石井が壮泰、及川、黒田を破りTOUITSU王者に

高崎計三

決勝で黒田を破りTOUITSU王者となった石井。右はゲストの吉澤ひとみさん 【t.SAKUMA】

 23日(火・祝)、神戸ワールド記念ホールで、キックボクシングなど立ち技系格闘技のチャンピオンクラスが集合した「TOUITSU」の旗揚げ大会が行われた。キックボクシング6団体、シュートボクシング、K−1などから代表・推薦選手が出場してのライト級(62kg)トーナメントは、新日本キックボクシング協会の石井宏樹(藤本)が3試合を勝ち抜いて優勝。「K−1推薦」として出場した梶原龍児(チームドラゴン)は1回戦でJ−NETWORKの黒田アキヒロ(フォルティス渋谷)に敗れて姿を消す波乱に見舞われた。

1回戦から激戦、4試合中2試合が延長

試合優勢に進めていた赤十字だったが、後半に吉本の左ミドルが当たり出すと失速。吉本が僅差で粘り勝つ 【t.SAKUMA】

 4試合中2試合が延長となるなど、トーナメントは1回戦から激戦続きだった。初っ端の「吉本光志vs.赤十字竜」は序盤、赤十字が優勢に進めたものの、後半に持ち直した吉本が延長に持ち込んで僅(きん)差の勝利。「黒田アキヒロvs.梶原龍児」はリベンジを期して抽選会で梶原戦を引き当てた黒田がローのコンビネーションからのローが冴(さ)え、下馬評を覆してのリベンジ成功。関西同士の対決となった「及川知浩vs.森本達也」は本戦を及川が制したかに見えたものの、判定はドローに。延長も激戦となったが手数で上回った及川が今度こそ勝負を決めた。そして「壮泰vs.石井宏樹」の一戦は、石井が壮泰の得意とするミドルキックをつかんでローを入れるなどで上回ったが、壮泰も打ち合いではパンチを入れる場面もあり、ジャッジ1名はイーブンをつけたほどだった。

梶原を破った黒田が準決勝でも番狂わせ

黒田(左)がコンビネーションからのローを軸に戦い、パンチで攻める梶原を退け勝利 【t.SAKUMA】

 続く準決勝では、黒田がまた番狂わせを起こした。試合は黒田のパンチからローにつなぐコンビネーションに対して吉本がひざを中心とした攻め、という図式となったが、本戦はお互いに譲らずドロー。延長に入るとこの日8ラウンド目となる吉本にはさすがに疲れも目立ち、ローやひざで攻め続けた黒田が振り切った。吉本は眼窩(か)底骨折の疑いがあるとのことで、試合後には病院に急行した。

及川、石井に対し一歩も引かぬ攻め

準決勝、子供達の声援を背に戦った及川だったが、2Rに石井からダウンを奪われ敗退 【t.SAKUMA】

 自らが指導する子供たちの声援を背に準決勝第2試合に登場した及川は、優勝候補筆頭の石井に対しても一歩も引かぬ攻めを見せた。8選手中最も小柄な及川は1回戦の森本達也戦で13センチの身長差があったのに続き、ここでも12センチ差。それでも飛び込んでの右フックなど体格差を埋める攻撃で健闘したが、2Rに右ストレートでダウンを奪われ、判定負け。こちらのブロックは、石井がおおかたの予想通りに決勝へと駒を進めた。

予想外の顔合わせ、決勝は石井vs.黒田

石井は、決勝で解禁となったヒジ攻撃に加え、その他にも多彩な攻撃で黒田を圧倒。TOUITSUトーナメントの初代覇者となった 【t.SAKUMA】

 決勝は石井vs.黒田という予想外の顔合わせとなったが、この試合のみひじありルールとあって、「自分の距離で闘えた」という石井の独壇場に。1R後半に右ひじでダウンを奪い、その後のラウンドでもひじを連発。3Rには「お互い疲れていたので、明確な差を見せようと」石井がさらに多彩な攻撃を見せて完勝。黒田も最後まで粘り強くパンチからローのコンビネーションで活路を開こうとし続けたが、判定で敗れ涙を呑(の)んだ。

 勝って「TOUITSU初代ライト級王者」のベルトを巻いた石井は「トーナメントは疲れました。でも久しぶりのベルトはやっぱりいいですね。黒田選手は決勝に勝ち上がってきたという時点で気持ちの強さを感じました」とコメント。これで完全復活を果たし、来年はまた世界と渡り合いたいと展望を口にした。「新日本代表として違いを見せつけたかった」と語っていた言葉通り、終わってみればやはり貫録の優勝。新日本・伊原信一代表も会場に駆けつけ、石井を祝福していた。
「TOUITSU」は「関西発の格闘技イベント」を掲げて神戸で産声を上げたが、実行委員長の佐々木敬二氏は「KOばかりが注目される中で、技術的な素晴らしさを見せられたと思う。大会全体としては、反省点ばかりで60点。今後は他の階級でもトーナメントを実施して、7階級の王者が決まったころには東京にも進出したい」と大会を総括。初代王者の石井が今後、防衛戦という形で試合をするかは未定だが、当面、次は4〜5月あたりにフェザー級トーナメントを行いたいという意向を語った。今回、確かに動員では苦戦したものの、豪華な入場ゲートなどの演出は関西独自の大会ではなかなか見られなかったもの。
 28日にはこの日の模様がよみうりテレビで放送されることも決定しており、関西名物として「TOUITSU」が根付いていくか、注目される。
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