「三極」に振れるJリーグを読み解く 2nd優勝、CS出場を果たすクラブは?

北條聡

台風の目となりうる”第2グループ”

4試合で3ゴールを決めた鳥栖のエース豊田陽平。年間の総失点が2番目に少ない守備力も鳥栖の大きな強みだ 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 もちろん、タイトル争いへの興味を広げるための「粗探し」という側面は否定しがたいが、実際に上位陣がもたつけば、第2グループにもセカンド制覇への道が開けてくる。そこで面白い存在がサガン鳥栖とヴィッセル神戸だろうか。ファーストでは鳥栖が15位、神戸が12位と下位に沈んだが、セカンドではそれぞれ5位と6位につけている。現時点では上位陣との対戦が少ない分、過信はできないが、勝ち点を重ねるごとに自信が深まれば、侮れない存在となるかもしれない。

 鳥栖はセカンドの初戦でFC東京を相手に劇的な逆転勝ちを収めて勢いに乗った。年間の総失点が2番目に少ない守備力が計算できる上に、攻撃面で好転の兆しがある。ファーストで5得点に終わった豊田陽平が4試合で計3ゴールを決めているのだ。大砲の得点力を引き出すクロスが効率良く使われるようになったのが大きい。一方の神戸も主砲レアンドロが4戦4発の量産態勢。前節の湘南ベルマーレ戦では終盤に崩れる拙い試合運びに向上の跡があり、ネルシーニョ監督好みの手堅いチームへ転じる契機となりそうな予感もある。

 さらに大宮アルディージャと柏レイソルも台風の目になる可能性は十分だろう。大宮はセカンド9位も4戦無敗。千両役者の家長昭博をけがで欠きながらも、G大阪、浦和と引き分けた。攻守両面で戦い方に統一感があり、大崩れしない強みがある。失点が少ない代わりに得点も少ないという悩みはあるが、浦和との「さいたまダービー」で初得点を決めたマテウスの打開力とダイナミズムが、攻撃面でプラスの”化学反応”を起こしつつあり、今後への期待がふくらみそうだ。

 助っ人が新たなプラス要素になりそうな点では柏も似ている。セカンドからヴァンフォーレ甲府のクリスティアーノが復帰。展開の優劣に関係なく、唐突にスコアを動かす一発(FKやミドル)は、先に失点するとモロい柏の貴重なアイテムになりうる。再三の好守でチームを救ってきた守護神の中村航輔がリオ五輪へ参加する夏場は僅差勝負への不安もあるが、主力にひしめくリオ世代の「落選組」に反骨の灯がともれば、思わぬパワーが加算されても不思議はない。

し烈なサバイバルが繰り広げられる「残留争い」

戦力的には上位争いに加わるべきFC東京だが、ここまで1勝3敗と苦しい戦いが続いている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 セカンド制覇、年間3位以内の「二極」をめぐる争いは、ここまでか。残るクラブの焦点は、第三極の「残留争い」に絞られそうだ。戦力的には上位争いに加わって然るべきFC東京だが、セカンドは1勝3敗。うち2敗は後半ロスタイムに決勝点を奪われての逆転負けである。悪夢が悪夢を呼ぶ負の連鎖を断ち切る手立てが見つからない状況だ。今季7勝のうち5勝は1−0。失点を許して勝った試合は2つしかない。総得点20が4番目に少ないことを考え含めても、有り体ながら「守備再建」に力を注ぐのが最も現実的な試みか。

 年間順位でFC東京に続く11位のジュビロ磐田はセカンド未勝利、12位のベガルタ仙台は1勝3敗と苦戦中も、それ以上に下位クラブがもがいている。数少ない例外は年間最下位のアビスパ福岡だ。セカンドは1勝1分け2敗。初戦で浦和を苦しめ、F東京に逆転勝ち、G大阪とはドローだから価値がある。

 残留を争う甲府、アルビレックス新潟はセカンド未勝利。名古屋グランパスに至ってはファーストから12戦、勝ち星から見放されている。ドゥドゥの加入で前線に決め手を得た甲府を除けば、どこも明るい材料に乏しい。現時点で「残留ライン」に位置する湘南(年間14位)と福岡との勝ち点差はわずか4。左サイドの推進力を担う亀川諒史がリオ五輪で抜ける夏場をうまく乗り切れば、福岡にも残留圏内へ食い込むチャンスは十分にあるだろう。例年にも増して、し烈なサバイバルとなりそうだ。

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著者プロフィール

週刊サッカーマガジン元編集長。早大卒。J元年の93年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。以来、サッカー畑一筋。昨年10月末に退社し、現在はフリーランス。著書に『サカマガイズム』、名波浩氏との共著に『正しいバルサの目指し方』(以上、ベースボール・マガジン社)、二宮寿朗氏との共著に『勝つ準備』(実業之日本社)がある。

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