“勝たせられるキャッチャー”東洋大・大野奨太=10.30ドラフト候補に迫る

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アマ球界屈指の強肩とクレバーなリード

「座右の銘は『感謝と謙虚』。野球選手としてもそうですけど、人として忘れちゃいけないと思うんです」
 そう話す好青年は、東洋大の主将を務める大野奨太だ。強肩と勝負強い打撃、それに本人も憧れているという阪神・矢野輝弘のような投手の長所を引き出すリードが光る。大学ナンバーワン捕手の呼び声も高く、今ドラフトでも上位指名が有力だ。

 大野の送球は糸を引くように地を這い、正確にベース上に届く。遠投は105メートルを記録し、二塁への到達速度は1.8〜1.9秒。これはプロのレギュラークラスと比べてもそん色ない。
 その強肩に加え、クレバーなリードも評価が高い。それを象徴するようなシーンが今秋のリーグ戦で見られた。16日の東都リーグ・立正大1回戦、1点リードで迎えた8回。東洋大は1死一、二塁のピンチを迎える。ここで高橋昭雄監督は速球派の上野大樹をリリーフに送る。打席には4回に二塁打を放っている赤堀大智。変化球にタイミングが合っていると判断した大野は、直球中心の配球で赤堀をサードフライに打ち取る。
 続く早見龍成に対しては、一転して変化球中心の攻めで三振に切って取り、このピンチを脱した。このときのリードを大野は、「前の打者と(早見が)コンタクトを取っていたようだったので、おそらく『真っすぐが多い』と話していたんだろうと思った。だから、裏をかいて変化球で攻めました」と振り返った。1点を争う緊迫した場面で見せたこの冷静さと視野の広さが、大野が優れた“野球頭”を持っていることを証明している。これこそが一朝一夕では身に付かない、大野の持っている資質だ。

「いつかダルビッシュに追いつきたい」

「大野はチームを勝たせられるキャッチャー」
 高橋監督は、大野をそう評価する。投手の状態を的確に監督に伝え、チームにミスが出たときは浮き足立たないように引き締める。その姿は、まるでグラウンドにもう1人監督がいるかのようだ。
「昨年は大場(翔太・現福岡ソフトバンク)を支え、ことしは下級生投手を育てた。大野が正捕手になってから(東都リーグで)優勝して、日本一にもなった。そういうことだよ」
 高橋監督が語る通り、大野がグラウンドで見せる目配り、気配りが現在の強い東洋大を支えている。育成が難しいとされる捕手だけに、チームを勝利に導く“すべ”をよく知っている大野の評価が高くなるのもうなずける。

 プロで受けて見たい投手は? という問いに大野は「ダルビッシュ(有・北海道日本ハム)」と即答した。
「自分は甲子園にも出ていないので、(ダルビッシュの)すごさを知らない。すごさを感じたいですね」
 自分と同じ年の右腕は、今や誰もが認める球界ナンバーワン投手となった。
「勝負してみたいというよりは……。いや、それよりもまず受けてみたい。自分はまだまだ(ダルビッシュとは)レベルが違うけど、いつか追いつきたい」
 ダルビッシュに追いつくということは、球界一の捕手になるということだ。自慢の強肩と卓越した“野球頭”を武器に、大野は大きな目標に向っていく。

<了>

<text by 円谷憲人>

大野奨太/Shota Ohno

1987年1月13日生まれ。岐阜県出身。岐阜総合学園高−東洋大。177センチ、80キロ。右投げ右打ち。高校時代は甲子園出場はならなかったものの、素質豊かな捕手としてその名をとどろかせる。東洋大進学後は3年春のシーズンから正捕手に定着。エース・大場翔太(福岡ソフトバンク)を支え、東都リーグの春秋連覇、明治神宮大会制覇に貢献した。4年になったことしからは、主将としてチームをけん引。東都リーグの3季連続優勝と全日本選手権制覇を達成。自身も春のリーグ戦でMVPを獲得した
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