GLから一転、本来の力を示したベルギー プレッシャーを吹き飛ばし準々決勝へ
大きな期待を寄せられていたベルギー
大会前から「もっとも優れたタレントをそろえたチーム」とベルギーに対する期待は高かった 【Getty Images】
ベルギーのグループリーグでの戦いぶりに、メディアは満足していなかった。あまり実力を正確に表さない指標とは言え、今のベルギーはFIFAランキングで2位につけている。GKからFWまで、スタメンからベンチまで、ベルギーの選手層は厚く、今やバンサン・コンパニが負傷離脱していることすらみんな忘れてしまうほどだ。
「今回のユーロにおいて、ベルギーはもっとも優れたタレントをそろえたチームの一つである。その陣容にふさわしいサッカーをベルギーはしなければならない。しかし、マルク・ウィルモッツ監督率いるベルギーは、2年前のワールドカップ(W杯)ブラジル大会からあまり進歩が見られない」というのが、グループリーグを終えた後のメディアの論評だった。
もともと“結果”を出すことに対する期待が高かった今大会のベルギーだったが、決勝トーナメントで「死の山」を免れたことから、さらにチームへのプレッシャーは高まった。少なくとも、ラウンド16のハンガリー戦、続く準々決勝のウェールズ対北アイルランドの勝者(結果は1−0でウェールズが勝ち上がり)との試合を、ベルギーは「本命」の立場で戦うわけだ。ここで負けたら、ベルギーには失望しか残らない。選手たちが、「ここまで来たら、どの国も強いチームだけれど、組み合わせに恵まれたことは否定できない」と口をそろえていたが、ウィルモッツ監督は「(決勝トーナメントの)初戦がスペインだった方が、まだ失うものはなかったのに」とこぼすほどだった。
ハンガリー戦で訪れた”アザール・タイム”
ハンガリーを相手にアザールが躍動。チームの勝利に大きく貢献した 【Getty Images】
グループリーグでのベルギーは「守」から「攻」への切り替え(つまりカウンター)が光っていたが、ハンガリー戦では「攻」から「守」への切り替えも早かった。とりわけ、エデン・アザールのプレーが素晴らしかった。45分、アザールはハンガリーの右サイドバック(SB)、アダーム・ラングのオーバーラップにしっかり付き、自陣の深い場所でボールを奪い返すと、直後のデュエルにも勝ってドリブルで前進し、ロングカウンターの起点となった。献身性、フィジカルコンディションの良さ、ドリブルの力強さなど、この日のアザールの良さがいっぱい詰まったシーンだった。
芝の根付きが悪いのか、スリップする選手が続出した中、アザールの足の踏み込みはしっかりピッチをつかみ、相手のボールを奪ってはマークを簡単に外してドリブルを加速させた。この日、アザールが成功させたドリブル突破は13本に上ったという。
やがて”アザール・タイム”が訪れた。
78分にケビン・デ・ブライネの右CKをハンガリーDFがクリアし、アザールがそれを拾いスルーパス。しかし、それは味方のオフサイドポジションを利用したトリックだった。アザールは自らのスルーパスに走り込んでクロスを入れ、ミシー・バチュアイのゴールを見事にアシストした。続く80分には、ベルギー得意の恐怖のカウンターから、アザールが仕上げのシュートを決めて3−0。後半に入ってからハンガリーの反撃を受け、いつ同点になってもおかしくない苦しい展開だったが、アザールの妙技がこの試合の決着をつけた。ベルギーは91分にもカウンターを炸裂させ、ヤニック・フェレイラ・カラスコがダメ押しゴールを決めると、4−0でハンガリーに快勝した。