錦織圭、2009年躍進の鍵はスタートダッシュにあり!

内田暁

2月に消えるポイントを、いかに穴埋めできるか

全豪オープンでの活躍が、新シーズン躍進の鍵を握る 【Photo:Getty Images/AFLO】

 では、63位という成績を引っさげる錦織には来年、どのような大会への出場と成績が期待できるのか?
 そのことを考察する上で、もう一つ知っておくべきランキングのルールがある。テニスでは、出場した大会ごとに成績に応じたポイントが獲得できるが、そのポイントは一年経つと自動的に消失する、ということだ。つまり、前年度良い成績を上げた大会で翌年成績が残せないと、往々にしてランキングは下がってしまう。

 先述したとおり、錦織は来年1月開催の全豪オープンには出場するだろう。その全豪オープンの次に控える大きな大会は、3月に米国で開催されるマスターズ2大会と、4月に欧州で開催される、これまたマスターズ2大会ということになる。このうち、米国開催の2大会は選手枠が96なので、現状維持で十分に出場圏内。問題は、選手枠が56の欧州開催2大会だ。もし錦織がこれら2大会にも出場できれば、来年の前半戦で大きくランキングを上げられる可能性もある。

全豪オープンの成績が大きな意味を持つ

 そしてそれを狙う上で何よりも重要なのが、1〜3月の成績、特に2月をいかに乗り切るか、ということだ。というのも、2月は今年錦織がツアー初優勝を果たし大きくポイントを得た時期であり、故にそのポイントが、来年2月中旬には消えてしまうからだ。錦織が現在のランキングを維持し、さらに上を狙えるか否かは、この消えてしまうポイントをいかに穴埋めできるかにかかってくる。
 そうなると、来年早々の全豪オープンの成績が、シーズン前半戦を占う上でかなり大きな位置を占めるはずだ。できることなら、この大会で4回戦(ベスト16)まで進んでおきたいところ。そうして現在のランキングを保ちながら3月のマスターズ2大会に出場し、それぞれここで3回戦か4回戦まで勝ち進めば、4月のマスターズ2大会への出場圏内……すなわち50位以内が見えてくるだろう。

 一般的にテニス選手のランキング上昇カーブは、時間の経過と正比例ではない。一つの大会や時期を契機に大きく上昇し、その後横ばい状態が続くが、また次の機会で大幅に上がる。逆に言えば、一度その分水嶺(れい)を逃してしまうと、次のチャンスまで現状維持のまま待たねばならず、場合によっては、大きくランキングを下げてしまうこともある。錦織にとって来年のターニングポイントとなり得る要素は、まずは4月、選手枠56の欧州開催のマスターズ2大会に出られるか否か。そしてその成否を分ける大きな試練は、1〜2月に訪れる。
「テニスのシーズンは長いから」なんて悠長なことは、意外と言っていられない。来年も錦織圭の大躍進が見たければ、まずは序盤のスタートダッシュを、刮(かつ)目して見守られよ。

<了>

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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