世界女王vs.新体操王国ロシアの熱き戦い=第14回イオンカップ世界クラブ選手権
世界選手権女王のベッソノワだが、イオンカップでの勝利には縁遠い 【榊原嘉徳】
もっとも注目されたのは、9月の世界選手権(ギリシャ)で初のチャンピオンとなったアンナ・ベッソノワ(ウクライナ)であった。ベッソノワはその表現力豊かな演技と、美貌(びぼう)で日本でもとても人気のある選手である。しかし、人気はナンバーワン、実力も十分ながらも勝利には遠い選手。それがイオンカップでのベッソノワだった。
2週間前の世界選手権の勢いで今年こそは表彰台の真ん中に立つベッソノワが見られるのでは、と期待した人も多かったに違いない。
しかし、世界選手権の疲れも残っていたのか予選でのベッソノワは、ロープ、リボンで大きなミスを犯し3位通過。オルガ・カプラノワ(ロシア)、ベラ・セシナ(ロシア)に遅れをとることになった。最終日は1日で4種目を実施する過酷な日程ではあるが、予選までの得点は反映されない。決勝種目の出来次第では、ベッソノワ優勝の可能性もまだ十分にあった。
ロープでのミス ベッソノワ、優勝戦線から脱落
ベッソノワのリボン 【榊原嘉徳】
ロシア勢では、まずセシナがフープで18.400、カプラノワがリボンで18.050をたたき出す。しかし、セシナは続くロープでまさかの落下、場外を犯し17.058、カプラノワはクラブでも投げ受けの多い挑戦的な演技を見事に演じて18.375。ミスの出やすいリボン、クラブをカプラノワが手堅くまとめた時点で、ベッソノワの優勝には黄信号がともった。
ベッソノワは3種目目のクラブでは、優勝への気迫を感じさせる強さのある演技で18.150をマーク、最終種目のリボンはドラマチックな「ボレロ」を情感たっぷりに踊り、最後まであきらめない、思いのこもった演技で観客を沸かせた。予選ではリボンの操作で大きなミスがあり、15点台に終わっていたが、決勝ではリボンによどみはなかった。表情豊かに緩急をつけて弧を描くベッソノワのリボンは、名曲「ボレロ」を見事に奏でた。しかし、新体操は芸術スポーツである。スポーツとして評価したときに、このリボンの演技ではカプラノワ、セシナに及ばず17.800。ロシア勢が残る2種目でよほど大きなミスを連発しない限り、ベッソノワの優勝はないという窮地に陥った。