城島、野球人生で最も厳しい状況

丹羽政善

城島が、城島でいられた故障前

城島は故障を機に出場機会が減り、厳しい状況に立たされている 【Getty Images】

 さかのぼること3カ月。5月19日(現地時間)のマリナーズ戦でエンゼルスは、8回も盗塁のスタートを切った。成功は5回。城島健司が刺したのは、3つ。エンゼルスにとっては、その時点で、ともにシーズンハイ。

 エンゼルスは、とことんすきを突いてきたという印象。必ずしも監督の指示ではなく、投手の足が高く上がれば、選手の判断で揺さぶりをかけてきた。

 2盗塁(1盗塁失敗)を決めたトリー・ハンターもいう。

「あれだけ、足が上がればね」

 この日の先発は、フェリックス・ヘルナンデス。5回2/3を投げて11安打を許すなど本調子とは言えず、ヒットを打たれるとムキになって、打者を力でねじ伏せにかかる。すると左足が高く上がり、走られる。悪循環だった。

 城島も苦言。

「スライドステップのサインが出て、やらなかったり、できなかったら、チームの和を乱す。今はもう、教育の段階じゃない」

 ドン・ワカマツ監督もこの日の試合後、フェリックスに対して厳しいコメントを残している。

「走られるか、走られないか。本来、コントロールできることだ。基本的なことができていなかった」

マイク・ソーシア監督との駆け引き

 一方で城島は、こんな言葉も漏らしている。

「マイク・ソーシアの酒がおいしくなりそうだなあ。嫌だなあ。彼は、キャッチャー出身ですから、僕の気持ちも分かってるでしょうし。でも、刺したあと、意地でも走って来るっていう、そういう駆け引きは面白いといえば、面白いし、やりがいもある」

 城島は、この日に限らず、ソーシアとの間接的な対決は、ある意味、「楽しい」と話した。

 どんな仕掛けをして来るのか。それにどう応えられるのか――。

 翌日の試合前、ソーシア監督のいる監督室を尋ねてみた。

 いきなり、「昨日のお酒は、おいしかったですか?」と聞けば、きょとんとしていたが、城島とのやり取りをかいつまんで話せば、笑い出した。

 そして、こんな昔話を始める。

「私が現役のころは、カージナルスがよく走るチームでね、徹底的に試されたよ」

 ソーシアがドジャースの正捕手だったのは、1980年代の中ごろから1990年代の前半にかけて。そのころ、1985年から3年連続で年間100盗塁をマークしたビンス・コールマン、オジー・スミスらが、カージナルスにはいた。

 監督は、ホワイティ・ハーゾッグ。
 彼のスタイルは、「ホワイティボール」などと呼ばれ、投手力を含めたディフェンスと、スピードに重きを置いたもの。盗塁は、ハーゾック監督の基本戦術だった。

 言ってみればそれは、ソーシア野球に通じるところがあり、ゆえに現役時代のエピソードに目を細めたのかもしれないが、実際、カージナルスとの対戦は、楽しかったか?
と聞けば、彼はこう答えている。

「ケンジの気持ちは分かるよ」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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