世界女王vs.新体操王国ロシアの熱き戦い=第14回イオンカップ世界クラブ選手権

椎名桂子

世界選手権女王のベッソノワだが、イオンカップでの勝利には縁遠い 【榊原嘉徳】

 1年後に迫った北京五輪のチャンピオンの行方を占うことにもなりそうな、2007年のイオンカップ世界クラブ選手権が10月5〜6日の3日間、東京体育館で開催された。
 もっとも注目されたのは、9月の世界選手権(ギリシャ)で初のチャンピオンとなったアンナ・ベッソノワ(ウクライナ)であった。ベッソノワはその表現力豊かな演技と、美貌(びぼう)で日本でもとても人気のある選手である。しかし、人気はナンバーワン、実力も十分ながらも勝利には遠い選手。それがイオンカップでのベッソノワだった。
 2週間前の世界選手権の勢いで今年こそは表彰台の真ん中に立つベッソノワが見られるのでは、と期待した人も多かったに違いない。
 しかし、世界選手権の疲れも残っていたのか予選でのベッソノワは、ロープ、リボンで大きなミスを犯し3位通過。オルガ・カプラノワ(ロシア)、ベラ・セシナ(ロシア)に遅れをとることになった。最終日は1日で4種目を実施する過酷な日程ではあるが、予選までの得点は反映されない。決勝種目の出来次第では、ベッソノワ優勝の可能性もまだ十分にあった。

ロープでのミス ベッソノワ、優勝戦線から脱落

ベッソノワのリボン 【榊原嘉徳】

 ベッソノワの1種目目は、世界選手権で優勝を決めたフープ。白いレオタードで優雅に美しく舞い、ミスもなく決めて18.250をマーク。優勝争いから脱落しないためには18点台をいかにそろえられるかにかかっていたため、いいスタートを切ったと言えるだろう。しかし、ロシアの2選手が登場する前に迎えた2種目目ロープで、予選と同じ個所で落下し、17.525。大きなビハインドを負うことになってしまう。「ウエストサイドストーリー」を使用した今年のロープの演技は、ベッソノワのキュートさが前面に出るとても魅力的なプログラムだが、イオンカップにおいては鬼門となってしまった。

 ロシア勢では、まずセシナがフープで18.400、カプラノワがリボンで18.050をたたき出す。しかし、セシナは続くロープでまさかの落下、場外を犯し17.058、カプラノワはクラブでも投げ受けの多い挑戦的な演技を見事に演じて18.375。ミスの出やすいリボン、クラブをカプラノワが手堅くまとめた時点で、ベッソノワの優勝には黄信号がともった。

 ベッソノワは3種目目のクラブでは、優勝への気迫を感じさせる強さのある演技で18.150をマーク、最終種目のリボンはドラマチックな「ボレロ」を情感たっぷりに踊り、最後まであきらめない、思いのこもった演技で観客を沸かせた。予選ではリボンの操作で大きなミスがあり、15点台に終わっていたが、決勝ではリボンによどみはなかった。表情豊かに緩急をつけて弧を描くベッソノワのリボンは、名曲「ボレロ」を見事に奏でた。しかし、新体操は芸術スポーツである。スポーツとして評価したときに、このリボンの演技ではカプラノワ、セシナに及ばず17.800。ロシア勢が残る2種目でよほど大きなミスを連発しない限り、ベッソノワの優勝はないという窮地に陥った。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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