「城島は誤解されている」マリナーズ投手が語る退団劇

丹羽政善

第一報はEメールで

城島とバッテリーを組んだことで「多くのことを学んだ」と語るローランド−スミス(右端) 【Getty Images】

 先にカフェに着いていたのは、マリナーズの左腕投手、ライアン・ローランド-スミス。待ち合わせは午後2時15分だったが、手元の携帯電話の受信記録を見ると、午後2時2分には、“I am here(もう着いたよ)”とある。

 メール受信のおよそ5分後、車を止めて慌ててカフェに飛び込めば、彼はすでにコーヒーをすすりながら、店内中央の席から手を振った。

 持って来た新聞――城島健司の退団を伝える『シアトル・タイムズ』紙のスポーツセクションを手渡せば、筆者がカフェラテを買っている間、彼は熱心に読んでいた。

 やがて、テーブルに戻り、向かいの席に腰掛けながら「もちろん知っていたよね? 今日はそのことを聞きたくて」と切り出せば、「先週末から、何か動きがあると感じていた」とローランド-スミスは軽くあごを引いてうなずく。

 ここ3年で、平凡な中継ぎ投手から来季は先発の2番手、3番手を期待されるまでの投手に成長した彼は、「ケンジ(城島健司)からは多くのことを学んだ」とはばからず口にし、視線を再び落とすと、記事の続きを目で追った。

 城島退団の一報は、その前日、現地時間19日午前9時38分のEメールだった。改めて目を通すと、チーム広報からのそれには、城島が残り2年の契約破棄を決めたことが淡々と記されている。

 同日の午前10時半からジャック・ズレンシックGMの電話会見が行なわれたが、そこで驚くような裏が明かされたわけではなく、想像できる範囲。むしろ、奥歯にものが挟まったような、本来の彼らしくない歯切れの悪さだけが、あとに残った。

 そのとき、選手らはどう受け止めているのだろう? 特に投手はどうなのか?
 そんなことを考えて、想像しているうちに浮かんだのがローランド-スミスの名前。過去2年、彼が先発したほとんどの試合でマスクを被ったのが城島で、2人の呼吸は投手陣の中でもっとも合っているように見えた。

 その彼に「少し電話で話せないか?」とメールで打診すれば、「今、ロサンゼルスにいて、明日シアトルに帰る。戻ったら連絡するから、カフェで待ち合わせしよう」とすぐに返信があった。

 互いの家から、ほど近いカフェでは、度々顔を合わせている。カフェの名前は確認するまでもなかった。

地元紙では退団を歓迎?

 新聞を読み終わるのを待ち、反応を探る。

 問いかける前に彼が口にしたのは、「誤解されている」だった。

 地元の反応は、どちらかといえば、城島の退団を歓迎。エリック・ベダード、タイガースに移籍したジャロッド・ワッシュバーンらは、ロブ・ジョンソンをパーソナルキャッチャーに指名したが、その経緯を彼らの防御率に求め、地元メディアはジョンソンの方がリード面では優れている、などと伝えてきた。

 ローランド-スミスは、「当たり前じゃないか」という。それは、「(エースの)フェリックス・ヘルナンデスと他の投手の防御率を比べるようなもので、物差しが違う」。

 ドン・ワカマツ監督も、そんな報道があるたびに城島をかばったが、それを積極的に伝えるメディアはなかったように思う。

 ただ、名前こそ出さなかったが、一部の投手と城島がうまくいっていなかったことをローランド-スミスは否定しなかった。

「耳にしたのは、『あそこでなんでチェンジアップのサインを出すんだ』とか、そういうことだけど、それこそおかしい。最終的には投手に(次に投げる球の)選択肢があるのだから」

 結局城島は「スケープゴートに使われたんじゃないか」という。

「『言葉の壁がある』、『コミュニケーションが……』と言ってしまえば、それなりの言い訳になる。自分の悪い結果を城島に押し付けただけだ……」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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