バレー全日本男子、7点差V目前から悪夢の初戦黒星

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 バレーボールの北京五輪・男子最終予選が31日に東京体育館で開幕し、日本はイタリアに2−3(20−25、30−28、30−28、33−35、7−15)で逆転負けを喫し、初戦を落とした。第4セットには24−17と大きくリードを奪ってマッチポイントを迎えたが、悪夢のような連続失点で追い付かれて流れを失った。
 初日、アジア勢のライバルではオーストラリアが3−0でタイに快勝。韓国はアルゼンチンに1−3で敗れた。最終予選は8チームの総当たりリーグ戦で争われ、全体の1位とそれ以外のアジア勢最上位が五輪に進む。

山本、越川が奮闘 粘り勝った第2、3セット

 日本は序盤こそ動きに硬さが見受けられたが、第2セット以降は粘り強い戦いを見せた。イタリアの主将アルベルト・チゾーラが「2セット目からブロックが機能しなくなり、レシーブもうまくいかずに(試合の流れが)日本に流れた。今日は日本のセッターが良い試合運びをしたと思う。2〜3セットは地獄を見た」と振り返ったほど、『取れるセット』を失っていたのは、イタリアの方だった。日本は第2、3セットとも先にセットポイントを奪われながら、山本隆弘、越川優がエースアタッカーの意地を見せて食らい付いた。勝利チームの配慮も含まれるにせよ、五輪切符への執念を見せた日本の戦い方は、敵将アンドレア・アナスタジ監督も「日本は、この20年ほどでもっとも素晴らしい試合を見せた」と賛辞を惜しまなかった。ただ、惜しむらくはセンターラインが機能しなかったことだろう。イタリアを苦しめながらも結果を得ることのできなかったセッター宇佐美大輔は「僕がしっかりトスを上げ切れないからアタッカーが決められない。僕の責任。勝たないと本当に意味がない。手応えとかは関係ない。悔しいです」とうつむいた。

■五輪切符の重圧に阻まれた1点

 良い流れでセットカウントを2−1と逆転した日本は、第4セットで圧倒的に優位に立った。セット中盤から点差を一気に引き離し、あっさりとセットポイントを迎えた。ところが、ファウルや速攻ミスなどの自滅で歯車が狂い始めた。主将の荻野正二は「これが(五輪)切符の重みかと、1点を感じていた」という。山本、越川とともにアタッカー陣の3本柱である“ゴッツ”石島雄介は肩の故障から回復したばかりで万全ではない。時折、得意のガッツポーズを見せたものの、苦境を跳ね返すムードメーカーにはなれなかった。そして、スーパーエース山本のスパイクもわずかにアウトへと外れた。「あれが取れなければ、切符が取れない。3本のトスが上がって、2本をミスした。1本でも決めていれば勝てたのに……」(山本)と悪い流れを断ち切れなかった責任を感じていた。
 精神的ダメージを隠しきれないのは選手ばかりでない。植田辰哉監督も「自分たちから勝ちを逃してしまった。ショックの残る試合になって、非常に悔しい」と肩を落とした。しかし、いくつかの反省材料は、ハッキリとしている。植田監督は、強いサーブを指示した越川が力み過ぎてネットに引っ掛けていた点や、石島の調子が上がり切っていないこと、センターラインのクイック攻撃が機能しなかった点などを挙げた。修復の問題は、精神的に立ち直ることができるかどうかだろう。
「こういう時こそ監督が先頭に立って声を掛けて引っ張りたい。できたこと、できなかったことを整理して、指示をしたい」
 前を向き、翌日からの巻き返しを誓った司令官の意気込みに、選手が応えられるか。翌6月1日は、アジア圏のライバルでもあるイラン戦。気持ちの強さを見せる内容で今度こそ白星を勝ち取りたい。

戦評

<第1セット>

 日本の先発は、宇佐美、山本、松本慶彦、山村宏太、石島、越川、リベロの津曲勝利。序盤、日本は越川にボールを集めていくが、3枚のブロックにシャットアウトされるなどマークに苦しむ。サーブでもタイミングが合わず、やや甘いボールが目立つ。ポイントを重ねる毎にイタリアのブロックに捕まる場面が増え、セット中盤までに7−14と7点のリードを奪われる。苦しくなった日本は、石島がレフトから3得点を挙げて5点差へと追い上げる。さらに、セット後半に入ると、日本のブロックがようやくイタリアの攻撃をとらえ始め、17−21と4点差に迫った。流れを変えた日本は、17−21からサーバーとして福澤達哉を投入するが実らない。終盤に山本のサービスエースなどで追いすがったが、点差を詰めきれず、第1セットは20−25でイタリアに先取された。

<第2セット>

 日本は、いきなり2連続でブロックポイントを与えてしまう苦しい出だし。松本の速攻で1点を奪うも、スパイクを決めきれずに失点を重ね、1−7と離される。イタリアはフリスト・ズラタノフやアレッサンドロ・フェイを中心に攻め立てていく。日本は2−7から主将の荻野正二を投入。じりじりと点差を詰めると、12−14からラリーの苦しい局面で越川がスパイクを力強くねじ込む好プレーを見せて13−14の1点差に。日本は山本、越川の得点で1〜2点差のまま耐えると、越川のバックアタックで17−18、続くイタリアのミスで18−18とついに追い付く。19−20からは山本のサービスエースで20−20と食らいつく。先にセットポイントを奪われるものの、日本は越川と山本が気迫のこもったスパイクで応戦した。
 ジュースにもつれても、イタリアはリードを一度も与えることなく28−28まで試合を進める。しかし、日本は越川がライトから3枚ブロックを崩して29−28と、このセット初めてのリードを奪い、最後はラリーから山本が2段トスを決め切るファインプレーで30−28。日本が耐え抜いてセットカウント1−1に持ち込んだ。

<第3セット>

 序盤、イタリアはエマヌエーレ・ビラレッリ、ルイジ・マストランジェロの速攻で攻勢をかける。日本はラリーから山村の速攻、あるいは山本のスパイクなどで1〜3点差を追いかける。イタリアはミスが出始め、リズムを崩すと、タッチネットの反則で11−11と並ばれる。中盤は、どちらもサーブで崩しにかかるがミスになるなど、試合のペースはどちらかに傾くことなく、際どい一進一退の展開となる。20−20から日本は清水をサーバーで登場させるがイタリアにフェイントを決められると、さらにズラタノフにサービスエースを奪われて20−22と苦境に立たされる。しかし、22−23から、ここまでネットを越えられなかった越川の強烈なジャンプサーブが決まり、23−23。先にセットポイントを奪われた日本だが、第2セット同様にしぶとく粘る。山本が巧みに相手ブロックからワンタッチを奪いながら粘りに粘ると、越川がイタリアのライト攻撃を1枚ブロックで止めるなど奮闘。28−28からズラタノフのサーブミスで日本が29−28とリードし、最後はフェイの速攻がアウト。日本が30−28で粘り勝ち、セットカウント2−1と逆転に成功した。

<第4セット>

 イタリアはスパイクミスなどが目立ち、序盤はやや「一人相撲」の展開。山本、石島のスパイクをブロックで仕留めるなど要所を締め、立ち直ったかに見えたが、日本がペースを手繰り寄せていく。山本がラリーからブロックのタッチを奪うスパイク、ズラタノフのバックアタックを止めた山村が速攻をそれぞれ決めると、マルティーノのライト攻撃を石島がブロックし、得意のガッツポーズで咆哮(ほうこう)。さらに越川のバックアタック、宇佐美のブロックなどでリードを奪いながら試合を進める。イタリアは、ライトのフェイにボールを集めて対抗。しかし、日本は17−15の場面で越川がジャンプサーブで相手守備を崩すと、フェイのライト攻撃を石島がシャットアウト。イタリアはたまらずタイムアウトをコールし、立て直しを図る。しかし、投入したアレッサンドロ・パパローニが日本のブロックに捕まるなど、反撃のきっかけをつかめない。日本は一気に突き放すと、山本のジャンプサーブで崩した展開から3枚ブロックを決め、24−17でセットポイントを迎える。ところが、勝利を目前に悪夢のような展開が待ち受ける。速攻ミスなどで失点が続くと、ピラレッリにサービスエースを奪われるなど、嫌な流れに。山本のスパイクはアウト、石島がブロックに捕まり、まさかのジュース突入を迎える。24−24から両チームはし烈を極める死闘を展開。日本は越川一辺倒、イタリアはフェイを中心に一歩も退かない。終盤、交代でコートに入った荻野が記者席に突っ込むこともものともしない好守備を見せ、越川もバックアタックなどでポイントを挙げ続ける。しかし、33−33から越川のスパイクがついにブロックに捕まると、最後はフェイにレフトからのクロススパイクを決められ、日本は33−35でこのセットを失った。

<第5セット>

 7点差リードのマッチポイントを失った流れは、あまりにも大きい。石島のスパイクが決まらず、嫌な雰囲気を払拭(ふっしょく)できないまま、試合が進む。石島に代わって出場した荻野がノーマークから1点を返すが、日本は1−9といきなり引き離されてしまう。清水邦広、朝長孝介、福澤と選手交代で打開を図る日本だが、流れを止めることができない。荻野はチームを乗せようと強気に攻めて出たが、3枚のブロックに跳ね返された。第4セットで奇跡の逆転に成功したイタリアは、息を吹き返し、フェイがきっちりと仕事を果たす。結局、日本は連続得点を奪うことがままならず、6−15でファイナルセットを失い、ショックの大きい逆転負けを喫した。

<了>
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