陸上界に新スター登場の予感=世界選手権に向けて

折山淑美

“イケクミ”のライバルが絶好調

女子走り幅跳びは、桝見咲智子が“池田”久美子と面白いライバル争いを展開しそうな予感 【写真/陸上競技マガジン】

 マラソンシーズンが終わり、トラック&フィールドのニュースも聞こえてくるようになった春、九州からは4月4日に九州学生連盟の学連記録会女子走り幅跳びで、桝見咲智子(九電工)が日本歴代4位の6メートル60を跳んだという知らせが入ってきた。風に恵まれたとはいえ、3回目から6回目までの試技は、6メートル60を含めてすべて6メートル54以上と好調だ。
 桝見は昨年の日本選手権で池田久美子(現:井村久美子=サニーサイドアップ=)を破って優勝した選手だ。優勝記録の6メートル57は北京五輪参加標準B記録に3センチ届かず、2007年に6メートル73を跳んでA標準突破を果たしていた池田とともに7月の南部忠平記念陸上競技大会で追試を。結局、6メートル70を跳んで優勝した池田が北京へ駒を進めた。

 桝見は中学2年で全日本中学の三種競技Aで優勝し、3年では三種競技AとBを制覇していた逸材。インターハイの走り幅跳びも高校2年で優勝し、高校3年だった02年には6メートル43の高校記録(当時)を樹立していた。福岡大へ進学してからはなかなか高校時代の記録を更新できずに苦しんでいたが、4年になった06年には6メートル53をマーク。社会人2年目の昨年は自己記録を再度更新して日本選手権初制覇を果たしたのだ。
 8月の世界選手権のB標準記録は6メートル62。桝見がその記録をターゲットにしたことで、女子走り幅跳びの戦いは面白くなってきた。実績のある池田としても、シビアな勝負に臨まなくてはいけなくなり、尻に火がついてきたのだ。それが、07年以来パッとしてない彼女の闘争心を高めてくれるのは間違いないだろう。

 女子走り幅跳びは01年から05年まで、池田と花岡麻帆(チームミズノアスレチック)が日本代表を巡って激しい戦いを繰り広げてきた。特に05年の日本選手権では、逆転に次ぐ逆転でファースト記録とセカンド記録で並び、サード記録で決着がつくというきわどい勝負をしている。その競り合いが、06年の池田の6メートル86の日本記録を誕生させたといっても言い過ぎではないだろう。

 女子走り幅跳びが再度世界へ挑戦できるような勢いを取り戻すためにも、桝見が最低でもB標準を突破することが必要だ。そこから再び、二人でA標準(6メートル72)突破というレベルまで持って行ってほしい。

金丸が“高野進超え”を目指す

北京五輪4×400mリレー代表の金丸祐三も今季絶好調 【写真/陸上競技マガジン】

 男子で注目したいのは、北京五輪で銅メダルを獲得した4×100メートルリレーとは反対に、予選落ちという屈辱を味わった4×400メートルリレーのエース金丸祐三(法大)だ。高校時代から注目されたスプリンターながら、07年と08年はケガもあり、自己記録を45秒21まで縮めながらも世界大会では結果を残せなかった。だが肉体改造に取り組んだ今年は冬期合宿から元気だ。まだスピードトレーニングを始めていないにもかかわらず、沖縄合宿では450メートル走で52秒6と自己記録を大幅に更新していた。さらに、4月5日の東京六大学対抗陸上のマイルリレーではアンカーを務め、44秒54のラップタイムをたたき出している。

 本人も「もう45秒台はいらないんです。44秒台を出さないことには世界との戦いを始められない。そこが本当のスタートだと思っているんです」と意欲を見せている。去年より数段上がった手応えがあるという金丸が、44秒78の日本記録を持つ“高野進超え”をできるか。それが男子短距離の次の楽しみでもある。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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