DDTプロレス・高木三四郎社長「今の規模感を落としちゃいけない」

スポーツナビ

DDTの選手兼代表取締役社長の高木三四郎氏に話を聞いた 【スポーツナビ】

 2015年以降、プロレス業界は人気回復の兆しを見せている。今回はその最前線に立ち、業界を引っ張る団体のトップに、2015年の振り返りと今後の展望を聞いてみた。

 第2回は「文化系プロレス」と称され、ファンからの支持が厚いDDTプロレスの選手兼代表取締役社長・高木三四郎氏。2015年はさいたまスーパーアリーナ、両国国技館、エディオンアリーナ大阪でのビッグマッチを開催するなど観客動員も増加し、後楽園ホール大会では毎回超満員の熱狂的なファンが集まる。今回は団体のこれまでを振り返ってもらい、今後のDDTの展望などについても語ってもらった。(取材日:3月3日)

13年ごろから上昇の傾向

DDTの人気上昇と若手選手への世代交代がうまくリンクした部分がある 【前島康人】

――2015年にプロレス人気の回復が見られました。DDTとしてもその傾向を感じていましたか?

 13年ぐらいから、女性ファンが増えてきているなという感触がありました。(DDTとしては)14年からテレビ番組での露出があり、15年も引き続きですね。その中で、いわゆる“プロレス女子”ブームというのがあって、女性ファンの方が、プロレスを見に来る動きがあったと思います。やっぱり、それが一番大きかったと思います。(プロレスが)女性の方でも気軽に観に来られるジャンルになったのかなと僕らは捉えています。

――13年から女性ファンが増えてきたということですが、その要因は何があったのでしょうか?

 これが特にないんですよ。なんとなくですよね。新日本プロレスさんも、オカダ・カズチカくんがチャンピオンベルトを巻き始めて、世代交代したじゃないですか? DDTも、09年、10年頃には世代交代が始まり、飯伏幸太とかいろいろな選手が前に出るようになりました。だから若い選手が中心になって、出てきた辺りですかね。

――DDTと新日本の世代交代が同時期にあったと?

 そうですね。12年、13年というのが転機ですね。

――実際の数値として、観客動員はどうですか?

 2009年からずっと上り続けている感じです。ちゃんとした数字は出していませんが2015年には過去最高となっています。

(増えた要因の)大多数は新しいファンですね。女性もそうですが、若い世代が増えました。ファンの年齢層は全体的に若返ったと思います。そう考えると、女性ファン層を取り込めているかいないかで、団体がうまく行っているのかの分かれ目になっていると思います。

――新規ファンを獲得するため、何か施策をしてきたのでしょうか?

 いろいろとやりました。女性に向けたグッズ展開とか。トートバッグやかわいい図柄のグッズ。あとは女性の体型に合わせたTシャツを作るとか。あと女性客限定興行もしましたね。

間口を広げることで新人選手を確保

パフォーマンス力を見るために一芸を試験に入れている。鈴木大は『ハクション大魔王』の最終回を狂言で演じるというひらめきを見せた 【前島康人】

――DDTとしては、DNA、ガンバレ☆プロレス、東京女子、BASARAと、DDTブランドの大会も増えてきています。その中で所属選手も60人を超えましたが、これだけの選手をそろえられた要因は何でしょうか?

 これは単純に間口を広げたからだと思います。ちょうど2013年1月に、「無試験入門」というのを行いました。そこには20人ぐらい応募があって、結果的に2人しかデビューはしませんでしたが、そういうのをやったりして間口を広げる努力をしました。

 入門テストの基準で言えば、うちは一番ハードルが低いと思います。他社の基準は分かりませんが、僕らがやっているテストは非常に合理的で、運動神経と反射神経のテストなんですよ。もちろん最低限の体力は必要としていますが、それでも体力や身体を大きくすることは、後からでもできるんです。その中で一番大事なのが反射神経と運動神経なので、まずはそこを見るんです。

 あとはその選手の魅力、カリスマを見ています。まあ、カリスマと言っても、キャラクターや個性といったところで、一芸をやらせています。これは何でもいいんですよ。歌を歌うでも、ウミガメの産卵のマネをするとかでも(笑)。これは客前でやる度胸だったり、ひらめき、発想ですよね。あとはパフォーマンス能力。そういったものを見ているんです。

 例えば、何回も言っているのですが、「『ハクション大魔王』の歌を狂言でやります」といった選手もいましたよ。「プロレスで巨大カマキリと戦います」といった奴もいますし。それはひいては表現力を見るものなので。

――体力や身体の大きさというより、まずは才能があるかどうかが大事だと?

 意外にスクワット500回、腕立て300回、腹筋200回は、ハードル高いですよね。そこで振り落とされるより、最低限の運動神経テストをやり、普通の人より運動神経があれば、そこから作っていけるものなので。

――ただ身体ができていない人には、プロレスはケガや事故のリスクも高いと思いますが?

 そこは指導を分けています。(プロレスの)体力的なトレーニングは基礎的なことしかやらせていないです。一方の身体作りはきちんとジムに入れ、トレーナーの指導の下でやらせています。それが一番間違いないので。うちはジムと提携しているので、会社として(身体作りを)やらせています。リング上の動きは別物なので、そこは分けてやった方が合理的なんですよ。

 僕の判断基準として、お客さんに見られた時に、「この人の身体はすごい」「この人の身体はプロレスラーだね」って思わせなくちゃだめなんだと思うんですよ。実際に、普通の人は、(プロレスラーが)動いているところを見に来るには時間がかかると思うんです。ですけど、パッと見た目がゴツければ、「仕事は何をされているんだろう?」と気になり、見てみたいと思うと思うんですよね。

 特に僕らの団体は割と背が高くないので、一般の人よりも突出している部分がない以上は、なかなか見出しずらいじゃないですか。そういうところで、(身体作りは)大事だなと。僕はそこ重視ですね。

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