逃走ヴィクトリーV! 田中勝15年ぶりのGI勝利=皐月賞=無敗ホウオー、追い込み届かず3着敗戦

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7番人気ヴィクトリーで皐月賞を制した田中勝春はこれが15年ぶりのJRA・GI制覇となった 【スポーツナビ】

 ヴィクトリー逃走V、カツハル15年ぶりGI制覇だ! JRAの3歳牡馬三冠クラシック第1弾・第67回GI皐月賞(2000メートル芝)が15日、中山競馬場で開催され、果敢に逃げた7番人気のヴィクトリー(牡3=音無厩舎)が人気馬を抑えきってハナ差の逃走V。騎乗した田中勝春、管理する音無秀孝調教師はともに皐月賞初勝利。また、田中勝は1992年の安田記念(ヤマニンゼファー)以来、15年ぶりのGI優勝となった。
 2番手から迫った15番人気サンツェッペリン(牡3=斎藤誠厩舎)が2着。安藤勝己騎乗の4戦無敗フサイチホウオー(牡3=松田国)は猛然と追い込んだものの、さらにハナ差及ばず3着に敗れ、3連単は皐月賞史上最高となる162万3250円の超高配当となった。なお、1番人気に支持された武豊騎乗のアドマイヤオーラは4着に敗れた。

15年ぶりのGI美酒にファンから大声援

ファンの温かい拍手に迎えられ、田中勝は馬上で何度もガッツポーズ 【スポーツナビ】

 暖かな日差しと拍手に包まれ、ヴィクトリーの馬上では大きな笑顔の花が咲いていた。
 「ゴールした瞬間は負けたかな、またダメかーって(笑)。でも、横山(典)さんが『勝ってるぞ』って言ってくれて、それで、あー、勝ったーって(笑)」
 電光掲示板の一番上に映し出された「17」を確かめた田中勝は、満員のスタンドへ向かって1度、2度と大きくガッツポーズ。ファンも大歓声と拍手で迎えた。1992年の安田記念をヤマニンゼファーで制して以来、JRA・GIに限っては139連敗中。実に15年近くもGI勝利から田中勝が遠ざかっていたことを、ファンももちろん知っていた。だからこそ、いつものGI後とは違う柔らかな拍手がいつまでも鳴り止まなかった。
 「格別ですね。(ファンの声援も)本当にありがたいです」

 レースは1コーナーから2コーナーにかけてペースが遅くなったところへ、「周りが勝手にペースを落としただけで、自分の馬は割と楽な感じだった」と、田中勝はマイペースでハナへ。
 当初は、前に他馬を行かせて好位をキープしていくプランを練っていたが、「気性の難しい馬だし、馬の機嫌を損ねないように楽に走らせてあげよう」と作戦変更。鞍上のここでの判断が、勝利への道を大きく開いた。

ヴィクトリー根性の差し返しV!

ゴール前はヴィクトリー(左)、サンツェッペリン(中)、フサイチホウオー(右)が馬体を並べてゴール 【スポーツナビ】

 前半1000メートルの通過は59秒4。遅いとは言えない平均より速めのペースの中を「ハナに立ってからいい感じで進めていけた。息を入れながら走っていました」と田中勝。フサイチホウオー、アドマイヤオーラら人気勢が仕掛け気味に上がってきた4コーナーから直線入り口に入っても、「前半で楽をした分、ラストも頑張れると思った」と押し切れる手応えをつかんだまま懸命のプッシュをかける。
 だが、そんなジョッキーの夢を砕くように、2番手からヒタヒタと迫っていた人気薄のサンツェッペリンが一度は前に出た。

 「あぁ、今年もやっぱりダメかー……」
 一度は諦めかけたGI139連敗ジョッキー。しかし、ここで闘志を再び点火させたのは、先週の木曜に正式に新コンビが決まったばかりの新しい相棒だった。いったんは先頭を譲ったヴィクトリーだったが、ここから驚異の粘り腰と勝負根性を発揮。
 「馬が食らいついて頑張ってくれました。もしかしたら、って思いましたね」

ゴールした瞬間は「負けたと思った」と田中勝(左) 【スポーツナビ】

 引き下がるどころか、中山名物の急坂を上がりきるとグイグイと前へ突き進み、ハナ差だけ差し返したところがゴール。それまでが見た目に体勢不利だったために、この瞬間は乗っていた田中勝、そしてスタンドで声をからした音無調教師も「負けた」と観念したが、着順掲示板の一番上に上がった番号は、ヴィクトリーの「17」だった。

 また、この時、安藤勝騎乗の無敗馬フサイチホウオーが外から猛然と迫っており、1着馬から3着馬までがハナ・ハナ差という皐月賞史上初の大接戦。田中勝にとっては、騎手生活18年のキャリアの中で最も大きなハナ差だっただろう。
 「もう勝つとか負けるとか忘れていたんで(笑)。やっぱり、GIっていいもんだなあ」
 最終レース後の勝利騎手インタビューで、久々のGI美酒を噛みしめるように田中勝は白い歯を見せた。

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