マリナーズのトレーナーが語る成功する選手の思考力とは=森本貴義氏インタビュー

丹羽政善

マリナーズの森本貴義トレーナーがメジャーで成功している選手の思考力などを語った 【丹羽政善】

 2004年からマリナーズのチームトレーナーを務め、WBC(ワールドベースボールクラシック)でも、トレーナーとしてサムライ・ジャパンに帯同した森本貴義トレーナーが、『一流の思考法』を上梓(じょうし)。現場で多くの選手を見てきた経験を1冊に詰め込んだ。発売に合わせ、テーマの背景などを語ってもらった。

考え方がパフォーマンスに影響する

――まず、本を書くきっかけから

今までも、こういう本を出したいという気持ちがあって、話もあったんですけど、出版社の意向と、自分の書きたいものが食い違ったりして、例えば、こういう話を書いてください、イチロー選手のこと書いてください、となるわけです。ただ、そうなるとトレーナーとしての守秘義務もありますからね。でも、僕が経験してきたことは特別なことだと思うので、それを現役で働いているうちに伝えたいと考えていました。

――テーマを選んだ背景は?

考え方で、成功している選手と失敗している選手がいる――日本でも感じていたことですけど、メジャーに来ても、やはり、同じなんだなあと。つまり、同じ行動特性というか、成功する選手、失敗する選手では、発言とか行動が違うわけです。それはどこから来ているのかと考えたときに、考え方とか、物事のとらえ方が、行動、パフォーマンスに影響しているのではないかと。

――例を挙げると?

打撃練習をたくさんしても、ウエイトトレーニングをたくさんしても、打てないときは打てないと思ってしまう選手は、後者ですよね。その後に続くものを見ていない。それが大きいわけじゃないですか。例えば、きょう打てなくても、今のトレーニングは、1週間後、1年後に現れるかもしれない。その準備をしているという長期的なビジョンを持てる人というのは、一流選手だと思うんですよね。だから、短期的に結果を求める選手っていうのは、先を見ていない。きのう、あんなに練習をしたけど、きょうは打てなかった。もう、打撃練習をやめよう、となる。

――今まで、多くの選手に接してきた。前者の代表的な選手は?

ジェイミー・モイヤー(元マリナーズ、現フィリーズ)ですかね。彼は、イチロー選手に近い考え方というか、野球に対する哲学を持っていると思います。例えば、ダメな選手は、結果が出たら、きょうはアイシングはいいとか、きょうは疲れているから何もしたくないとか、そういうことがある。でも彼なら、パーフェクトゲームをしても、打たれても、次の日には同じことをするはずです。見ているところが違うというか、彼は毎日、自分の内面、内なるものと対話しているんでしょうね。

――本では、無意識化できることが、成功につながると。モイヤーは、それができている?

彼は多分、ゲームプランを何回もシミュレーションしているんですよ。こうなったら、こうするって。だから、迷いがほとんどないと思います。それができているのは、自分の動きを無意識化できているからでしょう。だからあの球でも、通用するんじゃないでしょうか(笑)。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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