酒井高徳がキャプテンとして心掛けること 惨敗後の試合で見せたマネジメント力
ヘルタ戦は途中出場で流れを変える
ハンブルガーSVは前節、バイエルンに0−8の完敗を喫して16位に後退 【写真:アフロ】
だからこそ、私はHSV対ヘルタの試合を見るために、今季初めてハンブルクまでやって来た。間にドイツ杯(準々決勝でボルシア・メンヘングラッドバッハに1−2の惜敗)を挟むとはいえ、バイエルン相手に喫した壊滅的な惨敗を受けて、キャプテンの酒井高徳はどのようにチームをマネジメントするのか――。そこに興味があったのだ。
ところが、ヘルタ戦の酒井はスタメンから外れ、ベンチスタートだった。代わりに右サイドバック(SB)を務めたのはデニス・ディークマイヤー。ちょっと目論見(もくろみ)が外れてしまった、私のハンブルク遠征だった……。
立ち上がりはMFブラディミル・ダリダが積極的にシュートを放つなど、ヘルタの試合の入り方が良かったのだが、徐々にHSVはストライカーのボビー・ウッドが右に流れてチャンスメークに絡み、形勢をやや有利にした。すると、ヘルタのパル・ダルダイ監督は52分、セントラルMFの1人、二クラス・シュタルクを下げて、技術力の高そうな攻撃的MFオンドレイ・ドゥダを投入し、押し気味に試合を進め始めた。
中盤で後手を踏む展開となったHSVのマルクス・ギズドル監督は73分、ウォレス・ソウサ・シウバを下げて、酒井をセントラルMFの位置に置いた。すると、酒井はアグレッシブにどんどん相手チームの選手を追い込み、中盤の形勢を一気にHSVに有利なものに変えていった。酒井がピッチに入って4分後となる77分、HSVは右サイドの崩しから、最後はアルビン・エクダルがシュートを決めて、1−0とリードを奪った。
ヘルタ戦の酒井はキャプテンマークこそGKレネ・アドラーに譲ったが、味方を鼓舞し、仲間を下げてマークを明確にしたり、チームメートに高めの位置を取るよう要求する。焦る必要のない場面では、しっかり落ち着いてプレーするようジェスチャーを交え、アディショナルタイムに入ってからは、サポーターにもっと湧くよう両手で促すなど、すっかりキャプテンの役割が板についていた。
試合は1−0のまま終わり、酒井はガッツボーズで勝利を喜んだ。勝ったHSVは16位のままながら、15位ボルフスブルクと同じ勝ち点である23に並ぶことができた。
途中出場で味方に送ったメッセージ
ヘルタ戦では途中出場した酒井。チームは1−0で勝利した 【Getty Images】
「『少し疲労感が見える』と、今日の試合前、監督から言われました。今季、しっかり結果を出していることと、トレーニングもしっかりできているということで、自分のところ(ポジション)でディークマイヤーを使いたい。ということでした」
短い時間の出場ながら、酒井の交代出場によってヘルタの中盤が機能しなくなった。一方で酒井が登場後、すぐにHSVは決勝ゴールを奪った。
「少し気持ちが勝ってしまい、前に行こうという思いが出てしまった。あの時間帯は自分のポジションを留守にしたシーンが何回かあったので、そこは短い時間ですが少し反省かなと思います。それ以外はしっかり、カバーだったり、危険なところを予測して入っていけたと思います」
心掛けたのは、漫然と代わったポジションでプレーするのではなく、しっかり味方にメッセージを送ることだった。
「(試合途中から)入って来た選手に対していつも思っていたのは、何となくそのポジションに入るのではなく、1回のスプリントだったり、もう10メートル走ってくれる姿を見たら、チームとして士気が上がるなと。
そんなイメージがあったので、微妙なボールにしっかりプレッシャーに行くとか、2回、3回追うとか、プレッシャーを掛けにいくアグレッシブさを感じさせるプレーを意識しようと思っていました。それが裏目に出て、最初の方は自分のポジションを留守にしてしまったところがありましたが、そこは反省しながらも、それ以外のところは動けていたと思います。まあ、最低限の役割は果たせたかなと思っています」