アルマゲドン襲来 高田総統が壮絶な最期=ハッスル

高木裕美

竹内力の“双子の弟”RIKIの凶弾に散る高田総統(右) 【t.SAKUMA】

 ハッスル上半期最大のビッグマッチとなる26日の「ハッスル・エイド2009」(東京・両国国技館)では、驚天動地のアルマゲドン(最終戦争)が勃発。満員となる8126人の見守る前で、これまで5年半続いたハッスルの世界観を根底から覆すような大事件が起きた。

「さよなら高田総統」というサブタイトル通り、ハッスルの偉大なる支配者・高田総統がハッスルのリングから消滅。高田総統の「究極の闘う化身」エスペランサー・ザ・ゴッドがハッスル軍の新エース・マグナムTOKYOに敗北を喫した上、総統自身も俳優・竹内力の“双子の弟”RIKIが変身したキングRIKIの放つ「紅のバックファイヤー」に倒れ、生死不明のままハッスルのリングから闇の世界へと旅立った。

 また、これまでハッスル軍と長きにわたり抗争を繰り広げてきた高田モンスター軍は、高田総統の号令により解散が決定。また、ハッスル軍のキャプテンを務めていたボノくんも、父グレート・ムタを探しに魔界へ突入し、ハッスルのリングから去っていった。

高田総統がキングRIKIの前に散る

高田総統を「ムチャクチャ弱い」呼ばわりしたキングRIKI 【t.SAKUMA】

 04年にスタートしたハッスルの初期から活躍し、絶大なる権力と人気を誇るハッスルの偉大なる支配者にしてハッスルの代名詞ともいえる高田総統が、リングを去った。
「エイドでさよなら」と予告し続けてきた高田総統は、この日のオープニングでも、観客に向かって「これが最後」という言葉を連発。そしてついに迎えたメーンハッスルを前に、自身の「究極の闘う化身」エスペランサー・ザ・ゴッドを「ファイナル・ハイパー・ビターン!」によってリングに送り込んだ。

 対戦したマグナムが「小便ちびるかと思った」と思わず本音を語ったほど、まさに「恐怖」という言葉がコスチュームをまとったかのようなゴッドの威圧感に、マグナムは何もできず。必死でローキックで立ち向かうも、まったく効いている感触もなく、まるで赤子でも相手にしているかのようにゴッドの掌の上でもてあそばれるばかり。しかし、マグナムはゴッドが放とうとしたレーザービターンを、腕をつかんでそらし、ゴッドの胸めがけて発射させると、被弾したゴッドはもはや立ち上がれず。マグナムは最後の気力を振り絞って、AVスタープレスでゴッドから3カウントを奪い取った。

 闘う化身は敗れても、高田総統は死なず。かつてエスペランサーが坂田亘に敗れた時のように、元気な姿のままリングに登場した高田総統は「私ができることはすべてやり尽くした」と、このリングに未練はないことを明かした上で、「強いリーダーシップを持った後継者が見つかった」とマグナムに今後を託すと、「手と手を取り合って新しい未来を作りましょう」と呼びかけるマグナムと歴史的握手をかわし、ハッスル軍とともに同じリングに上がった。

 しかし、そこに“ハッスルの破壊者”キングRIKIが登場。Vシネマの帝王のような貫禄と、「ヘンチクリンな衣装」(高田総統談)をまとったキングRIKIは、「全知全能の高田総統がどんなものか確かめに参りました」と意味深な笑みを浮かべ、高田総統と向かい合った。危険を察知した高田総統は「ハッスル軍の諸君、伏せろ!」と呼びかけると、身を呈してハッスル軍の前に立ちはだかり、キングRIKIの放出する「紅のバックファイヤー」を全身ハチの巣状態となって被弾。爆音と炎が吹き上がる中、体から煙を立ち上らせながらゆっくりと倒れた。

 心配するハッスル軍に対し、高田総統は「大丈夫だ、今こそハッスルするんだ」と最後のメッセージを送ると「ハッスルよ、永遠なれ」という最期の言葉を残し、黒装束の者たちが待つ闇の世界へと消えていった。
 一方、高田総統を「ムチャクチャ弱い」呼ばわりしたキングRIKIは、エスペランサーのレーザービターンを遥かにしのぐ威力を持つ「紅のバックファイヤー」を「お中元代わり」と称し、さらなる大技があることを示唆。高田総統の仇とばかりににらみつけるハッスル軍と観客に対し、「次にお目にかかれるのは秋の声が聞こえる頃でしょう」と不敵な予告を残して去っていった。

 高田総統も消え、高田モンスター軍も消え、唯一残されたハッスル軍は、わずか4日後に迫った30日の後楽園ホール大会に向けて「何も決まってない」と不安を露呈。しかし、「RGのギャグ100連発」は阻止するだけの判断力は持ち合わせており、悪夢の一夜は回避されることになった。
 高田総統にハッスルの未来を任されたマグナムは「高田総統の魂を受け継いで、もっともっと進化していく」と、さらにハッスルを発展させていくことを約束。新生ハッスル軍のメンバーとともにハッスルポーズで大会を締めくくった。

大人になったボノくんが魔界へ出発

ボノくんが覚醒し、父そっくりのグレート・ボノに 【t.SAKUMA】

“闘いと美の女神”インリン様と、“魔界の住人”グレート・ムタとの息子であるボノくんが、ついに本格的に覚醒した。
 07年8月に「イン珠」から生まれたモンスター・ボノは、生後すぐの赤ん坊とは思えない大きさとパワーで圧倒的な強さを発揮。その後、モンスター軍を離脱してハッスル軍入りし、ボノちゃん、ボノくんと進化を遂げながら、スクスクと成長していった。
 7.5博多大会以降、しばらく長い眠りについていたボノくんだが、この日のセミハッスルの試合中に目を覚ますと同時に過去の記憶がフラッシュバック。父ムタの「覚醒せよ」というメッセージを受け取り、父と同じ姿と技を受け継いだグレート・ボノに変身した。

 もはや完全に成人として一人前になったボノは、驚異的なパワーでモンスター軍最強コンビのアルマ&ゲドンを一蹴。思春期時代にはそのお色気攻撃に悩殺されまくった美人エージェントのフランソワーズには顔面に赤い毒霧を噴射し、過去の煩悩もしがらみもすべて断ち切った上で完勝を飾った。
 ついに魔界の一員となったボノは試合後、ハッスル軍のメンバーの呼びかけに応えず、これまで入ることが許されなかった魔界の扉の中へ潜入。かつてエスペランサーを道連れとして行方不明になった父を探すため、ハッスルを離れ、自身も魔界へと旅立っていった。

ブッチャーとシンが禁断の一騎打ちへ

シン(左)とブッチャーが誤爆から仲間割れ 【t.SAKUMA】

 約20年ぶりにタッグを組んだアブドーラ・ザ・ブッチャー&タイガー・ジェット・シンの最凶コンビが大暴走。30日の後楽園大会で両者の一騎打ちが行われることが決定した。
 ブッチャー&シンはHG&RGのレイザーラモンを相手に場内ところ狭しと暴れ回り、観客を巻き込んでその凶悪ぶりを遺憾なく発揮。シンがHGの命ともいえるマスクと帽子を剥ぎ取って素顔をさらけ出し、ブッチャーがフォーク攻撃で2人を血祭リに上げるも、20年というブランクのせいか、最凶まさかの誤爆が発生した。

 先にシンの攻撃が同士討ちとなり、火種を抱えていたその数分後、今度はブッチャーの地獄突きがシンにヒット。その瞬間、RGがシンを丸め込み、まさかの3カウントを奪取してしまった。

 この敗北に、試合後もブッチャーとシンは場外乱闘を繰り広げ、互いへの怒りを爆発。これを受け、4日後の後楽園大会で両者の因縁決着戦が決定したが、両国国技館以上に危険な香り漂う一戦となりそうだ。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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