東洋大の窮地を救った余裕と自信=第57回全日本大学野球選手権5日目リポート

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余裕が生んだ同点弾

延長15回、大会最長5時間7分の激闘の主役となった東洋大・中倉 【島尻譲】

【東洋大 5対4 近大】「思ったより大したことない」
 東洋大・中倉裕人(4年=PL学園高)は、近大の先発・巽真悟(4年=新宮高)のボールを見てそう感じていた。なぜなら、巽の投球をビデオで見た高橋昭雄監督から「スライダーは大場(翔太、現・福岡ソフトバンク)に似ている」と聞かされていたからだ。「いくらなんでも大場さんよりすごいはずがない」。そんな思いが中倉に余裕を与えていた。
 それは、0対2とリードを許した9回2死一塁という場面でも変わらなかった。低めのストレートをフルスイングすると打球はきれいな放物線を描き、ライトスタンドに飛び込んだ。「球が走っていたし、変化球も良かった。今シーズンいちばんの出来だった。最後のホームランも失投ではなかった」と巽が脱帽する見事な同点アーチだった。

止まらない中倉の勢い

 延長に入っても中倉の勢いは止まらない。11回、1点をリードした場面では近大の3番手・滝谷陣(4年=知弁和歌山高)からライト線へタイムリー三塁打。だが、チームはその裏に同点に追いつかれ、試合は続いていく。
 そして迎えた15回。内野安打で出塁した松永隆太(4年=九州学院高)を二塁に置いた打席だった。低めのスライダーを見事に捕えた打球は、右中間を割るタイムリースリーベースに。大会最長記録を更新する5時間7分という激闘の行方を決める一打となった。結局、中倉は7打数4安打4打点1本塁打の大活躍。まさに独壇場であった。

自信を武器に頂点へ

 試合後、中倉は「何度もサヨナラのピンチを迎えたけど、全部乗り切れると思って守っていた。負ける気はしませんでした」と語った。そういえば、主将・大野奨太(4年=岐阜総合学園高)も大会開幕前に「リードされている場合でも、負ける気はしません。いつかは逆転できる、そうチーム全体が感じています」と話していた。それは、“戦国”と言われる東都リーグを3季連続で制し、昨秋の明治神宮大会でも優勝と勝利を積み重ねてきたがゆえの自信にほかならない。東洋大ナインは、この日の勝利でさらにその思いを深めたことだろう。
 頂点まであと1つ。深まる自信が栄冠を勝ち取る切り札になるはずだ。

<了>
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