インテル3連覇の陰で ホンマヨシカの「セリエA・未来派宣言」

ホンマヨシカ

ミランを見ながらインテルを気にする最終節

 今シーズンのセリエA最終節は、近年まれに見る非常に熱いファイナル迎えることとなった。なぜなら1ポイント差で首位を守るインテルが、セリエA残留を最終節に懸けるパルマとアウエーで対戦。首位インテルを追うローマが、こちらも最終節のローマ戦にセリエA残留を懸けるカターニアとアウエーで対戦するという、つい2週間前までは考えられなかったような劇的なシチュエーションが用意されていたからだ。

 この日、僕はインテルの試合が行われるパルマには行かずに、サンシーロでのミラン−ウディネーゼ戦を観戦した。インテルとローマのスクデット(セリエA優勝)争いはもちろん一番気になっていたが、ミランとフィオレンティーナ(アウエーでトリノと対戦)によるチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得をめぐる争いも、非常に気になる。それに、自宅からスタジアムまで30分ほどで到着できる便利さもあって、ミラン−ウディネーゼ戦の観戦を選択したのである。

 サンシーロ・スタジアムの記者席に着いてみると、運の良いことにテレビモニターが付いている席が用意されていた。試合開始のホイッスルが鳴ると、テレビモニターをパルマ対インテル、カターニア対ローマを同時中継しているチャンネルに合わせ、さらにラジオ実況を聞くためにイヤホンを耳に差し込んだ。しかし、インテリスタ(インテルのファン)の僕としては、眼下で繰り広げられている試合より、やはりモニターに映されるインテルの試合が気になってしまう。ついついテレビモニターに目移りしてしまうので、試合中ミラン戦を観ていた時間は、実質45分ほどだったと言ってよい。

し烈を極めるスクデット争いと残留争い

 それでは、これら3試合を時系列で追っていくことにしよう。
 最初に試合が動いたのは、カターニア−ローマ。前半8分、ブチニッチのゴールでローマが先制する。この時点でローマは、インテルを2ポイント上回って首位に立った。前週に行われた第37節もそうだったが、試合中の選手に影響を与えないための配慮か、電光掲示板には他会場の経過が一切伝えられない。このため、ローマが先制した情報がラジオで流れても、サンシーロに詰め掛けたミランサポーターからは大歓声は沸き起こらなかった。

 次に動いたのは、眼下で繰り広げられているミラン−ウディネーゼだった。前半32分、ウディネーゼのメストが先制点を決める。この時点で、4位フィオレンティーナと5位ミランのポイント差は4と広がった。その後、前半はいずれの会場も動きがないままに終了。この時点では、ローマがスクデットに王手をかけ、1枠をめぐってのCL出場権争い(インテル、ローマ、ユベントスはすでに獲得している)は、フィオレンティーナが大きくリードしていた。

 一方、セリエA残留争いもし烈を極めていた。
 前節を終えた時点での最下位はリボルノ(勝ち点30)。そして19位エンポリ(同33)、18位パルマ(同34)、そして17位カターニア(同36)。すでにリボルノはセリエB降格が決まっており、残り2チームの降格はこの日の試合結果で決まる。エンポリはホームでリボルノと対戦して、前半を終えて1−0。この時点では、カターニアとパルマを抜いてセリエA残留となる(エンポリとカターニアは共に36ポイントだが、1勝1敗だった直接対決のゴール数ではエンポリが上回っているため)。

 いずれにせよ、このままではインテルはスクデットを、そしてミランはCL出場権を逃すことになる。インテリスタであり、かつミラノ在住の身としては、各会場の前半の結果は「最悪」だった。

最終節で圧勝したミランだったが……

セリエA3連覇を成し遂げたインテル。最終節でようやくスクデットを獲得した 【Photo:ロイター/AFLO】

 やがて、後半が始まった。
 最初に動いたのは、ミラン−ウディネーゼ。ブロッキに変わって途中出場したパトが後半3分、右サイドからのカカのクロスにダイレクトで合わせて同点ゴールを決める。
 その7分後、エンポリが追加点を挙げて2−0とし、カターニアとパルマにプレッシャーを掛ける。
 14分、再び目の前の試合が動く。インザーギが、自身のミラン通算100ゴール目を決めて2−1と逆転。その3分後、待ちに待ったインテルの先制ゴールが決まる。ゴールを決めたのは、3月29日のラツィオ戦から実戦から遠ざかり、この日後半6分に投入されたイブラヒモビッチだった。

 この時点で終了のホイッスルが鳴ったなら、インテルのスクデットとミランのCL出場権獲得は無事に達成されていた。だが、ミラノ市民の喜びに水を差したのは、アウエーでトリノと対戦していたフィオレンティーナだった。後半32分、アルゼンチン人アタッカーのオスバルドがオーバーヘッドキックでゴールを決めて先制したのである。

 トリノでの戦況を知らないミランは、ウディネーゼを一方的に攻め立てていた。この試合を最後にミランを去るカフーがネットを揺らし、さらにセードルフがダメ押しゴールを決めて、ファイナルスコア4−1で最終戦を勝利で飾った。しかし、フィオレンティーナも、オスバルドのスーパーゴールを死守して1−0でトリノに勝利。この結果、CL出場権の4位はフィオレンティーナが確保した。

 パルマでは、イブラヒモビッチの追加点でインテルが2−0で勝利し、スクデットを確実なものとした。一方、悲壮感が漂うセリエA残留レースは、後半40分に今シーズン大活躍のマルチネスが執念の同点ゴールを決めて1−1とする。そのままスコアは動かず、カターニアが悲願のセリエA残留を果たすと同時に、ローマの逆転優勝の夢は潰(つい)えることとなった。なお、リボルノと共に降格するのは、パルマとエンポリに決定した。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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