3勝を挙げ松坂がMVP 岩隈、杉内も活躍=WBC日本代表 各選手総括(投手編)
※●●に囲まれたところは一夜明け会見のコメント
ダルビッシュ、先発にリリーフに大車輪
「見えない敵にも負けないように対処する。チームである以上ポジティブなことを考えて常に前向きで行こう」。
一夜明け会見で明かしたこのセリフ。2月15日にスタートした侍ジャパンにとって、連覇という重圧は相当だったに違いない。しかし、大会期間中、笑顔を絶やさず、「胸と胸をつき合わせて正々堂々と戦おう」と選手を鼓舞。誇りとあこがれのジャパンのユニホームで世界一を勝ち取った。加藤良三・プロ野球コミッショナーも「本当に卓越したものがあった」とほめた。選手を信じ、勝利に徹底的にこだわる一貫したさい配が侍ジャパンを世界一に導いた。
<ダルビッシュ有>
決勝ラウンドでは不調の藤川球児に代わって抑えを務めた。ストレートが自己最速となる100マイル(160キロ)を記録するほど気合が入っていた。しかし、決勝では1点リードの9回に登板し、同点に追いつかれた。それでも逆転を許さず、延長10回に最後の打者からスライダーで空振り三振を奪って、胴上げ投手に。
「空振りした瞬間はわけが分からなかった」というものの、長身を折り曲げて全身全霊のガッツポーズを見せた。原監督が「日本を代表する投手」と認めたダルビッシュ。今大会を通じて、先発、中継ぎ、抑えとすべての役割を経験し、日本代表を世界一に導いた。
●素晴らしいメンバーの中で野球できたことが幸せ。最後はハラハラドキドキさせたけど、最終的に優勝できて本当に良かった。素晴らしい時間だった●
<馬原孝浩>
2次ラウンドまでは藤川につなぐ中抑えとして活躍。しかし、準決勝の米国戦では150キロ台のストレートを連発するも2安打2失点。決勝での登板はなかった。それでも、前回大会では米国ラウンドからのメンバー入りで登板はなかったが、今回は「持てる力を発揮できた」と胸を張った。
●前回大会は途中から参加して投げることができなかったけど、今大会は自分の持てる力を存分に発揮できた。このすばらしいメンバーの一員になれたことを誇りに思う●
<田中将大>
準決勝の米国戦では7回の1イニングに登板した。米国にとっては1番から始まる好打順だったが、松坂が本塁打を浴びた1番・ロバーツ、4番・ライトを空振り三振に打ち取るなど無失点に抑えた。今大会は中継ぎで4試合に登板し、十分な存在感を見せた。チーム最年少ながら「今度は(松坂の)18番をつけたい」と笑いを取るほど侍ジャパンの中にとけ込んでいた。
●チーム最年少として参加した。素晴らしい先輩たちに囲まれながら本当にいい経験ができたと思う。次は18番を着けられるように頑張る●
<涌井秀章>
北京五輪では先発として活躍した。しかし、今大会は「先発できなくて悔しかったけどそれを押し殺した」と中継ぎ登板のみ。慣れないポジションにも十分に適応した。決勝ラウンドでは登板はなかったものの、ブルペンでは肩をつくって出番を待った。その存在は投手コーチにとっても頼もしかっただろう。
●先発できない悔しさもあったけど、それを押し殺して中継ぎで使ってもらえて良かった。イチローさんのひょうきんな姿に衝撃を受けた。イチローさんありがとうございました●
<松坂大輔>
大会最多の3勝を挙げて、前回大会に続くMVPを獲得した。キューバ戦こそ文句のつけようのないピッチングだったが、1次ラウンドの韓国戦、準決勝の米国戦は5イニングもたずに降板した。しかし、相手に勝ち越しされてマウンドを譲ることはなく、流れを日本に呼び込んだ。そこには、「内容がどうであれチームが勝てればいい」と勝利の2文字に徹底的にこだわるエースの矜持(きょうじ)があった。また、年下の選手が多い中で「行動で何かを示すことを意識した」と投手陣のリーダー格としても頼もしかった。
●2月15日に集合してからこれだけ年下の選手たちとやるのは久しぶりだった。この1カ月間過ごして、これだけ楽しくなるとは思ってもいなかった。試合が重ねるにつれて、チームもすごくまとまってきた。この時間を過ごさせてもらったことは野球人生にとってすごく大きな経験だった●
<岩田稔>
黒田博樹の辞退により1月に急きょ追加召集された岩田。合宿中から独特のカットボールの評価が高まり、そのままメンバー入り。2次ラウンド2戦目の韓国戦では四球を連発。シーズンとは違う中継ぎの調整に苦しみ、決勝ラウンドは登板がなかった。しかし、「野球人生初めての優勝が世界一だったので感謝したい」と優勝メンバーの一員になれたことを素直に喜んだ。
●追加召集でこのチームに合流したけど、ここまで自分が残っているとは思わなかった。決勝でベンチから声を出していたけど、すごいチームメートに恵まれていい経験ができた。野球を始めて、初めての優勝が世界一だったので感謝したい●