復活優勝の明大 チーム一丸でつかんだ栄冠=東京六大学野球

矢島彩

エース・岩田を中心とした個性豊かな投手陣

 早大の4連覇がかかっていた東京六大学野球春季リーグ戦は、明大が勝ち点5の完全優勝で、8季ぶり32度目の頂点に輝いた。3度の引き分けに加え、雨天順延にも悩まされ、終盤の11日間で7試合をこなす過密日程を乗り越えた明大。3季連続2位というシルバーコレクターを、初さい配の善波達也監督が優勝に導いた。 
 原動力になったのは15試合中13試合に登板したエース・岩田慎司(4年=東邦高)だ。特に早大1回戦からは11日間で6試合、実に402球を投げた。「正直、疲れもあるのでは?」との誘導尋問にも「全くない」と、すぐに答えが返ってきた。心身ともにタフなエースは、高い意識で試合に臨んでいる。「まずは完全試合、次はノーヒットノーラン、その次は完封を狙っていく気持ちで投げている」。岩田の持ち味はコントロールの良さとスライダー。早大・宇高幸治(2年=今治西高)の「真っ直ぐしか狙っていない。スライダーに手を出したら終わり」という言葉が、切れ味の良さを表している。
 3勝を挙げた江柄子裕樹(4年=つくば秀英高)は今季がリーグ初登板だった。ストレートも130キロ台がほとんどで、野手投げのようなフォームが特徴的だ。2枚看板について、善波監督は「(リーグ戦前に描いていた)想像よりもすこし上の活躍をしてくれた」とほおを緩めた。また、野村祐輔(1年=広陵高)、左腕・柴田章吾(1年=愛工大名電高)の1年生コンビもリリーフで試合をつくった。野村は優勝がかかっていた法大3回戦の大一番で先発に抜てきされた。善波監督は前日の引き分け試合の後、すぐに先発を告げたという。野村は「予想外のことで緊張した」と振り返りながらも、6回無失点と今季一番の投球で監督の起用に応え、試合の流れを呼び込んだ。

圧倒的な機動力、チームをまとめた主将の存在

 チーム盗塁数31はリーグトップ。試合数の多さを考慮しても圧倒的な数で、春季キャンプから徹底的に走塁練習をこなした成果だ。荒木郁也(2年=日大三高)が11盗塁、小林雄斗(4年=新田高)が9盗塁。いずれも50メートルを5秒7で走る俊足コンビが1、2番を打つ。また、荒木郁は早大戦で逆転サヨナラ2ランを放つなどワセダキラーぶりを発揮し、優勝に大きく貢献した。池田樹哉(4年=愛工大名電高)、小道順平(3年=二松学舎大付高)の主軸はここ一番での長打力が健在だ。右手首骨折で離脱していた佐々木大輔(4年=日大三高)は、リハビリ中にも関わらず、法大2回戦で値千金の同点2ランを放った。さらに、エースの岩田も4二塁打6打点と打撃センスが光っている。
 日替わりでヒーローが誕生していた陰で、主将・佐藤政仁(4年=青森山田高)は黒子に徹してきた。派手な活躍もなく、打率は1割台に終わったが、堅実な二塁守備でチームを支えた。監督、旧4年生両方の推薦で主将になって以来、「自分がやれることをしっかりやるということを口酸っぱく言ってきた」と話す。法大・金光興二監督は「開幕カードを見ただけでも明治の雰囲気が変わったことがわかった。ベンチからして全然違った」と4年生を中心としたチームワークに脱帽していた。
 最後に、いつも熱狂的な明大学生席を忘れてはならない。法大戦は平日にも関わらず2日連続で学生席を埋めた。彼らの応援もリーグ優勝を大きく後押しした。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

 1984年、神奈川県出身。『アマチュア野球』、『輝け甲子園の星』『カレッジベースヒーローズ』(以上、日刊スポーツ出版社)や『ホームラン』(廣済堂出版)などで雑誌編集や取材に携わる。また、日刊スポーツコム内でアマチュア野球のブログを配信中

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント