バレー男子、3戦全勝で世界選手権へ 効果を生んだ新たな試み

田中夕子

全日本男子が、14年連続14回目の世界選手権出場権をつかんだ 【坂本清】

 2010年にイタリアで開催されるバレーボール男子世界選手権の出場権を懸けたアジア予選が28日から30日までの3日間にわたり、パークアリーナ小牧(愛知県)で開催された。世界ランキング12位の日本は、カザフスタン(30位)、イラン(24位)、韓国(19位)を下し、3戦全勝で上位2カ国に与えられる出場権を手にした。

※ランキングは2009年7月28日時点のもの

世界で戦うために取り組んだ事

 かつては日本、韓国、中国がけん引してきたアジアのバレーだが、レシーブからのコンビバレーという、かつての“アジアスタイル”は近年、変わりつつある。2メートルを超える選手がそろったカザフスタンには「高さ」という武器があり、イランはヨーロッパバレーにも劣らないパワーとサイドからの高速コンビでジュニア、ユース世代も力をつけてきた。
 ひょっとしたら、日本はアジアで勝つことすら難しいのではないか。ランキングでは日本が上回っているとはいえ、危惧(きぐ)する声があったのも事実だ。
 アジアを制し、世界で戦うためにまず何をするか。
 日本は、高さやパワーという「個」の力で劣る部分をカバーするため、組織力と正確な技術をあらためて見直した。そのなかで重要課題として挙げられたのが、サーブとブロックの関係性を構築することだった。
 サーブの種類を、ミスになるかもしれないが攻めを優先した「リスクサーブ」と、攻めつつも確実に入れていく「8割サーブ」、確実にコースや選手を狙う「作戦サーブ」と3つに区分する。石島雄介(堺)、清水邦広、福澤達哉(ともにパナソニック)らジャンプサーブ陣は対戦相手のデータによって「リスク」と「8割」に分け、宇佐美大輔(パナソニック)、山村宏太(サントリー)、松本慶彦(堺)らジャンプフローター陣は、前衛のウイングスパイカーや、後衛からパイプ攻撃(後衛からの高速バックアタック)を仕掛ける選手などを狙い、サーブで、ブロックの的を絞らせる。

日本のブロックは、3連戦で効果を発揮 【坂本清】

 ブロックの中心でもあるミドルブロッカーの松本は、この大会から新たな試みが導入されていたことを明かす。
「サイドの選手が、ブロックのときにサインを出すようにしたんです。どのチームもパイプが増えたので、サイドで止めるよりも、気持ち、少しだけ中に寄る。それを個別に判断するのではなくて、全員が共通理解を持って動くためにサインを出す。大会前のゲーム形式での練習も、徹底して確認するようにしていました」

 最終日の韓国戦は、まさにその成果が顕著に現れた。
 まず第1セット、19−19の場面。「勝負をするサーブとはいえ、入る確率を上げるために、芦別合宿から、助走の距離を短く、トスを少し低くした」という清水のサーブが低い軌道で韓国コートに入り、サーブカットが乱れた。ブロックの選択肢からクイックとサイドからの速い攻撃が消え、日本の両サイドブロックがやや中央に寄る。苦しい体制から放たれたカン・ドンジンのバックアタックを、3枚ブロックで見事に仕留めた。

 続いては第2セットの13−7と日本がリードした場面だった。サーバーの松本が、やはり後衛レフトのカンをサーブで狙う。セッターが前衛にいるため、韓国はAカットが入らなければセンターを使うことが少ないのはデータで確認していた。カット返球後、レフトのムン・ソンミンが中央に回り込んだことを確認すると3枚で時間差攻撃を仕留め、続いてレフトからのクロススパイクをやはり3枚でシャットアウト。韓国・カンは試合後にこんなコメントを残した。
「韓国の速攻がことごとく遮られるなど、日本はセットプレーの連携が取れていた。あれは練習なくして成り立たない。いかに練習を積んできたか、痛感させられた」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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