身長「159cm」のセッター竹下佳江=バレーボールW杯 直前コラム(1)

田中夕子
 来年の北京五輪出場権をかけた、バレーボールのワールドカップが11月2日、東京・東京体育館などで開幕する。柳本晶一監督率いる全日本女子は2日のドミニカ戦で、植田辰哉監督率いる全日本男子は18日のチュニジア戦で初戦を迎え、それぞれ全11チームと戦い、上位3カ国に与えられる五輪切符を狙う。
 スポーツナビでは、大会開幕まで全10回にわたり、男女日本代表(候補)を紹介していく。第1回は女子主将の竹下佳江(JT)。主将とセッターという、重要な役割を担う彼女の土台をつくるものとは――。

主将としてセッターとして、チームを引っ張る竹下 【坂本清】

 規格外。世界標準の高さを統計で示すならば、竹下佳江(JT)の身長「159cm」はそれまでの常識から大きく外れていた。しかし、対戦国の監督たちは口をそろえて言う。
「竹下のトスワークは世界一だ」

 2005年から全日本のキャプテンに就任し、昨秋の世界選手権では最優秀セッターに加え、最優秀選手賞にも輝いた。
 それでも、ただ1つ欠けるとされる「高さ」を補うために、誰よりもブロック練習に時間を費やす。全日本女子の柳本晶一監督も、そんな竹下の姿勢を「もうやめろと言っても、いつまでもブロック練習をしている。あのガッツと努力は、チームでも比べるものがいないほど秀でている」と評する。

 試合に敗れた後は、厳しい言葉でチームを評し、自らのトスワークに対しても課題ばかりを口にする。叱咤(しった)するのは他ばかりでなく、最も厳しく接するのは自分自身。全日本で長い時間をともに過ごす、杉山祥子(NEC)がかつて「竹下の存在」についてこう言ったことがある。
「チームの全員がテンさん(竹下)の動きを日ごろの生活から見ている。この人がこうしているなら、私たちも続かなきゃと思わせてくれる人」

 今秋開幕のワールドカップでは、3位以内に入れば北京五輪出場が決まる。出場切符を逃したシドニー五輪、本大会でのベスト8入りにも悔し涙を流したアテネ五輪から続く三度目の挑戦。

 もう悔しさはいらない。

 冷静に正確に、そして着実に。キャプテン竹下が、北京への切符を手繰り寄せる。

<了>

※第2回は男子主将の荻野正二。10月23日(火)掲載予定です。
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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