崩れを見せず、4回転を含めて真の実力を発揮できるか? シーズン後半を占う上でも必見の対決といえるだろう。

五輪代表へ戦いが続く選手たち

 彼ら2強を追いかける選手たちを見ると、五輪代表権をかけて国内での争いがし烈な選手が多くそろったのが興味深い。

 スウェーデン1枠を巡ってクリストファー・ベルントソン(NHK杯12位)と競うアドリアン・シュルタイス。ジュベール(フランス杯4位、NHK杯優勝)、ヤニック・ポンセロ(フランス杯5位、中国杯5位)、アルバン・プロベール(フランス杯7位)とともにフランス2枠を争い、ちょっと苦戦中のフロレント・アモディオ(ロシア杯9位)。プルシェンコがほぼ出場確実な中、ロシア2枠目をセルゲイ・ボロノフ(フランス杯6位、中国杯3位)、アルテム・ボロデュリン(ロシア杯3位、NHK杯8位)らと競うアンドレイ・ルータイ。パトリック・チャンともうひとり出場できるカナダ2枠目をジェレミー・テン(NHK杯10位)、ボーン・シプール(フランス杯12位、NHK杯11位)らとともに狙うケビン・レイノルズ(中国杯8位)とショーン・ソーヤー(ロシア杯8位)。ライザチェク、ジョニー・ウィアー(ロシア杯4位、NHK杯2位)が順調、ジェレミー・アボット(NHK杯5位)、アダム・リッポン(フランス杯3位、NHK杯5位)もまずますの仕上がりを見せる中、アメリカ3枠に割って入りたいブランドン・ムロズ(ロシア杯7位)とライアン・ブラッドリー(ロシア杯9位)。
 そして日本からは春に左股関節を手術してから、たった半年で復帰にこぎつけた南里康晴(ふくや)も出場する。五輪シーズン目前の大ケガということで心配されたが、さすがの身体能力の高さで夏には3回転ジャンプを取り戻し、新しいプログラムを作る余裕さえあったという。日本男子は高橋、織田、小塚の3強だけではないところ、ぜひ見せてほしい。

<了>

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著者プロフィール

静岡県浜松市出身、フリーライター。02年よりフィギュアスケートを取材。昨シーズンは『フィギュアスケート 2011─2012シーズン オフィシャルガイドブック』(朝日新聞出版)、『日本女子フィギュアスケートファンブック2012』(扶桑社)、『日本男子フィギュアスケートファンブックCutting Edge2012』(スキージャーナル)などに執筆。著書に『バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート 最強男子。』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』(角川書店)などがある

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