陸上界に新スター登場の予感=世界選手権に向けて

折山淑美

三津谷vs.大野の男子長距離陣の戦いに注目

男子長距離は中堅世代が活躍。唐津10マイルと熊日30キロを連覇した三津谷祐 【写真/陸上競技マガジン】

 男子長距離は、昨年までは学生勢と北京代表の松宮隆行(コニカミノルタ)のみに注目が集まっていたが、実績もあり中堅ともいえる世代の動向も今シーズンの見どころの一つだ。
 その筆頭が05年、07年世界選手権代表の三津谷祐(トヨタ自動車九州)だ。昨年の北京五輪代表は逃したものの、来季からのマラソン挑戦を視野に入れた彼は今年2月、唐津10マイルロードレースと熊日30キロロードレースを連覇している。マラソンも視野に入れた練習でスタミナをつけたことで、トラックレースでもこれまでより一段上のスピードにも挑戦できるはずだ。先日引退した高岡寿成(カネボウ)が持つ1万メートル27分35秒09の日本記録を更新できるまでになれば、来年以降のマラソン挑戦への期待はさらに膨らんでくる。

アテネ五輪1万m代表となった大野龍二。今シーズン、三津谷とともに男子長距離界を引っ張っていけるか 【写真/陸上競技マガジン】

 さらにもう一人、1万メートルで世界選手権出場を狙う大野龍二(旭化成)も、4月4日の選抜中長距離熊本大会の5000メートルで日本人トップに入り、まずまずのシーズンインをしている。
 大野は社会人2年目の04年日本選手権1万メートルで優勝し、19歳で一躍アテネ五輪代表になっている選手だ。その後はケガなどで低迷していたが、北京五輪を狙った昨年は、27分53秒19を筆頭に、4レース連続で27分台を出すなど、前回代表の意地を見せていた。レース条件などには恵まれず、残念ながら27分50秒00のA標準記録突破は実現できずに北京五輪代表にはなれなかったが、その安定感と勝負にかけた執念には見るべきものがあった。

 高校から実業団に直行し今年24歳になった同学年の二人が、トラックレースへ懸ける意地を見せつけてくれれば、松宮や後に続く若手選手たちにも大きな刺激を与えることになる。マラソンで世界と戦うためには必要不可欠なスピードアップを、今シーズンのトラックでどこまで実現してくれるか。日本の将来の男子長距離を占う上でも、注目したい。

 <了>

陸上競技マガジン5月号は、トップ選手から強さの秘訣を学ぶ

陸上競技マガジン』5月号・表紙 【写真/陸上競技マガジン】

 好評発売中の陸上競技マガジン5月号では、トラック&フィールドシーズン開幕に合わせて、「トップ選手の強さと技術」を徹底検証。塚原直貴、高平慎士、為末大といった有名選手の強さの秘訣を探っています。さらに、2010年箱根駅伝企画もスタート! 新監督や新入生を迎えて新体制となった各チームの今季の戦力とは? 東洋大、早大、駒大ら有力校の注目選手を紹介しています。また、女子マラソンの土佐礼子と渋井陽子の先輩・後輩へのインタビューを通して、渋井が復活を遂げた理由に迫っています。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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