審判は「野球を見てはいけないんです」 あなたが知らないアンパイアの世界

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今回は日ごろ表舞台に立つことのないプロ野球審判に審判の実像、ジャッジのポイント、プロ野球選手のすごさなどを語ってもらいました。答えてくれたのは、昨年の日本シリーズでも球審を務めた審判歴29年のベテラン笠原審判です 【写真=BBM】

 3月25日のプロ野球開幕を控えて、オープン戦が本格化してきました。そこで、普段はなかなか表舞台に登場する機会が少ないですが、試合にとっては欠かせない存在であるプロ野球の審判にインタビューをしました。答えてくれたのは審判歴29年目に入った大ベテラン笠原昌春さん。審判の実像、ジャッジのポイント、プロ野球選手のすごさなど、いろいろ語っていただきました。また「Twitter」を通じて読者から募集した質問にも、いくつか答えていただいています。

 笠原審判は1965年3月1日生まれ。88年1月にプロ審判の道に入り、これまで通算2202試合に出場、日本シリーズも7度経験するなど経験豊富。また10人いるクルーチーフの一人として、現場でリーダーシップを発揮する立場でもあります。

 ちなみに笠原審判、普段からスポーツナビのプロ野球速報アプリを愛用いただいているということで、出だしから和やかな雰囲気の中、お話をうかがうことができました。

“声が通った”から“試験も通った”

――まずは野球の経験と審判になるまでの経緯から教えてください。

 小学校、中学校、高校と続けて、大学はクラブチームみたいなところでプレーしていました。大学卒業後の4月に就職して、その年の12月に退職しまして、1月から審判ですね。

――審判になるきっかけは?

 プロ野球選手はあきらめていましたけど、ふとしたきっかけでテレビを見ているときに 、グラウンドにいるのはあとは審判だけだな、と思いまして。昔からプロの世界に憧れていましたから。選手としては無理でも、なんとかその場に立ちたいと思いました。きっかけとしては突然だったのですが、ずっと野球をやってきたので、そういう気持ちがあったのでしょうね。

 ちょうどその時、セ・リーグで審判募集の試験があったんですね。10月か11月ころかな。そこで試験を受けたら合格したという流れですね。

――急に応募して受かるものですか?

 運が良かったんですね。後々、当時の審判副部長に話を聞く機会があったのですが、その人によると「声が通ったのが良かった」と言っていましたね。なかなか出そうと思っても出ない人がいるんですよね。なので、“声が通った”から“試験も通った”と(笑)。

――珍しいパターンですね?

 そうですね、僕みたいに試験を受けてから審判の道を歩き始める人も何人かはいますが、少ないですね。だから、審判に対する先入観はまったくなかったです。プロの投手の球を間近で見るのも、もちろん初めてだし、すべてが白紙からのスタートでした。

 今では独立リーグの審判をやっていたり、アマチュア野球の審判をやっていたりする人がほとんどです。NPBの審判員になるために自費で米国の学校に行く人もいたり、NPBのアンパイアスクールに参加する人も多いですね。

――審判に採用されて試合に出るまでの間は?

 一概には言えないのですが、現状ではまず研修審判員に選ばれると、独立リーグを2年ほど経験して、そこで認められれば育成審判員になります。順調にいけばその後3年程度で(NPBの正規の)審判員となり、1軍の試合に出るまでは、さらに5年ほど経験を積む流れですね。1軍の試合ではまず塁審をして、その後、球審も担当していきます。ただ研修審判員も育成審判員も、必ずしもNPBの(正規の)審判になれるわけではありません。

――なかなか厳しい世界ですが、お互いのライバル意識は?

 今はほとんどないです。年齢が上がってきたこともあり、みんなでうまくやっていこうという方に気を使うことが多いです。若い時はライバル意識もあったかもしれないですが、僕はアマチュアでの審判経験があった森(健次郎)さんという同期がいて、どちらかというと頼りになる仲間みたいな感情のほうが強かったですね。

――昨年までで2202試合に出場。思い出に残る試合はありますか?
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