JBLオールスターからオールジャパンへ続く夢舞台

松原貴実

満員に膨れ上がった栃木・宇都宮市立体育館 【(C)JBA】

 ファン投票とチーム・メディア推薦で選ばれた20人の選手が東西二つのチームに分かれて戦う、JBLオールスターが12月23日に行われた。今年その舞台に選ばれたのは栃木・宇都宮市立体育館。今季JBLに昇格したリンク栃木の本拠地だ。

 川村卓也、伊藤俊亮ら有力選手の移籍に加え、日本人初のNBA選手、田臥勇太の加入で大きな注目を浴びたチームは、リーグ戦のチケットも軒並み完売になる人気ぶり。途中、ヘッドコーチが交代となったものの、新たに就任したトーマス・ウィスマンアソシエイトヘッドコーチの指導の下、チームは確実に結束力を増し、今年の日程を終えた時点で10勝12敗の第4位。十分にプレーオフを狙える位置に付けている。当然、地元ファンの応援にも力が入り、このオールスター戦の前売りも発売開始わずかで完売となった。

スタンドの観客が1つになったオールスター

MVPを獲得した川村卓也 【(C)JBA】

 ティップオフでは、WESTの竹内公輔(アイシン)とEASTの竹内譲次(日立)の兄弟対決が実現。観客を楽しませようという選手たちの気持ちをみんながしっかり受け止め、そのたびに会場の温度が一度ずつ上がっていくようだ。
 最初の得点は、竹内譲のダンク。五十嵐圭(日立)からゴール下の川村へ鮮やかなパスも決まる。対するWESTは、佐古賢一、網野友雄のアイシンコンビが華麗なアリウープを見せる。

 第2ピリオドに出場した田臥は、リーグ戦ではあまり見せないトリッキーなプレーを連発。リーグ戦ではその田臥を相手に執ようなディフェンスを見せる石崎巧(東芝)も、この日は笑顔でコートを走る。岡田優介(トヨタ自動車)、広瀬健太(パナソニック)の若手が連続3Pを決めた直後、パスを回された折茂武彦(レラカムイ)は観客の視線が一身に集まる中、きれいな3Pを決めてベテランシューターの面目躍如を果たした。
 そんな中、この日もっとも歓声を浴びたのは川村だ。田臥、五十嵐から次々に繰り出されるアシストパスを見事にゴールし、34得点の活躍。120−98でチームを勝利に導き、文句なしでMVPに選ばれた。とはいえ、さすがに最後はバテバテ。タイムアップ寸前に、完全ノーマークの3Pを落とすと、ベンチの朝山正悟(レラカムイ)、折茂から頭を小突かれ、さらにはケガで不出場だったチャールズ・オバノン(トヨタ自動車)からお尻に手荒い祝福を受けた。

 今大会のキーワードは『DREAM into ACTION 勇気 挑戦』――自分が選んだバスケットという道を突き進む勇気と、新たな挑戦を恐れない強い気持ちを持つ者だけが、オールスターという夢の舞台に立つことができる。この日、満員の観客はそんな「つわもの」たちのプレーに存分に酔った。
 しかし、選手たちが夢の余韻に浸っている時間はない。新年早々彼らを待ち受けるのは天皇杯・皇后杯全日本総合選手権大会、通称「オールジャパン」だ。

オールジャパンで再び激しくしのぎを削る

(前列左から)佐古、田臥、五十嵐が一同に会するオールスター。まさしく夢の競演だ 【(C)JBA】

 リーグ前半戦を17勝5敗で終え、トップを行くパナソニックはベテランと若手のプレーがうまくかみ合い、12年ぶりの栄冠を目指す。
 そのパナソニックを追うのは星の差一つのアイシンと3位の日立。オールスターに最多5人の選手を送り出したアイシンの勢いと、大黒柱の竹内譲を中心に、若手の台頭でチーム層に厚みが増した第3シードの日立はともに優勝を射程距離にとらえている。

 一方、前回準優勝のトヨタ自動車は、外国籍選手の出場を制限する「オン コート ワン」のルール変更に苦しみ、リーグを5位で折り返し。また6位の東芝はいくつかの接戦を落としたのが響いて4位争いから後退した。だが、両チームに共通した明るい材料は2年目選手の成長。スタメンに起用された正中岳城、ピュアシューター岡田(ともにトヨタ自動車)に対し、東芝の石崎、菊地祥平はすでにチームを背負って立つ存在だ。彼らの活躍いかんによって優勝のチャンスは十分にある。

 7位の三菱電機、8位のレラカムイは、やや出遅れた感があるものの、波に乗れば予想以上の爆発力を発揮するのは周知の事実。一発勝負のオールジャパンではもちろん侮れない存在だ。
 そして、新春の舞台で台風の目になる可能性が高いのはリンク栃木。一試合ごとにチームプレーの安定度が増し、たくましくなってきた。オールスターで観客をうならせた田臥、川村の二大ウェポンの連係プレーのさく裂に期待したい。

 オールスターからオールジャパンへ、しっかりシフトチェンジを済ませ、それぞれのチームに散った選手たち。再び激しくしのぎを削りあうコートの上に、もう笑顔はないはずだ。「負ければ終わり」の厳しい戦いの中にどんなドラマが待っているのか。
 オールスターの夢の舞台に酔った後は、新春のオールジャパンで、もう一度存分に酔っぱらいたい。

<了>
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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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