明大をベスト4に導いたルーキー野村の好投

矢島彩

大学2度目の先発で好投

【明大 2対0 上武大】 新人・野村祐輔(1年=広陵高)の好投で、明大がベスト4に進出した。野村は8回を6安打、無失点に抑え、本人が最も嫌う四球もゼロ。集中打で勝ち上がってきた上武大に連打を許さず、三塁さえも踏ませなかった。
 
 先発はリーグ戦で1度だけ。これまで明大の2戦目は江柄子裕樹(4年=つくば秀英高)が務めてきた。起用の理由について、善波達也監督は「左打者が7人並んでいるので一番合うと思ったから」と話した。全国の舞台でポリシーに反するさい配を振るうのはとても勇気のいること。それを上回る信頼を1年生右腕に寄せているというわけだ。さらに、上武大サイドは「野村君が一番先発してほしくないピッチャーだった」(谷口英規監督)と明かす。嫌な予想は的中し、まんまと術中にはまっていった。

バックも力投に応える好守

「後ろに先輩がいるので、最初から飛ばしていった」(野村)
 先頭打者を5度も出したが、後続を打ち取り、傷口を広げなかった。5回には2死二塁の場面で、ここまで2安打の1番・目黒聡(4年=東海大相模高)を迎えた。「スライダーがポイントになると思っていた」という目黒は裏をかかれ、141キロの内角ストレートに差し込まれて三飛。目黒は「コントロールに自信があるのか、内をどんどん攻めてきた」と驚く。6回は4番・小川真人(4年=桐蔭学園高)から142キロの内角ストレートで見逃し三振を奪い、7回には2者続けてスライダーで空振り三振。ストレート、スライダーともに最後までキレがあった。

「スピードよりもキレが出るようになってストレートでも抑えられるようになったのが大きい」
 高校時代から体重が7キロアップ。この日も最速タイの146キロをマークした。そして、この大舞台でも動じない強い精神力。広陵高のチームメートは「試合前になると話しかけられないくらい集中している」と話していたが、現在はわざと誰かに話しかけて緊張をほぐしているとのこと。
「1年春からこういう経験ができて感謝しています。プレッシャーもあるけど、それは先輩が声を掛けてくれるので」
 最も苦しかったという8回は右翼線へ抜けそうな打球を、一塁手・千田隆之(3年=日大三高)がジャンプして好捕。直後に、リードの大きかった走者を捕手・中野大地(4年=拓大紅陵高)が刺した。バックも好守で後輩の力投に応えた。
 昨夏の甲子園決勝では、8回に逆転満塁本塁打を浴びて準優勝に終わった野村。自らの好投で、高校時代に届かなかった日本一へ大きく前進した。

<了>
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著者プロフィール

 1984年、神奈川県出身。『アマチュア野球』、『輝け甲子園の星』『カレッジベースヒーローズ』(以上、日刊スポーツ出版社)や『ホームラン』(廣済堂出版)などで雑誌編集や取材に携わる。また、日刊スポーツコム内でアマチュア野球のブログを配信中

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