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フロリダで並ぶ背番号「51」と「25」
キャンプで際立つイチローとボンズの存在
キャンプで対面したイチロー(右)とボンズ
キャンプで対面したイチロー(右)とボンズ【Getty Images】

 フロリダ州ジュピターで行われているマーリンズのキャンプ。打撃練習のとき、イチローと歴代最多本塁打記録を持つ打撃コーチのバリー・ボンズが並ぶことがある。


「51」と「25」。


 2000年代のメジャーリーグを知っている人なら、衝撃的な2ショットだ。キャンプ序盤、2人が並んで立っていると背中でシャッターの音が鳴り響いた。


 そんなボンズのことをイチローは、「同じユニホーム着るなんて、立場が違うとはいえ考えられないこと」と驚きをにじませ、今なお際立つボンズの存在感をこう表現した。 

「それはやっぱね、残してきたものが違い過ぎる。でも、僕以外のチームメートと、僕は違う気持ちでいるかもしれない」


“違う気持ち”というのは、ボンズの全盛期を選手として接してきたイチローと、ファンとして見てきた若い選手では、感じ方に違いあるのでは、ということのようだが、チームメートからはこんな視線を感じるそうだ。


「(2人が)どうやって接するんだろうって、周りのみんながそこに興味がある」


 誰もが認めるスーパースター2人。もちろんボンズには依然ダーティなイメージがつきまとうものの、20代の選手らにとっては憧れの2人の絡みに心躍らせる。


 そんな一方、ボンズはどうイチローを見ているのか。キャンプが始まってすぐ、彼は所用でサンフランシスコに戻った。葬儀に出ていたとのことだが、帰って来た初日に取材を試みた。

ボンズが語るイチローのバッティング

 全体練習終了後、何人かの選手が居残りで打撃練習をしており、ボンズは彼らにつき合って室内練習場にいた。そこからクラブハウスまでの距離は約30メートル。その間に捕まえられるかどうか、である。ただ、捕まえたところで話してくれるかどうか分からない。ボンズの取材嫌いは有名で、インタビューを受けるとしたら『MLB.COM』のバリー・ブルーム記者ぐらいだ。

 

 さて、どうなるかと30分ほど待ったところ、ボンズが練習場から出てきた。話し掛けてみる。

 

――少し話を聞きたいんですが。


「なんの話だ」


 威圧感がすごい。拒否というより、くだらないことを聞こうとするならお断りだ、というぐらいのインパクトが一言に込められている。


 しかしその時、ボンズは足を止めた。


 すかさず、一緒に動いたもう1人の日本人記者が、「イチローの打撃練習を見ていたと思うが……」と聞くと、ボンズは「何を聞きたいんだ?」と質問を促す。取材を了承してくれた。

 

 その時のやり取りを少し紹介する。


――イチローのバッティング練習を見て、2001年に(イチローが米国に)来たころとの変化をどう感じる?


「スイングは変わらない。髪の毛が白くなった(笑)」

 

――スイングは同じ?


「あぁ、自分自身を分かっている。でも彼は年をとって、髪の毛の色が白くなったけどね(笑)。もちろんあの頃、彼は若かった」


 この辺りはかわされている感じだが、徐々に具体的な話をしてくれるようになった。


――バッティングのメカニックそのものはどうか?

 

「それも変わらない。あのメカニックが誰にでも適しているかと言えばそうではない。しかし、イチローには適していた。熟練した技術者という感じかな。あの安定感が、他の打者との決定的な違いを生んでいる」

丹羽政善
1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米し、インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。