JBLオールスターからオールジャパンへ続く夢舞台
満員に膨れ上がった栃木・宇都宮市立体育館 【(C)JBA】
川村卓也、伊藤俊亮ら有力選手の移籍に加え、日本人初のNBA選手、田臥勇太の加入で大きな注目を浴びたチームは、リーグ戦のチケットも軒並み完売になる人気ぶり。途中、ヘッドコーチが交代となったものの、新たに就任したトーマス・ウィスマンアソシエイトヘッドコーチの指導の下、チームは確実に結束力を増し、今年の日程を終えた時点で10勝12敗の第4位。十分にプレーオフを狙える位置に付けている。当然、地元ファンの応援にも力が入り、このオールスター戦の前売りも発売開始わずかで完売となった。
スタンドの観客が1つになったオールスター
MVPを獲得した川村卓也 【(C)JBA】
最初の得点は、竹内譲のダンク。五十嵐圭(日立)からゴール下の川村へ鮮やかなパスも決まる。対するWESTは、佐古賢一、網野友雄のアイシンコンビが華麗なアリウープを見せる。
第2ピリオドに出場した田臥は、リーグ戦ではあまり見せないトリッキーなプレーを連発。リーグ戦ではその田臥を相手に執ようなディフェンスを見せる石崎巧(東芝)も、この日は笑顔でコートを走る。岡田優介(トヨタ自動車)、広瀬健太(パナソニック)の若手が連続3Pを決めた直後、パスを回された折茂武彦(レラカムイ)は観客の視線が一身に集まる中、きれいな3Pを決めてベテランシューターの面目躍如を果たした。
そんな中、この日もっとも歓声を浴びたのは川村だ。田臥、五十嵐から次々に繰り出されるアシストパスを見事にゴールし、34得点の活躍。120−98でチームを勝利に導き、文句なしでMVPに選ばれた。とはいえ、さすがに最後はバテバテ。タイムアップ寸前に、完全ノーマークの3Pを落とすと、ベンチの朝山正悟(レラカムイ)、折茂から頭を小突かれ、さらにはケガで不出場だったチャールズ・オバノン(トヨタ自動車)からお尻に手荒い祝福を受けた。
今大会のキーワードは『DREAM into ACTION 勇気 挑戦』――自分が選んだバスケットという道を突き進む勇気と、新たな挑戦を恐れない強い気持ちを持つ者だけが、オールスターという夢の舞台に立つことができる。この日、満員の観客はそんな「つわもの」たちのプレーに存分に酔った。
しかし、選手たちが夢の余韻に浸っている時間はない。新年早々彼らを待ち受けるのは天皇杯・皇后杯全日本総合選手権大会、通称「オールジャパン」だ。
オールジャパンで再び激しくしのぎを削る
(前列左から)佐古、田臥、五十嵐が一同に会するオールスター。まさしく夢の競演だ 【(C)JBA】
そのパナソニックを追うのは星の差一つのアイシンと3位の日立。オールスターに最多5人の選手を送り出したアイシンの勢いと、大黒柱の竹内譲を中心に、若手の台頭でチーム層に厚みが増した第3シードの日立はともに優勝を射程距離にとらえている。
一方、前回準優勝のトヨタ自動車は、外国籍選手の出場を制限する「オン コート ワン」のルール変更に苦しみ、リーグを5位で折り返し。また6位の東芝はいくつかの接戦を落としたのが響いて4位争いから後退した。だが、両チームに共通した明るい材料は2年目選手の成長。スタメンに起用された正中岳城、ピュアシューター岡田(ともにトヨタ自動車)に対し、東芝の石崎、菊地祥平はすでにチームを背負って立つ存在だ。彼らの活躍いかんによって優勝のチャンスは十分にある。
7位の三菱電機、8位のレラカムイは、やや出遅れた感があるものの、波に乗れば予想以上の爆発力を発揮するのは周知の事実。一発勝負のオールジャパンではもちろん侮れない存在だ。
そして、新春の舞台で台風の目になる可能性が高いのはリンク栃木。一試合ごとにチームプレーの安定度が増し、たくましくなってきた。オールスターで観客をうならせた田臥、川村の二大ウェポンの連係プレーのさく裂に期待したい。
オールスターからオールジャパンへ、しっかりシフトチェンジを済ませ、それぞれのチームに散った選手たち。再び激しくしのぎを削りあうコートの上に、もう笑顔はないはずだ。「負ければ終わり」の厳しい戦いの中にどんなドラマが待っているのか。
オールスターの夢の舞台に酔った後は、新春のオールジャパンで、もう一度存分に酔っぱらいたい。
<了>
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