1番打者の概念を覆す『坂本スタイル』とは何か?=読売ジャイアンツ・坂本勇人インタビュー
日本一奪回を狙う巨人のキーマン
20歳にして巨人の中心選手に成長した坂本。超攻撃型のトップバッターが日本一奪回のカギを握る 【スエイシナオヨシ】
監督から『今日から1番で行くから』と言われて。それと同時に『何も変えることはない。いままで通りにやってくれ』とも言われたので、自分としては本当に何も考えずに打席に入るようにしました。
――昨シーズンも前半戦の19試合で1番に起用されて80打数19安打の打率2割3分8厘。この数字から考えると、いくら何も変えなくてもいいと監督から言われても、1番は難しいと思ったんじゃないかな。
昨シーズンは技術的にも全然ダメでしたから。今シーズンは一番調子がいい時に1番と言われたので、そのままの状態で打つことができたと思います。試合を重ねるにつれて、9番の味方のピッチャーが打った後の打席はどうしようとか、そういうことを自然と考えられるようになってきました。
――その横浜戦では、2対2で迎えた9回裏に真田裕貴からサヨナラホームラン。四球、三振、三振、ライトフライと結果を残せずに回ってきた5打席目だったけど、実際にどんな心境だった?
あまり深くは考えていなかったです。試合が終わってみて、1番だったからああいう場面で回ってきて、サヨナラになったんだなと思ったくらいですね。
――特に自信になった、その後に影響を与えた、という打席ではなかったんだ。
野球人生で初めてのサヨナラホームランだったので、いい場面で打てたということに関してはすごく自信になりましたけど。それ以外は特に何も変わらないですね。
初球を見逃さない打撃思考
ピッチャーって絶対にストライクを先行させたいはずなので、それを簡単に見逃すのはもったいないと思って。別に1番だから相手に球数を投げさせようと思ったことは一度もないし、何も変えないでいいと言われているので、初球を打って凡打に終わっても特に何も考えてないです(笑)。
――早いカウントから打って出て、ヒットで出塁することで味方打線にどんな影響を与えると思っている?
初回で言えば、僕が出塁すれば松本(哲也)さんが確実に送ってくれる。初回から僕が出塁して、得点圏に進んで小笠原(道大)さんやラミちゃん(ラミレス)に打順が回れば、それだけで相手のピッチャーにものすごいプレッシャーをかけられると思うんです。
――確かにそうだね。坂本流の集中力の高め方を聞いてみたい。
特にビジターの時なんかはプレーボールですぐ打席に立って、何となくそのまま試合に入っちゃうから、いい成績を残せなかった。最近は初球を絶対に打ちにいこう、このへんのボールを打ちにいこうと強い気持ちで打席に入れるようになった。そういう意識がすごく大事なんですよね。
――積極的なバッティングで一番のポイントはどこにあるんだろう。
低めの変化球に手を出さないこと。状態が悪い時はどうしても振っちゃうので、結果もついてこない。あとはタイミングですね。バットの始動が遅くならないように。僕はタイミングが一番大事だと思っているので、クイックのうまいピッチャーが嫌いなんです。チェン(中日)とか由規(東京ヤクルト)とか。
――狙い球が外れた時は、どのように対処しているの。
狙い球はないので……(笑)。
――狙い球がないって(笑)。来たボールを素直に打つ、ということ?
そうです。狙いません!
将来は打率を残してホームランも打てるバッターを目指す
うーん、好きじゃないですけど(笑)。しないと不安になるというか、最近は練習をするだけしてダメだったらいいや、と思えるようになってきましたね。
――入団した時は「二岡(智宏/北海道日本ハム)のように右方向にホームランを打てる打者になりたい」と目標を掲げていたし、昨シーズンは早出特打ちで右方向に一生懸命打っていた姿が印象的だったね。今シーズンで言えばヒットの実に90パーセント近くがセンターから左方向。もともと左利きで、左手首のリストが非常に強いこともあるんだろうけど。
この1年間で、いまの自分のヒットゾーンは左方向にあるということがわかりました。特に変えようとも、これでダメだとも思っていません。もっと右方向に大きい打球が打てればホームランも増えるんでしょうけど、右への打球を意識するのは体ができてきてからでいいと思っています。
――やっぱり将来的には3番を打ちたい、と思っているんだ。
打率を残してホームランも打てるバッター。そこを目指してやっていきます。
<写真=スエイシナオヨシ 聞き手=橋本清>
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