シェーン・マクマホン来日 WWE日本戦略のカギを握る男の狙いとは?

清野茂樹

WWE日本戦略のカギを握るシェーン・マクマホンが来日。WWE JAPANを訪問 【(c) 2008 World Wrestling Entertainment Inc. All Rights Reserved.】

 6月下旬、WWEのビンス・マクマホン会長の息子、シェーン・マクマホンが来日した。日本のファンにも広く知られているシェーンの現在の肩書きはグローバルメディア部門の副社長。来日の目的は「WWE JAPAN」へのあいさつと言われているが、その本当の狙いとは。

 WWEは今年2月の日本公演を前に日本支部「WWE JAPAN」の設立を発表した。日本公演に続き4月には「レッスルマニア」のパブリックビューイングイベントを開催。人気ディーバ、トリー・ウィルソン、日本人スター選手・フナキをゲストに迎え300人以上のWWEファンを熱狂させた。
 そして9月にも、8月17日(現地時間)に米国・インディアナポリスで開催されるこのWWE真夏の祭典「サマースラム」のパブリックビューイングイベント「WWE SummerSlam Tokyo Viewing Party 2008」(9月7日、品川・ステラボール)を開催するなど、積極的なプロモーション活動を展開している。

 ただ、日本でも根強いファンが存在するWWEだが、現在では、その人気は下降気味と言わざるを得ない。ロックやストーンコールドなど日本人に届くスーパースターは不足しているし、一時は地上波で放送されていた番組も、現在は有料のCS放送のみ。当然ながら、WWEとしてもこの現状を放っておくわけがない。
 将来的には人口13億の中国への参入をも視野に入れており、そのためにも、アジア・太平洋地域の重要なマーケットである日本でのWWE人気をもう一度、再燃させる必要があるのだ。既存のビジネスパートナー同士の繋がりを強化し、新たなビジネス戦略を展開するために置かれたのがWWE JAPANであり、その戦略の責任者こそがシェーンなのである。

リングでもビジネスでも大活躍

2002年横浜アリーナ大会では最初にリングに上がったシェーン 【スポーツナビ】

 シェーンは1970年、米国コネチカット州生まれの38歳(日本のプロレスラーでは天山広吉、藤田和之、TAJIRI、高木三四郎らと同い年にあたる)。マクマホン一家の第四世代として、幼い頃からプロレスの傍で育ったのは言うまでもない。名門ボストン大学を卒業後の1993年、父ビンス・マクマホン氏の後を追うようにWWEに入社。テレビ制作チーム、営業局、マーケティング、国際ビジネス開発部門を歴任した後、1998年にはデジタルメディア部でWWEの公式サイト(現在では、世界中から毎月1450万人以上のアクセスを集める)を立ち上げた後、2003年より現職に就き海外戦略を担当している。

 父親同様、選手としてもリングに上がり、高慢なキャラクターを演じるシェーンだが、その素顔は、ソフトな紳士として知られる。ユーモアが好きで、日本式の“気配り”のできる人物という評判だ。もちろん、仕事に対しては妥協せず、“ワーカホリック(仕事中毒者)”と呼ばれることも少なくない。ただし、ニューヨークの自宅に帰れば、4歳と2歳の男の子の良きパパに変身、今回の来日中も自宅に国際電話する姿が何度も目撃されている。ちなみに、2人の息子とシェーン本人は、一緒に柔術も学んでいるそうで、師匠はなんと、あのヘンゾ・グレイシーというから驚きである。

日本プロレスを知り尽くした男に課せられた使命とは

 そんなシェーンのポリシーは「WWEはファンベースである」ということ。つまり、ファンが求めるものを供給することが団体の繁栄につながり、その入り口は限られたものであってはならない、という考えである。そして、そのために彼が欲しているのは、地上波テレビ放送であり、今回の来日もそれに向けたアクションの第一歩と考えてよいだろう。 もちろん、一流のビジネスマンであるシェーンは、日本のプロレス事情については、リサーチ済みだ。米国より小さな国土に数多くの団体が存在し、ファンの興味も細分化していること、2つの民放テレビが深夜の30分枠でプロレスを放送していること、プロレスと総合格闘技の間に切っても切れない関係が存在すること、CS放送でプロレス専門チャンネルが存在することなど、米国と日本のプロレス文化の違いのみならず、日本のプロレスを取り巻く厳しい現状についても認識しているらしい。

 思えば、シェーンが初めて日本に来たのは、1990年に東京ドームで開催された「日米レスリングサミット」だった(レフェリーとして、ジミー・スヌーカ&ティト・サンタナvs渕正信&小橋健太の試合を裁く)。また、今もなお、WWEの日本公演史上最高の盛り上がりと言われる2002年の横浜アリーナ公演の時、最初にリングに上がり、大歓声を一身に受けたのもシェーンだった。
 日本のファンの熱気を肌で知る人物が、今後、どうやって日本での人気再燃に取り組んでいくのか興味深い。“来るべき日”に備えて精力的に動き回ったシェーンは、3泊4日の訪日スケジュールを精力的にこなし、家族の待つニューヨークへと帰って行った。

WWE「SummerSlam Tokyo Viewing Party」

9月の「サマースラム」イベントに人気ディーバ・マリアがゲストとして来日 【(c) 2008 World Wrestling Entertainment Inc. All Rights Reserved.】

日時:9月7日(日) 開場13:00 開始14:00
会場:品川・ステラボール(品川プリンスホテル内)
   (東京都港区高輪4−10−30)
入場料:3500円(税込) 500名限定
ゲスト:マリア、ビクトリア(WWEディーバ)※その他スペシャルゲストも参加予定

<イベント内容>
・大型スクリーン&音響システムによる「SummerSlam 2008」3時間ノーカット一挙上映。超レアグッズを入手できる抽選会など。

チケット発売:8月3日一斉発売
※発売初日のみ特別電話受付
特電番号:0570−06−9999(10:00〜23:00)

■イベントの問い合わせ
WWE JAPAN パブリックビューイングパーティ係
03−5456−6050(平日10:00〜17:00)
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著者プロフィール

1973年神戸市生まれ。1996年青山学院大学文学部卒業。広島のラジオ局でアナウンサー・DJとして活躍した後、2006年よりフリーに転身。現在はFIGHTING TVサムライにて新日本プロレスや格闘技の実況アナを務め、その他にもCMナレーションや文筆業まで幅広く活動している。プロレスのみならず、総合格闘技やキックボクシングなど、会場に足を運んで取材する興行の数は年間100を超えている。レトロな語り口とメガネがトレードマーク。

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