大久保はスタメンを奪えるのか?=ドイツデビューを前に集まる期待

木崎伸也

ドイツで日本人選手が増えている理由

アウエーでの得点など、大久保にはインパクトを残すプレーを期待したい 【写真は共同】

 それにしても、ここ最近、なぜこれほどブンデスリーガに日本人が増えているのか?
 07年夏に稲本潤一がフランクフルトに加入し、08年1月にはボルフスブルクに長谷部誠が、ボーフムに小野伸二がやって来た。そして09年1月、大久保がボルフスブルクに入団。現在、計4人の日本人がドイツ1部でプレーしている。

「これは大きな驚きではない」と言うのが、元浦和レッズ監督のギド・ブッフバルトだ。もともとJリーグには優れた選手がおり、ドイツがやっとそれに気がついただけだと主張する。
「もし、Jリーグのベスト5のクラブがブンデスリーガに来たら、中位争いに絡むことができるだろう。Jリーグのそれより下のクラブなら、ブンデスリーガの1部と2部の間くらい。いずれにせよ、日本はなかなかのレベルにある」

 では、なぜドイツのクラブは、急に日本に才能が眠っていることに気がついたのだろうか? その仕掛け人になったのが、高原直泰の代理人として知られるトーマス・クロートだ。実は今ドイツにいる日本人4人全員が、クロートの手によって移籍が実現したのである。
 クロートは03年に高原と契約して以来、日本への関心が高まった。日本の代理人とコネクションを作り、クロートがドイツのクラブに売り込み、日本サイドが選手の希望を聞くという協力体制が出来上がった。

 Jリーグとブンデスリーガでは、代理人の報酬の仕組みが違うことも幸いした。日本では“選手”が代理人に手数料を払うが、ドイツでは“クラブ”が代理人に手数料を払う。つまり、日本とドイツの代理人は、互いの利益を侵食せずに、いつもと同じ報酬を手にすることができる。
 クロートはドイツ代表経験のある元選手で、かつてのチームメートとのパイプをフル活用してクラブと接触し(マガトとはハンブルガーSVで同僚だった)、その結果、次々に日本人の移籍を実現させることができた。今後もクロートが窓口になり、ドイツでプレーする日本人選手は増え続けるだろう。

大久保には記憶に残るようなインパクトを期待

 話を本題に戻そう。
 監督からの信頼度と、前線ならどこでもプレーできるという器用さを考えると、大久保がコンスタントに試合に出られることはほぼ間違いない。ボルフスブルクはホームでは急に強くなり、3−0や4−1といった大量得点で勝つことが多いので、少なくとも大久保はホームで3ゴールは挙げるのではないか、と筆者は予想している。

 それだけで十分良くやったと言えるのだが、個人的に楽しみにしているのは、アウエーでのゴールだ。今季、ボルフスブルクはブンデスリーガにおいて、1度もアウエーで勝っていない。大久保がアウエーで決勝弾をたたき込むようなことがあれば、200万ユーロ(約2億6000万円)を払って獲得した価値があると言えるはずだ。

 これだけドイツに日本人選手が増えると、日本のサッカーファンも少々のことでは驚かなくなったと思う。少なくとも、筆者はその1人だ。数字とともに、記憶に残るようなインパクトあるブレイク――例えば高原がカーンからゴールを奪ったような――を期待したい。

<了>

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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載開始。

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