大宮に舞い降りた大天使=大宮アルディージャ ラファエルインタビュー

土地将靖

高い学習能力と適応性

ブラジル人ストライカーながら、ラファエルにはチームプレーの哲学がしみついている 【写真提供:大宮アルディージャ】

 取材を通じてのラファエルの印象は、学習能力が高いことがまず挙げられる。御殿場ミニキャンプで地震を体験した際も、「日本人は普通に生活しているので、日常で当たり前のことだと理解できた」と何食わぬ顔。苦手な日本料理を聞いても、「できるだけ食べられそうなものを選んで食べるようにしている」となかなかに賢い。それは、サッカーにおいても同様だ。

――スムーズにチームに溶け込んだように見えますが、心掛けたことは?

 ブラジルで新しいチームに移籍した時も、トルコに移った時も常にそうだったんですが、クラブの戦い方やクラブ全体の特徴、チームメート1人1人の特徴をできるだけ早く理解しようと取り組んできたつもりです。言葉の面でハンデはありますが、話せないなりにも、じゃれ合ったりコミュニケーションを取ることで、お互いの考えが少しずつ分かってくる面もあります。自分からみんなの輪に入っていって、自分を理解してもらう。そして、みんなを理解する。ここに来た時も同じことをしたつもりです。

――Jリーグにもうまく順応したように見えます

 リーグの特徴を理解するまではなかなか難しかったですよ。ですが、ボディーコンタクトというよりは、ボールを大事にするサッカーという印象を受けたので、それは僕のスタイルにとっても良かったと思います。

――何か課題はありますか?

 もちろん完ぺきなどということはあり得ないので、課題は必ずありますね。毎試合、自分の試合をDVDでチェックするようにしています。自分の犯したミスや、全体的にどういうことを修正しなければいけないのかを理解して、日々のトレーニングに取り組んでいます。

――一番影響を受けた選手は?

 マリオ・ジャルデウです。ブラジル人で長身のFWです。僕と同じように背が高いということもあって、彼のことを好きになりました。ハイボールに強い選手で、ゴールゲッターというところがまず好きになった点ですが、足元でボールを扱えるという点も気に入っています。今はカカ、クリスティアーノ・ロナウド、ベンゼマ……名前を挙げればきりがないですが、本当にいろんな選手の特長をものにしたいという気持ちを持っています。

捨て去ったエゴイズム

 冒頭に紹介した鹿島戦で、事実上の決勝点となったチーム2点目の土岐田洸平のゴールをアシストしたラファエル。だが、このシーンでは、ヘディングで打とうと思えば打てたクロスを、土岐田にしっかりと落としてゴールを演出した。試合後、ラファエルは「フリーの土岐田が見えていた。日本に来る時にエゴイストになることを捨ててきた」とコメント。ともすれば「自分がゴールを決めればそれでよし」と見えるこれまでのブラジル人ストライカーと比して、異色の言葉のようにも聞こえた。

――鹿島戦の後、「エゴイズムを捨ててきた」と言っていましたが

 チームプレーに徹することで、より早くチームに溶け込めると思うんです。サッカーはやはりチームプレーなので、エゴイストになるのはいいことではないと思います。チームプレーというのは、1人では何もできないスポーツということ。1人がチームのために、チームが1人のためにという精神を持って戦うことが結果につながると思います。僕自身の考えとしては、チームが勝利できさえすれば、僕自身のゴールが生まれなかったとしても幸せですよね。チームの勝利のために走ることがすべてです。

――元々そういう考え方なのでしょうか?

 キャリアをスタートしたころからそうだったと思います。わがままにプレーして20ゴールしたとしても、それがチームのためになっていなかったり、チームからまったく尊敬されない選手になってしまっているのであれば、いいことだとは思えないんです。ならば、常にチームのためにプレーして、周りからも評価される。そして、チームのための大きな存在になれる、そうした選手を常に目指してきたつもりです。それが自分の哲学ですね。

 ラファエルという名前は、キリスト教の大天使に由来する。“癒し”をつかさどる大天使の働きによって、1試合でも早くJ1残留という安息を、サポーターに与えてもらいたい。

<了>

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著者プロフィール

1967年1月28日、埼玉県生まれ。93年、現在のWEB版「J's GOAL」の前身である試合速報テレホンサービス「J's GOAL」にて、試合リポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーランスとなりライターとして本格活動を開始、大宮アルディージャに密着し週刊サッカーマガジン(ベースボール・マガジン社)ほか専門誌等に寄稿している。

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