崖っぷちで残ったイタリア ホンマヨシカの「セリエA・未来派宣言」
相性が良いスコットランド
トーニの2得点でスコットランドを粉砕したイタリアだが、今後も負けられない戦いが続く 【 (C)Getty Images/AFLO】
さて試合だが、イタリア代表はローマと同じく4−2−3−1の布陣を敷いた。しかしローマの戦法とは大きく異なる。
本来ならトップ下のトッティをセンターFWの位置に置くローマは、トッティが自由な動きでゴール前にスペースを作り、MFが空いたスペースに飛び込んで攻撃を仕掛ける。だが、イタリア代表の場合は、センターには真のセンターFWであるトーニがしっかりとゴール前に陣取り、トーニの高さを生かすか、ディナターレやペッロッタとのコンビネーションで相手ゴールを脅かす、至って正攻法の攻撃だった。
トッティがセンターに入る変則的な布陣は、ローマでしか実現できない布陣だろう。
イタリアのメンバーは、GK:ブッフォン、DF:右からオッド、カンナバーロ、マテラッツィ、ザンブロッタ、守備的MF:右からガットゥーゾ、デ・ロッシ、攻撃的MF:右からカモラネージ、ペッロッタ、ディナターレ、FW:トーニだった。
対するスコットランドは4−1−4−1という中盤を増やして相手の攻撃の芽を摘み取る布陣で挑んだ。
スコットランドはイタリアにとって伝統的にやりやすい相手だ。今よりもっと手強かったころのスコットランド(60年代のデニス・ローやジミー・ジョンストン、70年代のビリー・ブレムナーやピーター・ロリマー、ケニー・ダルグリッシュら名選手を擁していた)でもそうだった。
スコットランドはラテンやスラブ諸国のように、ずるさや駆け引きを用いない、正直過ぎるほど正直な試合運びをする。イタリアにとってはスコットランドより格下のグルジアやリトアニアのようなずるさを持っている相手の方がやりにくいに違いない。
僕はスコットランドのこの正直さが好きで、彼らがW杯に出場した時には必ず応援するのだが、彼らはいつも見事に期待を裏切ってくれるのだ。74年のW杯では当時ヨーロッパを代表する強豪クラブだったリーズユナイテッドのブレムナー、ロリマー、ジョーダンらに加え、ベテランのデニス・ローやジョンストンらを擁しており、ダークホース的な存在になると期待していたのだが、グループリーグであっさり敗退。78年のW杯でもダルグリッシュやジョーダン、それにアーチー・ゲミルやグレアム・スーネスら実力では1級品の選手をそろえていたのだが、再びグループリーグで敗退した。続く82年、86年のW杯もジョーダンやスーネスのほかに現セルティック監督のゴードン・ストラカンを擁し、小粒だがバランスの取れたチームで挑んだが、潔さは相変わらずで、毎回グループリーグで敗退している。
90年代に入ってスコットランドから名選手が少なくなり、徐々にチーム力は衰退していった。しかし、今回のユーロ予選では久しぶりに元気な戦いを見せていて、10月7日に行われたホームでのフランス戦では1―0でフランスを下している。
トーニの活躍でスコットランドを粉砕
開始すぐにイタリアが試合のペースを握り、両サイドから果敢に攻撃を仕掛ける。イタリアが狭いスペースでの素早いワンツーパスを見せたり、ドリブル突破を見せたりと、両チームの個々の技術力の差は歴然だった。
イタリアの先制点は前半12分。スコットランド陣内右寄りの位置でオッドが蹴ったFKにトーニが相手DFと競りながらヘッドで合わせ、ボールはゴールネットを揺るがした。1点を先制した後、イタリアはゲームを支配するが、強引に攻めようとはせずに相手をうかがう体勢をとる。スコットランドも時折ブラウンが左サイドから攻撃を仕掛けたり、ペナルティーエリア内でマクコロックがカンナバーロと接触して倒れPKをアピールするシーンがあったが、イタリア優位の展開は変わらず1−0で前半を終了。
後半に入りイタリアの攻撃が激しくなる。ディナターレが2度にわたって左サイドからスピードのあるドリブルで抜け出しシュートを放つが、GKのゴードンにシュートを阻まれる。その後もトーニとカモラネージがシュートを放つがゴールに至らなかった。
イタリアの2点目は後半25分。スコットランド陣内でボールを奪ったガットゥーゾが右サイドのカモラネージにパス。カモラネージが上げたクロスに再びトーニがヘッドで合わせてスコットランドを突き放し、試合は2―0で終了した。
この後、イタリアは6月2日のフェロー諸島戦、6月6日のリトアニア戦とアウエーゲームを行なう。尻に火がついてやっとエンジンが掛かり始めたイタリアは、6月のアウエー2試合にポイントを落とすようなミスは犯さないだろう。
イタリアのユーロ出場を懸けた本当の戦いは、9月8日に予定されているホームでのフランス戦と、その試合から4日後の12日に予定されているアウエーのウクライナ戦だ。トッティの代表復帰も含めて、9月のイタリアサッカーは本当に熱くなりそうだ。
<この項、了>