昨季、準優勝のレイカーズ、優勝候補に挙げられる理由=NBAバスケ

宮地陽子

昨季初のリーグMVPを受賞したコービー・ブライアント。チームの中心となって、今シーズン頂点を狙う 【Photo:NBAE/Getty Images】

 昨シーズンのロサンゼルス・レイカーズは、まさにシンデレラチームだった。シーズン開幕の時には誰も優勝候補にすら挙げていなかったのにもかかわらず、シーズン半ばのトレードでメンフィス・グリズリーズのパウ・ガソルを獲得したことで勢いをつけ、シーズン終盤からプレーオフにかけて面白いくらいに勝ち星を重ねた。最後に、舞踏会ならぬNBAファイナルまで出たところで魔法が解けてしまい、優勝は取り逃してしまったところまで、シンデレラそのものだった。
「私たちはシンデレラチームだった」と、レイカーズのヘッドコーチ(HC)、フィル・ジャクソンも言う。「でも、私たちはガラスの靴を履けなかったんだ。まだ、それだけの準備ができていなかった」

 実際、昨季のレイカーズの快進撃は出来過ぎだった。予定より早くNBAファイナルの舞台を経験できたのだから、負けても仕方なかったという考え方もあるかもしれない。しかし、だからといってレイカーズのコーチや選手にとって、ファイナル敗退の悔しさが軽くなるわけではなかった。たとえ口にしなくても、夏の間中、負けたときの痛みを忘れることはなかった。
「(ファイナルの思い出は)傷口だ。かさぶたになり、そこが痛みの元だということも分かっている」とジャクソンHCは言う。

若手の復帰で、“ツインタワー”の誕生

 今シーズンのレイカーズは、すでにシンデレラではない。NBA各チームGMのアンケートでも、専門家たちの予想でも、昨季のチャンピオン、ボストン・セルティックスを差し置いて優勝候補の筆頭に挙げられている。ファイナルでセルティックス相手に惨敗し、「タフさに欠けるソフトなチーム」とレッテルを貼られ、しかもオフシーズンにほとんど補強らしい補強はしなかったレイカーズなのに、なぜここまで評価が高いのだろうか。

 その理由のひとつは、21歳になったばかりのセンター、アンドリュー・バイナムの復帰にある。17歳でNBA入り、プロ4シーズン目のバイナムは、成長と可能性を見せ始めていた昨シーズン途中にひざを故障、残りシーズン戦列を離れることとなった。NBAファイナルでレイカーズがセルティックスにゴール下を支配され、ディフェンスが崩壊するのをただ見守るしかなかったのは、フラストレーションがたまる経験だったという。
「チームの一員として、自分が戻ったときに何ができるのか、試合のビデオをたくさん見て研究したりしていた」とバイナムは振り返る。「自分があそこにいれば、シュートを打ちにくくすることができたかもしれない。今シーズンは、そういった面でチームの戦力となりたい」

 夏の間、リハビリに励んだバイナムは、今はまったく痛みも故障の影響もないという。昨季後半のチームに欠けていたインサイドでのディフェンス、パワーを持ち合わせた彼の復活は、レイカーズにとって、実質的な大補強であることは間違いない。
 バイナムが戻ることで、サイズの割に器用で、パワーよりスキルのガソルが本来のポジションであるパワーフォワードに移ることができる。バイナムとガソルの7フィート(213cm)ツインタワーの誕生である。
「まだ完成にはほど遠いけれど、可能性を考えるだけでワクワクしてくる」と、チームのエース、コービー・ブライアントも期待する。

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著者プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部卒。出版社勤務後にアメリカに居を移し、バスケットボール・ライターとしての活動を始める。NBAや国際大会(2002年・2006年の世界選手権、1996年のオリンピックなど)を取材するほか、アメリカで活動する日本人選手の取材も続けている。『Number』『HOOP』『月刊バスケットボール』に連載を持ち、雑誌を中心に執筆活動中。著書に『The Man 〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。現在、ロサンゼルス近郊在住。

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