トレーナーが進化させたテニスの世界 杉山愛コラム「愛’s EYE」

WOWOW

勝敗を左右するトレーナーの存在

トレーナーは今や、プレーヤーにとって欠かせない存在だ 【写真:ロイター/アフロ】

 選手のパフォーマンスを支える裏方、トレーナーの仕事が徐々に注目を集めるようになりました。日本語ではひとまとめにトレーナーと呼びますが、実際は、体のケアや治療などメインテナンスを中心に行う人と、フィジカルトレーニング(ストレングス)を担当する人に分かれます。

 前者はフィジオとかアスレチックトレーナーとも呼ばれ、後者は単にトレーナーと呼ばれたり、トレーニングコーチ、ストレングスコーチと呼ばれることもあります。どちらも選手の体に関わる仕事で、内容も重なる部分がありますが、基本的に役割は別々です。

 スピード化、パワー化が進んだ今のテニスでは、フィジカルが結果を大きく左右します。ここが充実していないと、けがをしたり、好成績が出せないということに直結します。ケアやストレングスの担当は、それくらい大きな責任を負う、重要なスタッフです。

 男女のプロツアーも、また、グランドスラムなどの大会も、フィジオがスタッフとして常駐します。彼らが必要なケアをしてくれるのですが、私自身はそれに加えてケア担当とストレングス担当の2人にツアーへ帯同してもらっていました。

 体格に恵まれていなかったので、その分、どれだけ追い込んで体をフィットさせるか、パワーで負けない体作りをするかが私の生命線でした。そこで、トレーニングや体のバランスを整えたりということを常に見てもらっていたのです。

 彼らにはいつも助けられました。ある年のジャパンオープンで、試合は無理かと思うくらい肩が痛いことがありました。サーブはギリギリ打てるかどうか、という状態。ところが、治療を受けて1回戦の試合をして、なんとか勝つことができました。また治療をしてもらい、2回戦では少し良くなって、結局、最終日にはなんの痛みもなくなりました。

 ダメもとで出た大会で、自分に対する期待もありませんでしたが、体が良くなっていくことで「できるんだ」という喜びが徐々に増し、気持ちも乗ってきて、結局優勝できたのです。このタイトルはトレーナーのおかげだと思っています。

今の主流は「キメの細かい体」

年々ショットの威力が増している錦織圭。日本人が世界で戦うためには、フィジカルの改善が不可欠 【写真:ロイター/アフロ】

 今の傾向としては、トレーニングと言っても、体をただ鍛えればいいというのではなく、バランスを見ながら自分の足りないところを鍛え、より動きやすい体、パワーを伝えやすい体を作ることに重点が置かれています。

 トッププレーヤーの体を見ても分かるように、筋骨隆々になるのではなく、細かい筋肉をつけ、キメの細かい、しなやかな体を作ることが主流です。当然、科学的なトレーニングが求められます。その研究が進んだことは、選手の体つきや動きを見ても分かると思います。動きのクオリティが上がり、選手寿命も伸びています。道具の進化とともに、そこが以前のテニスと一番大きく違うところでしょう。

 そうやって、効率よく動ける体を作ることは、現役時代の私にとってはテニスの面白味の一つでもありました。ランキングでトップ10に入るなどピークの時は、感覚が研ぎ澄まされて脳の指令が体の隅々にまで行き渡るように、トレーニングで追い込んでいました。

 私は単複両方に出場することも多かったので、試合数も運動量も相当なものになるのですが、それだけに体の使い方を効率よくすることを心掛けたのです。動きに無駄があると、けがをしてしまったり、疲れたりということにつながります。効率の良い体の動きを追求することは、試合を勝ちきるというところにもつながっていたと思います。

 それくらい、今のテニスにフィットネスが占める割合は大きいと思います。錦織圭選手がこれだけ活躍できるようになったのも、そこが大きく影響しています。体つきも明らかに変わってきましたし、ショットの力強さはフィジカルの強さが生み出しているとも言えるでしょう。
◆全豪オープンテニス(PR)
2016シーズン最初のグランドスラムとなる全豪オープンテニス。頂点を目指す錦織圭の戦いなど、現地の感動と興奮を連日生中継でお伝えする。
1月18日(月)〜1月31日(日)

◆錦織圭出場予定!男子ATPツアー メンフィス(PR)
錦織圭出場予定のATPツアー メンフィス大会をお届けする。出場者中ランキング最上位選手として、そして大会史上初の4連覇を懸けて、優勝を目指す。
2月13日(土)〜2月15日(月)

◆男子テニス国別対抗戦デビスカップ ワールドグループ1回戦「イギリスvs日本」(PR)
錦織圭出場予定!国の威信をかけた国別対抗戦。2015年優勝したイギリスを相手に日本の勝利なるか!?
3月4日(金)〜3月6日(日)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント