鈴木みのる×北岡悟 パンクラス師弟対談=格闘技通信

格闘技通信

パンクラスの先輩であり師匠の鈴木みのると対談に臨んだ北岡(左) 【格闘技通信】

 パンクラシストであることに人一倍の誇りをもち、戦極ライト級GP優勝を果たした北岡悟が、尊敬すべき師匠である“世界一性格の悪い男”鈴木みのるとの対談に臨んだ。プロレス、総合の世界で活躍するパンクラス随一のパフォーマー師弟が語り合う異色対談。

GP優勝は快挙? 達成したという感じです

戦極ライト級GPで優勝した北岡は試合後のマイクで師匠・鈴木みのるのに感謝 【t.SAKUMA】

鈴木 今日は何なの?

――北岡選手が師匠のひとりとしてあげる鈴木選手に知られざる北岡悟を語ってもらおうかと。

鈴木 師匠? またまた(微笑)。

北岡 (モジモジしながら)リング上でもそう宣言させて頂いたし、携帯メールでも言ったじゃないですか。

鈴木 そうだっけ?

北岡 あれは鈴木さんとの対談に向けての繋ぎのメールだったんです。

鈴木 でも、俺、北岡が優勝した戦極ライト級GPは見てないよ。

北岡 (もうひとりの師匠である)中井(祐樹)先生も見ていなかったそうです(苦笑)。

鈴木 11月1日、俺は(プロレスの試合に出場するため)新潟にいたの。北岡の試合前にはいつもくだらないメールを送るようにしているけど、この日ばかりはプレッシャーをかけるのもあれかなと思って放っておいた。で、川村(亮)には「結果だけは速報で送ってくれ」と頼んでおいたの。移動バスの中で「準決勝は秒殺です。これから決勝です」というメールを受け取ったよ。でもそれから何時間経っても、次のメールが来ない。「あれ? もしかして負けたのかな?」と勘繰ってしまったよ(微笑)。

北岡 いろいろと手間取っていたんじゃないですかね。

鈴木 そうしたら、ようやく「優勝しました。すごいです」というメールが届いた。川村は基本的に日本語がうまくないんだけど、そのメールを見た時には素直に「良かったな」と思ったよ。

――まるでわが子の快挙のように喜んだ?

鈴木 こんな子はいてほしくない(笑)。弟ともちょっと違うな。やっぱり北岡は仲間だね。でも北岡の優勝って快挙なの?

北岡 快挙とはちょっと違う気がします。達成したという感じですね。

鈴木 そうだよね。前々から優勝するだけの力を持っていたわけだし。

道場がひとつになったことで一番変わったのは北岡だろうね

パンクラスの仲間が胴上げで祝福 【t.SAKUMA】

――鈴木選手が北岡悟という名前を頭の中にインプットしたのはいつ頃なんですか?

鈴木 北岡がデビューしてすぐに青森大会があったんですよ(00年12月)。その時レガースとニーパットをつけるつけないで、北岡ともうひとりの若手がものすごくクレームをつけていた。

北岡 覚えています。

鈴木 サイズが合うとか合わないとかという話だったよな?

北岡 薄さが問題だったんです。当時はレガースの厚さに規定があって、その前の大会ではOKをもらっていたレガースとニーパットが、青森ではいきなりダメだといわれたのでクレームをつけたわけです。

鈴木 結局、あの時はつけないで出たんだよな。その頃、俺は影のルールディレクターみたいな立場だったんだけど、「面倒くせぇ奴だな」と思ったよ(笑)。

北岡 でも、その件はほとんど引きずらなかったです。だって、その日の試合がプロ初白星だったし、横浜道場所属の選手を倒したということで、胸がスカッとしていましたから。

鈴木 当時、パンクラス所属の選手は東京と横浜で分かれていたからね。

北岡 別に鈴木さんに対してというのではなく、僕はよその人に対しては対抗意識がある人間なんです。

鈴木 北岡のイメージが変わったのは東京道場と横浜道場がひとつになってからだな。

北岡 青森の一件から1年後くらいの話ですね。01年の途中から合同練習をするようになって、02年から(完全に統合されて)パンクラスismになって。

鈴木 東京と横浜に分けた道場制度は問題が山積みだったからね。分けてスタートしたまでは良かったけど、基本的に東京を仕切っていた人は仕切らないというか、ほったらかしだったので(微笑)。

北岡 (含み笑い)

鈴木 そこで折りを見て一緒に練習する機会を作って、将来的には道場を統一しようということになったんだよ。で、いざひとつになったら、北岡がいろんな話を俺にしてきた。内容はよく覚えていないけど、文句が多かった気がする。後輩だからといって遠慮するのではなく、自分の思ったことは全て言ってくる奴だった。でも、俺はちゃんと向き合ったつもりだよ。

北岡 その通りです。鈴木さんはちゃんと向き合ってくれました。

鈴木 お前は「黙って従っていればいいんだ」というタイプではなく、ちゃんと上にしてほしいことと、自分が言いたいことをうまくすり合わせるようなことをしてきたと思う。それで俺の中でも北岡という人間の見方が変わってきたんだよ。道場がひとつになったことで、一番変わったのは北岡だろうね。

北岡 (頭をかきながら、照れ笑い)

鈴木 いや、お前はホントに変わったよ。正直、それまで俺は北岡には自分さえよければあとは関係ないみたいなイメージを持っていたんだけどね。

北岡 フフフ。

鈴木 笑っているということは、きっとそうだったんだよ。それまでは単なる若手で出始めだから「どうしても自分だけは上に行きたい」という気持ちが強かったと思うけど、道場で発生した小さな出来事を一緒に話をして解決するようになってからは練習内容もすごく変わってきた。

北岡 どんなことを喋っていましたっけ?

鈴木 思い出した! お前はそれまでにあった先輩の悪いところとかを治そうとしていたの。こっち(先輩)側にいると面倒くさい話。だけど、そうすることによって、道場が活性化される。新しい世代に入れ代わることができる。そういう作業ができたんじゃないかな。

北岡 ハイ。

鈴木 ここでハイと言っておいた方が北岡に対する好感度は上がるからね(笑)。

北岡 鈴木さんはちゃんと目を見て怒ってくれる先輩でした。面と向かって言いづらいことはみんなあると思う。それって煩わしいことだし、みんな(現役)選手だから自分のことで精一杯という部分もある。そうした中、鈴木さんはちゃんと僕のような立場の人間の意見も聞いてくれた。ものすごく感謝しています。僕が一番道場の統合化に反対していましたからね。僕だけがハッキリNOと言っていました。

鈴木 そういえば、そうだったな。

北岡 統合されることで、今まで東京でやってきたことを全て否定されるような気持ちになったんです。確かにその時点で東京道場はまとまっていなかったと思う。でも、そういう状況の中でも自分は精一杯やっていた。だからみんなで円陣を組んでこれからひとつになって頑張っていくからという感じになって、みんなが一斉にハイと叫んでいる時、僕だけひとり北を向いていたんです(笑)。

鈴木 北向いているって(笑)。

北岡 最終的にはパンクラスの選手としてやっていくにはこれしかないということで受け止めましたけど。そのあとの鈴木さんの説明も納得いくものでした。

(見事に戦極ライト級トーナメントを制した北岡悟。そのリング上のマイクで師匠の一人として鈴木みのるの名前を挙げた。そこで、さっそくふたりにコンタクトをとり、対談が実現。パンクラスの昔と今について赤裸々に秘話を語ってもらった! 続きは『格闘技通信』12月号で!

(文:布施鋼治)

『格闘技通信』2009年1月号

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