福岡ソフトバンク、終戦で得た課題と「秋山野球」のこれから

田尻耕太郎

完敗で“5度目の正直”ならず

完敗で第1ステージ敗退となったソフトバンク・秋山監督。来季以降のチームづくりは果たして!? 【写真は共同】

 主将・小久保裕紀は泣いていた。“呪縛”を解くことは今季もできなかった。福岡ソフトバンクの2009年シーズンはいとも簡単に終わってしまった。
 完敗だった。初戦のリベンジを期すべく試合に臨んだが、東北楽天の田中将大の前になかなか走者を出せず、6回までは得点圏に進めることもできなかった。許したくなかった先制点も4回にホールトンが中村真人に適時打を打たれ失点。そして5回、山崎武司に痛恨の3ランを浴びた。「唯一の失投をひと振りで決められてしまった」と悔やんでも悔やみきれない1球。これで試合は決まった。
 力負けだ。レギュラーシーズンから苦手にしていた岩隈久志(1勝5敗)と田中(0勝2敗)を打てず、10本塁打を許していた山崎武にも2試合連弾を食らった。敗戦は悔しいが、納得するしかない。

“自滅”での敗戦…… ソフトバンクの目指す野球とは

 しかし、どうしても首をかしげてしまうシーンがあった。7回表だ。小久保と長谷川勇也の連打で初めて得点圏に走者を置いた。しかも無死だ。4点ビハインドだが、打席はチーム二冠王の田上秀則。ムードが高まりつつあった。ここで秋山幸二監督の決断は送りバントだった。
 これは今季の秋山野球のスタイルだった。9月23日の千葉ロッテ戦(ヤフードーム)でも3点ビハインドの8回無死一、二塁で松田宣浩にバントのサインを送ったことがある。「1点にこだわる野球」が今季の福岡ソフトバンクのテーマだった。とはいえ、点差を考えれば“消極的”と言われても仕方ない。しかも田上のバントは一塁手・セギノールの正面に転がり失敗に終わった。ちなみに先述の松田のときも失敗(スリーバント失敗)に終わっている。反撃ムードはゼロ、いやマイナスにまで落ち込んだ。初戦の失策にしてもそうだったが、今季終盤の福岡ソフトバンクはとにかく“自滅”での敗戦が多すぎた。

 王貞治前監督時代の06年から、福岡ソフトバンクは「スモールベースボール」を目指して戦ってきているが、完成度が高まった実感はない。かつての豪快野球の頃とは確かにメンバーは違うが、このチームの“らしさ”はやはりそこにあるのではないだろうか。秋山監督は就任時に理想のチームを「1番から9番までヒットも本塁打も打てて、足も速い」と答えていた。再び常勝軍団と呼ばれるためには、チーム作りの根本から見直す時期に来ているかもしれない。
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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