新潟高校球界の名将が大学に転身し4年 反スパルタで急成長した新潟医療福祉大

高木遊

2013年創部で今春リーグ2位

2013年の野球部創部と同時に監督に就任した新潟医療福祉大の佐藤監督。かつては新潟明訓高校を率いて8度甲子園に出場した 【写真:高木遊】

 以前、プロ球団スカウトの横で新潟医療福祉大の試合を見ていると、そのスカウトがふと呟いた。

「佐藤さんがすごいのは、あの歳(59歳)でスパルタじゃないところなんだよね。ほら今もマウンドに行っているけど、フォームがどうのこうのって話をしてる」

 新潟明訓高で甲子園に春夏合わせ8度の出場を誇る佐藤和也監督が、新潟医療福祉大の創部と同時に監督に就任したのは2013年。そこからわずか4年、1期生が4年生となったチームは、今春の関甲新学生リーグで2位に入り、3季連続全国4強入りした強豪・上武大をあと一歩まで追い詰めた。

 また、高校時代に公式戦でわずか2勝しか挙げたことのない左腕の笠原祥太郎投手(4年・新津高)は今秋のドラフトで上位候補と評価されている。この急成長には、佐藤監督独自の指導哲学があった。

一番厳しいのは“自分でやること”

橋本主将と談笑する佐藤監督。スパルタではなく、自分たちで考える野球を実践し、創部4年目の今春はリーグ2位と着実に力をつけてきた 【写真:高木遊】

「やらされたことだけやっても、社会に出た時にどうなのか? 一番厳しいことは与えられた時間の中で“自分でやること”。卒業した後に“大学の練習、厳しかったよなあ”と振り返るのではなくて、“俺は自由が多い時間の中で、これだけのことをやってきたんだ”と思ってほしいんだよね」

 佐藤がそう語るように、わずか4年で全国大会出場を狙えるまでに成長した新潟医療福祉大だが、その練習時間は短い。平日は午前中に授業を受け、授業が終わった者から15時に始まる全体練習に参加するが、練習は19時には終わる。また試合のない土曜・日曜の練習は9時半から始まるが13時には終わる。自主練習はもちろん可能だが、「もちろん試合に出るための競争があるから、ガンガン練習することは大切だ。でも明日は、早く帰って部屋の掃除をしたり、彼女とご飯でも食いに行ったりして自分で“時間を作る”ことも必要だぞ」と話すこともあり、漠然とただ練習させることはしない。

 そして佐藤は「練習をギチギチに厳しくやらせることの反対って“楽すること”じゃなく“楽しむ”こと。そのためには勝たないといけないし、野球の本質として何が面白いのかを追求することにもなりますよね」と穏やかな表情ながら力を込めて語った。

 実際に主将を務める橋本彗(4年・東農大二高)は「本当に自分がやりたい練習を自分と向き合いながらできているので、大学に入って野球がより楽しくなりました」と笑顔を見せた。

1/2ページ

著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント