7強時代到来か=07-08シーズン リーガ・エスパニョーラ展望
タイトル争いの鍵はローテーション
スペイン代表を多く抱えるバレンシア。負傷者が戻ってきた今季は、タイトルを狙えるチーム力を誇る 【 (C)Getty Images/AFLO】
過密日程を乗り切るためにも、均衡したレベルで2チーム分作れる戦力を抱えることが優勝争いをする上では必要となってくるが、そうした意味で優勝候補と呼べるのがR・マドリー、バルセロナ、セビージャ、バレンシア、A・マドリーの5チーム。普通に考えればR・マドリー、バルセロナの2強にその他中堅クラブが追随する例年通りの構図が浮かんでくるが、私の予想と期待は2強のマッチレースではなく、上記5チームを軸にビジャレアル、サラゴサを含めた上位7チームの激しい上位争いだ。シーズン終盤には優勝争いが2、3チームに絞られる可能性はあるが、CL圏内争いはし烈を極めるだろうし、昨年のUEFAカップでスペイン勢が活躍したように、リーガ中位のクラブと上位クラブは資金力の差こそあれ、実力差は紙一重。R・マドリー、バルセロナがベストな布陣を組んだ時には世界規模でみても豪華な顔ぶれとなるが、逆にその顔ぶれが突出するあまり、うまくローテーションを組めない可能性もあり、他チームが付け入るすきは十分ある。
セビージャ、バレンシアに期待する理由
R・マドリー、バルセロナといったチームは国内外で常に立場が上になるため、横綱相撲を取ってもいいが、セビージャやバレンシアはそうはいかない。自分たちのスタイルを持ちながらも、対戦相手や試合状況に応じて戦術、システムを微調整していく必要があり、彼らにはそれを実行できるだけの組織力がある。それはアジアと世界で戦い方を変えなければいけない日本のサッカーにとっても、十分参考になるだろう。
また、両クラブ共に経済面で世界的なビッグネームを獲得できないことから、選手育成に力を入れている。そこで育った生え抜き選手が地元のスターになっているのは、今のサッカー界の中では良い模範となるだろう。世界的に見ればセビージャのヘスス・ナバス、バレンシアのアルベルダは、ベッカムやロナウジーニョのような世界的な人気はないが、地元では絶大な人気を誇る。
欧州のビッグクラブがお金の落ちるマーケットを求め外国へ拡大傾向にある中、背伸びすることなく地元出身の選手を基盤に地元ファンに愛されるクラブ経営をしている。こうすることで、結果的に、地元以外のファンからも愛されるクラブにもなっていくのではないだろうか。
昨シーズンも終盤までこの2チームは優勝争いに加わったが、最後はやはりR・マドリー、バルセロナのマッチレースとなった。今シーズンこそは、この2チームが主役となり、R・マドリー、バルセロナにはないリーガやスペインサッカーの魅力を発信してもらいたい。もちろん、バレンシア在住の私の一押しはバレンシア。スペイン代表選手を多く抱えるバレンシアが良い結果を残すことは、シーズン終了後にあるユーロ2008のスペイン代表の活躍にもつながると信じている。
最後に1つ。昨年リーガで続出したようなけが人(特にひざの十字じん帯のけが)がなるべく出ないことを願いたい。選手たちがけがなくシーズンを終えてくれれば、必ずやファンを魅了するスペクタクルなシーズンとなるであろう。
<了>