16年ぶり五輪つかんだ、バレー全日本男子の戦略
総評
アテネ五輪最終予選で、批判の矢面に立たされた山本。技術力を向上させた今、本来の精神的強さをいかんなく発揮した 【坂本清】
まず競り合いの強さについてですが、前回のアテネ五輪最終予選では、フルセット負け4試合という結果を受け、当時のエースだった山本選手をはじめ、選手たちの精神力の弱さが追求されていました。「競り合いに弱い、勝負どころで弱い」。このような現象が起こるたび、精神力に原因を落ち着かせることで誰しもが納得していた風潮はとても危険だと感じていました。とくに山本選手は精神的な弱さを指摘されていましたが、当時から彼は非常に精神的に強い選手だと感じていました。
では前回にはなくて今回にはあったものは何か?
それは精神力ではなく技術力だと感じています。確固たる技術を身に付けた選手たちが、競り合いの中でも自らの技術を駆使して勝負できるまでに成長した。だからこそ精神力も磨かれた。そのように感じています。
次に終盤の連続失点についてです。イタリア戦の24−17からの逆転や、オーストラリア戦の23−18からのジュース、アルゼンチン戦5セット目の11−7からのジュースなど、数回のサイドアウトを繰り返すことによって勝利できるはずの終盤に、連続して失点してしまう場面が度々見られました。タイムアウトや選手交代を行うことで必死に状況の回避を試みてはいましたが、なかなか悪い流れを断ち切ることができずにいました。
この連続失点に大きくかかわっていたのが、ジャンプフローターサーブです。前回コラムにも掲載しましたが、攻撃重視の布陣を組んだ場合はジャンプフローターサーブのレセプションが不安定になります。特に荻野選手以外のWSが出場するケースではジャンプフローターに対するレセプションが勝敗の鍵を握る可能性があります。
ジャンプサーブで相手のレセプションを乱して攻撃を限定し、ディフェンスをコーディネートする戦術は王道ですが、ジャンプサーブにはミスがつき物です。それでもミスのリスクを承知で効果を狙っていくのがジャンプサーブなのですが、ジャンプサーブを5本6本と続けて効果的に打つことは非常に困難であると考えます。それに比べ、条件付き(相手の布陣が超攻撃的布陣など)ですが、ミスの少ないジャンプフローターサーブを確実に相手コートに打ち込むことによって、連続得点のチャンスが広がるのかもしれません。自らの連続失点から浮かび上がるのは、相手の布陣によってサーブの組み替えなど行うことによって、さらに効果的なディフェンス戦術が構築できることを示唆しています。
日本が目指す、“日本バレー”のスタイル
結果を出した全日本男子。7戦の戦いのなかで、目指すべきスタイルも見え隠れしていた 【坂本清】
であれば、あとは日本バレーを日本人化させることで、世界のトップに割り込むしかないのではないでしょうか。アルゼンチン戦で見せた『粘り』から、日本人化を連想させるスタイルが見え隠れしているような気がしてなりません。やっと世界の強豪国と戦う土俵に上がる資格を得た日本が、なみいる強豪に勝つために必要なのは、がっぷり四つに組む事ではないはずです。
■終わりに〜人生を変えるとは?〜
五輪に出場してもしなくても人生は変わり行くものだし、バレーボールをしていてもいなくても人生は変わり行くものだと思います。それでも一つ言えることは、ある一定の水準で満足してしまって、そこで成長を止めてしまっては、それ以上の良い方向へ人生を変えていくのは難しいのではないかと思います。
これからの人生を自らの思い描く人生に変えていく。
その原動力となるものは、己から湧き出るあくなき向上心なのかもしれないと、今更のように自分自身に言い聞かせながら、このコラムを締めたいと思います。
<了>