二冠王の筒香が追い続ける理想の打撃 「目標は常に高いところにあった」

菊地慶剛

本塁打王と打点王の二冠に輝いた筒香 【写真は共同】

 横浜DeNAは8日からのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで巨人と対戦する。5年連続最下位を含め10年連続Bクラス低迷に甘んじていたが、アレックス・ラミレス新監督の下、粘り強い戦いを続け、チーム史上初のCS進出を決めた。

 チーム打率はリーグ4位、防御率は同5位、さらに守備率も同4位と、何かに突出した力を有していたわけではないが、CS進出の原動力になったのが24歳ながら主将を務める筒香嘉智選手であることは誰もが認めるところだろう。

 若き主砲の活躍はまさに圧巻だった。東京ヤクルト・山田哲人選手らとの熾烈(しれつ)な争いの末、初タイトルながら本塁打王、打点王の二冠に輝いた。すっかり日本を代表する4番打者の地位を確固たるものにした感すらある。

 二冠王だけでも筒香の活躍ぶりを十分に証明しているが、もう少し別の角度からも検証してみると、更に彼のすごさが浮かび上がってくる。

OPSは山田らを抑えてトップ

 MLBでは強打者を示す指標としてOPS(On-base plus slugging)が使用されており、MLB公式サイトが扱う選手の個人成績にも利用されている。OPSとは単純に長打率と出塁率を足したもので、数字が高ければ高いほど優秀ということになる。

 今シーズンの筒香のOPSは1.110(長打率6割8分、出塁率4割3分)と言うまでもなく高いのだが、実はメジャーでも1.0を超える選手はほんの一握りしかいない。今シーズンに限っていえば、1.0を超えたメジャーリーガーはレッドソックスのデービッド・オルティス選手(1.021)ただ1人。しかも筒香のように1.1を超えるとなると、ここ最近では2015年、ナショナルズのブライス・ハーパー選手の1.109、09年、当時カージナルスのアルバート・プホルス選手の1.101と、メジャーの強打者でもなかなか記録できない数値なのだ。もちろん球場の広さや対戦投手の違いなどMLBとは単純比較はできないし、日本では山田(1.032)と広島・鈴木誠也(1.016)の2選手も1.0を超える活躍を見せている。それでも今シーズンの筒香のバッティングが抜きんでていることは理解できるだろう。

 昨年24本だった本塁打を今年は44本に伸ばしたのみならず、打率(3割2分2厘)を含め打撃部門のすべてのカテゴリーで自己ベストを更新した筒香に対し、メディアは“覚醒”という表現を用いようとする。果たしてそうなのだろうか? 昨年、筒香が参加したドミニカ共和国のウインターリーグに1週間ほど同行取材した際に、そのバッティングを間近にチェックし、本人から直接話を聞いた限りでは、どうしても“覚醒”という表現が正しいようには思えなかった。

 そこで自分の中に生じた胸のつかえを取り除く意味もあり、CS争い真っ只中の9月中旬に、あらためて話を聞くことができた。以下、その内容を紹介したい。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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