日本一を目指すカギは若鷹にあり!?=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

高卒ルーキー岩嵜が大舞台で先発へ

 若鷹たちが日本一を目指す。福岡ソフトバンクの2軍が4日に長崎・ビッグNスタジアムで行われる「ファーム日本選手権」に出場する。福岡ソフトバンクは24年ぶりにウエスタン・リーグを制覇した。相手はイースタン・リーグの覇者、東京ヤクルトだ。
 福岡ソフトバンク2軍はリーグ戦を独走した。最終成績は88試合を戦って、46勝32敗10分、勝率5割9分。2位・阪神とは5ゲーム差だったが、優勝を決めた8月31日時点では勝率は7割を越えて、2位を約10ゲームも引き離していた。
 なぜ福岡ソフトバンク2軍が、これほどまで強かったのか。その理由を石渡茂2軍監督に聞くと「調整登板の投手が多かったから」とまずは苦笑いを浮かべた。今季のファーム開幕戦。先発マウンドに上がったのは和田毅。2番手で登板したのがパウエルだった。特にパウエルはその後もファームでの登板機会が多く、一時は防御率のランキングトップを不動のものにしていたほどだった。
「でもね…」と、石渡2軍監督は続ける。
「投手陣も、若い選手たち抜きではこの成績はあり得なかった。高橋(徹)、大田原(隆太)、岩嵜(翔)はよく頑張ってくれました」
 高橋徹は高卒4年目の右腕。今季7勝をマークしてリーグ最多勝に輝いた。1軍登板はまだないが、今季はオープン戦で開幕投手を任された逸材。来季への期待が持てる若手だ。高卒3年目の大田原は故障もあり3勝と低調だったが、身長191センチの大型左腕は球界ではまれな存在。こちらも来季の1軍デビューが望まれる。
 そして岩嵜だ。高校生ドラフト1巡目のルーキー右腕が、日本選手権の大舞台で先発を任される予定だ。今季2軍戦では12試合に登板して、5勝2敗の成績。特に目を引いたのが防御率1.93という安定感だった。1軍デビューも経験済み。7月23日のオリックス戦(ヤフードーム)で先発マウンドに立った。
 身長186センチの長身で細身の体格。ややスリークォーター気味の投球フォームを見れば、東北楽天の岩隈久志とダブる。直球の最速は152キロ。時折90キロ台のカーブも操る。さらに1軍デビュー後には「落ちるボールがほしくてフォークボールを勉強中。試合でも試しています」とどん欲さと器用さを見せつけている。精神面も、デビュー戦後に王貞治監督から「物怖じせずによく投げた」とお墨付きをもらった。福岡ソフトバンクで最も楽しみな若手の1人だ。岩嵜自身は「1年間やってみて体力面に課題を感じました。もっと体づくりを頑張らないと」と言うが、8月になってユニホームのサイズを大きくしたという。確実な成長を続ける18歳がどのような投球を見せてくれるのか。一番の見どころだ。

勝つために、己が考えて打席に立つ

 野手陣は「これといって飛び抜けた選手がいたわけではなかった」と石渡2軍監督。確かにリーグ打撃ベスト10を見ても、その最後尾に吉本亮が名を連ねるだけだ(ただ、打率は2割1分8厘……)。
「1、2点差の試合をモノにしてきた。少ないチャンスを生かして、勝つ野球ができていたと思います」
 石渡2軍監督は「ファームは育成の場。だけど、勝敗は別だとは思わない。勝ちぐせをつける。これは大切なこと」と若鷹たちに常に説いてきた。
「バントやエンドランなどにしても、試合に勝つための自分の役割が何なのか、ベンチの指示を待つのではなく自分で判断できるように言ってきました」
 手前味噌だが、本連載「鷹詞〜たかことば〜Vol.22(ホークスの低迷は「2人目の打者」が原因!?)」を読んでいただきたい。1軍はそれができなくて、負けた。2軍はできたから優勝した。灯台下暗し、とはこのことか。
 現在の福岡ソフトバンクは以前のような大砲ぞろいのメンバーではない。常勝軍団再生のヒントは身近なところにあるものだ。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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